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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十章:順風満帆の終わり
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1041:階段探し

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

「さて、亀の必勝法も見つけたことだし……そういえば俺に変なにおいとか付いてないよね? 」

「どれどれ……ふんふん、あの水槽のよどんだ水みたいな匂いはしないですね。でもべっとりと水で濡れてますから軽く乾燥をかけといた方が過ごしやすいとは思いますよ」


 芽生さんの匂いチェックには合格した。毎回くさい匂いを誤魔化しながら行くのでは五十層の霧エリアの甘い匂いを我慢しながら行くよりももう一つ上の厳しさを味わいながら行くところだったが、そこは大丈夫らしい。


「毎回濡れるのはちょっと嫌だが、時間と天秤にかければ我慢するところだろうな」


 体に乾燥をかけてスーツから水分を飛ばす。水分が飛んだところで自分でも匂いチェックはしてみたが、あの水生生物特有の匂いみたいなものはついてなかった。そこまでリアルに表現する気はない、ということだろうか。


「さて、前に通らなかったところを探しつつ、亀とワニと戯れながら階段を探すか。水路沿いに階段があったのだからこっちも水路沿いをメインにして探していくか、それとも水路がなさそうな方へ行くか。どっちでもいいがどうするね」


 地図を見ながらここからの行く先についてちょっと話し合う。前回は水路に沿ってひたすら歩きながら亀に苦戦していたが、今回は亀に苦戦する要素が減ったため前回より遠くまで行くことも可能だろう。だが、階段が遠くにあるというわけではないのでここから本格的に迷って地図を描き加える作業になる。


「前回はこっちの水路に沿って行きましたがとりあえず何もなかったですね……横道に逸れて行けば何かあるかもしれませんが、どっちにしろ未知のゾーンですね。どっちも未知のゾーンなので今回は水路のない部分を探索してみましょう。水路から現れないモンスターなら濡れる心配もなさそうですし、亀相手にするにも精神的に楽なのでは? 」

「そういう考え方も有りか。なら今回は水路のないほうへ歩いて行ってみよう。もしかしたら行先でまた水路にぶつかるかもしれんからな。前回と行き道が被らなけりゃ無駄な行動にはならないだろうし行くだけ行ってみて、ダメならまた次回来ればいい。気楽に行こう」


 広間から伸びる数本の水路を無視して、今回は橋も渡らずに水っ気のないほうへ歩いていく。こちらにも道があり、メンテナンス用の通路かな? と思わせるような風情を感じさせる。すると、水にぬれてないワニが二匹居たので片方を芽生さんに任せ、漸く雷撃だけで何処までいけるのか耐久試験を行う形の戦闘が出来た。


 結果から言うと、今の全力雷撃三発でワニは黒い粒子に還っていった。どうも【雷魔法】の鍛え方とダンジョンの進捗がいい感じに噛みあっているらしく、今まで全力雷撃三発で落ちなかったモンスターはほとんど見られなかった。ちゃんと多重化させてその上で成長するようにこきつかっているだけの効力が得られているということだろう。


 芽生さんのほうもワニ、亀に限らず問題なく戦闘は行えているようで、特にワニについては頭の上に乗ってから槍を突き刺し、槍の先から放射状に魔法矢をやや出鱈目気味に発射することにより内部から確実にダメージを与える戦法が上手くいっているらしい。二匹出て来ても大丈夫な体制が整った。


 水路から離れるに従い、モンスターも二匹が標準セットで出てくるようになってきた。亀とワニ、というセットも登場するが、亀は雷撃して転がしてるうちにワニを片付けて、その後で亀をひっくり返して柔らかい腹を狙っていく形で戦闘がまとまりつつある。


 戦闘のほうはともかくとして進捗だが、どうやら水路は他の迷宮系マップ程きっちりとした形ではなく、ウネウネと蛇行したりもしているらしい。地図としてちょっと描きづらい。


 しばらく水路の無い分かれ道や行き止まりを確認しながら出てくるワニと亀を駆除。今のところポーションドロップが見られないのは、まだ数を狩れていないからか、それともこの階層ではポーションドロップが無いのかどっちかだろうが、ポーションも拾ったところでまだ査定にも出せない。査定サンプルに提出するなら一本ではなく複数本必要になるだろうし、しばらくサンプル提出は先になるだろうな。


「レアドロップ無いですね。前のマップで搾り取りすぎたんでしょうか」

「戦闘数がまだ足りないんじゃないかな。順番で言えばそろそろキュアポーションのランク5が出るはずなので、それに期待するしかあるまい。もしかしたら指輪並みのドロップ率かもしれないし、そうなれば……そうなれば上の階層で戦ってるほうが楽って話にもなるな」

「もうそろそろ出そうな雰囲気が私のセンサーに反応してるんですけどねえ」

「それ物欲センサーじゃないか? 逆に出にくくなってない? 」


 今のところのドロップはワニから皮、亀からエンペラと甲羅。普段ならここに一から四%ぐらいの確率でポーションがドロップするところだが、一%と仮定しても前回と合わせて百回戦ったかといわれるとまだ戦ってない段階だ。それに一%だから百回戦えば必ず出るというわけでもない。ここは慎重に行かないとな。


 水の無い道をしばらく進んでいると、水路に行き当たった。ここは前回通ったところと繋がった感じか?どうやら一時間ほどかけてぐるっと遠回りをして元に帰ってきた、そんな結果になったらしい。


「ふむ……ここは結構迷いやすいみたいだな。多分ここには一度来てるはずだ。記憶が確かなら、このまま水路に向かって左方向に行けば二分ほどで接敵する」

「じゃあ、接敵したら一度来たって事で別の道を探しますか」


 芽生さんが若干運動不足そうにしている。確かにこの階層はモンスターの湧きも甘い。歩いてばかりだと退屈だろう。


「そうなるかな。確認が済んだら戻って別の分かれ道を探索することにするか。しかし、うまくイメージが湧かないマップだな。都市の地下水路っぽいイメージを表現するならもっとこう、整然と水路が作られていても不思議じゃないだろうに」


 水路マップなのに水が流れてない部分が有ったり、歩くだけの場所が有ったりといまいち好きになれない。まあそういうマップがあっても仕方がないとは思うが、なんだかマップ全体の統一性みたいなものが無い気がする。


 手元にある地図を見る。いつもの迷宮マップ風に四角いマス目にきっちりと書きあげられている形ではなく、時々曲がりくねったりもしている、迷宮系の地図としては変な地図だ。初めてこの階層の地図を見た人ならば、この辺で熱中症にでもかかったのか? と聞かれることだろう。


 しかし、実際このように真っ直ぐではなく曲率があるような曲がり方をしているマップなので仕方がない。そして、今解っているマップ全体から階段を見出すのはかなり難しいだろう。


 さて、予想通り水路との合流地点から左折して二分ほど歩いたところでワニ二匹と出会った。問題なく一対一で駆除。ドロップは魔結晶だけだった。


 やはり、ここは一度来たことがある道だ。この先はたしか三叉路の後行き止まりが二ヶ所。その続きは描いてないので、前回はここで一旦探索を打ち切ったあたりになるんだろう。この先に階段があるのか、それとも水路がない他の道へ続いているのかは解らないところ。


「引き返すとさっき言ったが、この先をきっちり作っておくことも重要なんじゃないかとも思い始めている。どっちを選ぶかは……また五百円玉で決めるか。表ならこのまま真っ直ぐ進む。裏なら引き返して別の道を探す。それでどうよ」

「他に方法も無さそうですし、思考の穴に陥って同じところをグルグル回るよりは建設的ですね。それで行きましょう」


 五百円玉を弾き、手の上に着地……させようとしてコインが跳ね返った。はねたコインはそのままころころと転がって……水路の中へ落ちた。


「これは、第三の考え方をしたほうがいいということだろうかね。第三の道か……」


 他に回ってない道を探しに行くと考えると、水路沿いに歩いてきた時に通ってこなかった水路の無い横道がいくつかあった気がする。そっちへ行け、ということだろうか。


「水路沿いの道に戻って、前にたどってきた時に途中にあった横道から更に奥へ進む、という選択になりそうだが」

「今回はコインの行方に従うと決めたんですから、その第三の道を選択するのが筋でしょうね。しかし、もったいないことをしました。五百円あればコーラが三本は買えたでしょうに」

「ミルコの飲む分が減った、ということにしておくか。もったいないがここのモンスター一匹倒せばおつりが来る金額だし、こういうこともある、ということでコイン頼みで道を決めるのもほどほどにしておけ、ということなのかもしれん」


 ミルコには悪いがコーラを三本きっちり間引いておこう。ミルコはかわいそうだがこれも探索のためだし、水路に気軽に拾いに行ける浅さではないということに問題がある。五百円玉を拾うためにスーツを濡らすのもコストに見合わない気がする。ここは五百円玉を無くしたということを忘れるほうが建設的だろう。


 水路沿いに道を戻って、途中の横道に入る。すると、少し進んだところでまた分かれ道。大回りしてきた部分の内側なので、それなりに広さはあるはず。そこの中に階段があっても不思議ではないので五百円玉の最後の叫びが正しいならこっちの何処かに階段がある、ということになるだろう。


 とりあえず右に行こうとしたら、芽生さんが俺の行動を阻害するように引っ張り左の道へ進むことになった。ついに方向確認すらしなくなったらしい。俺はそれだけダンジョンを幅広く、出来るだけ細かいところまでマップを記入するように体が出来ているんだろう。決して階段までの道のりを確実につかめないようにできている訳ではない。そう信じよう。


 十分ほど、モンスターとの戦闘を繰り返しながら進むと、階段が見つかった。総合計では一時間半ほどかかったが、帰り道はもうちょっと短縮できそうだ。多分あの広間からの直線距離はそう長くない。帰りは三十分ほどで帰れる可能性が大である。


「さて、予定通り……ではないが、階段は見つけた。帰りはいつも通り最短ルートを見付けながら帰ろう」

「覗いていきます? どれだけモンスター密度が高くなってるか参考にしたいところですが」

「そうだな……三匹出てくると厄介だな、というのが今の感想か。階段を下りる前にちょっと打ち合わせするか」


 三匹出てきた時の戦闘隊形について少し話し合う。基本的にいつも通り【雷魔法】でスタンを決めてるうちに一対一で倒し、残ったやつを仕留める、という方向で問題は無いと思う。亀三匹という可能性はマップの広さから見て低いので、ワニ三匹ぐらいは出てくるだろうと予想はしておく。


 もしくは突出して出てきた一匹が居るなら先にその一匹を退治してから残りを倒す、状況によってその二パターンは用意しておこうか、ということになった。


 とりあえずこうきたらこう返す、のような形を口頭で共有し合ったところで六十二層へ下りる。階段を下りた先には早速亀が二匹。階段を下りた先はちょっと広いところだったらしい。亀が二匹出てくるだけの余裕がある場所なので階段を下りる前に相談しておいてよかったな。


 早速亀を全力雷撃で頭を引っ込めてもらっている間に片方をひっくり返して、その後は芽生さんにお任せ、その間にもう片方もひっくり返してしまう。なんとものどかでズルっぽい光景だが、これが一番早く亀を倒す手段だと考えれば、見た目はともかく確実性は増しているので楽に戦わせてもらおう。


 亀が首を一生懸命伸ばしてこっちに向けて【水魔法】で応戦しようとしているが、そのたびに雷撃を与えて首を引っ込めさせているので一方的に攻撃させてもらっている。なんか悪いね。


 芽生さんのほうにも時々雷撃を飛ばして亀が首を伸ばして来ないように牽制もしている。先にひっくり返してチェンジした都合上芽生さんのほうが先に戦闘が終わったが、こっちも三十秒ほどの時間差で倒すことが出来た。時間効率で言えば……やはりまだ効率はそれほど良くは無いな。この階層は勝ちパターンを手に入れるまでが問題、ということだろうか。


 残り時間は二時間ほど。一時間巡って休憩に胃袋に何か入れて、それから戻る感じになるだろう。夕食を作ってくればよかったとは思っているが、ここで夕食という雰囲気ではないのは確か。まあ、動けなくなるような事態にならなければ大丈夫だろう。さて、制限時間がある中で何処まで地図を広げることが出来るか。ここで頑張れば次回の探索がその分楽になるのは間違いはない。

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― 新着の感想 ―
水路に落ちた500円玉、割と速効であきらめてるけど、範囲収納で回収できたんじゃないかなぁ……?
帰り際に500円玉が空から降ってきそう
五百円で階段見つかったと思えばかなり安く感じるなあ
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