1040:TMNT
ダンジョンで潮干狩りを
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階段を下りてすぐ、前回とは違う方向に向けて歩き出す。すると、マップの端っこに当たる場所へたどり着いたのか、しばらくして道が消えた。スッパリと切断されたように壁に阻まれている。
じゃあ水路はどうなってるんだ水路は、というと、壁の向こう側へ通り抜けるように水路だけは続いていた。壁の向こうがどうなっているかまではこちらからでは解らないからぐるっと回って確かめるか、それとも本当にここがマップの端っこだということになる。
「なるほど、こう来たか。そして水路にはご丁寧に鉄格子まではめてある、と」
「行くな、と言わんばかりですねえ。これで一つ解ったことがあります。ここはループしたマップではないということですねえ」
たしかに。ループしてるなら端っこではなくひたすら続く道が作られるはずなので、他のマップみたいに回廊が作られるか、壁で完全に覆い隠すかの形になる。今回は後者だったということか。
「ま、外しはしたがこっちへ来ても何もないということと、マップの端っこらへんに階段があったという二つの情報が得られた。無駄な時間では無かったということでここは一つご勘弁願いたい」
「どうせわからないマップなんですから良いんですよ、出来るだけ迷って地図を完成させていきましょう」
階段まで歩いて戻って改めて階段から前回歩いたところを探る。当然出てくるワニ。ワニの攻略法は顎を開けさせない内に上に飛び乗ってしまった後で上から攻撃を加える、というもの。
だが、それ以外にも倒し方がいくつかある。雷撃でスタンさせて顎を無理やり閉じさせる、ということもできる。ただ他のモンスターに比べて効きが悪いのは確か。スタンさせて放置している間に他を倒して……みたいなことをやっていると途中でスタン状態から回復してこちらへ攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。
二匹三匹出てくるようになった場合の対応を考えるか、素早く倒せるように己を鍛えるかの二択だな。出来れば強くなる方面で考えていきたいところだが、そううまく上がってくれるかどうかは怪しい話。
階段の前を通り抜けて奥へ。そういえば逆側に何もいなかったということは、あまり環境こそ良くないものの安全なエリアと呼べるのだろうか。帰り道にも確認してみて、モンスターが湧かない場所だったら一時休憩場所として使えるかもしれんな。プチセーフエリアという所だろう。そういう場所を何ヶ所か見つけておいて確保しておくのは大事になってくるかもしれん。
と、早速索敵に反応。水中にいることからワニであることが予想される。亀ならもっとでっぷりしているし水路からはみ出ていてもおかしくないことから、視界に入らない以上ワニだろうとあたりをつける。
そもそも亀なら動きがそれほど素早くないので実際に目に入れてから行動するのでも問題は無い。だがワニはかなり素早い。警戒をしておくに限る。
そしてある程度まで近づくとやはりワニだったのか、ザバッと上がってきて早速こっちに噛みつくために移動をし始めたので、全力雷撃でまず牽制を撃ちこんでおく。ワニはビリっと痺れたが、一発では少々威力が足りなかったらしい。今の俺の全力雷撃何発まで耐えるのかワニに対して性能試験をしておきたいところだが、流石に距離が近すぎる。
ここは近接で対処、ついでに直刀で斬れるかどうかも確認しておこう。ワニの頭の上にジャンプで陣取り口の付け根に着地。そのまま足で踏みつぶして口を無理やり閉じさせる。こうすればここのワニなら一方的に蹂躙できる。直刀を差し込み、ワニの皮を貫通できるかどうか試しておく。グリッと手ごたえのある反応があるが、ズブッ、ズブッ、とゆっくりと刃が入り始める。
しっかりと口を縫い付けたあたりで直刀に雷撃。前の直刀よりもスキルとの親和性が高いらしく、前と同じ行動をした時よりもスキルの伝達効率が良くなっているような気がする。気がするだけかもしれないが、差額の分で良い気分を演出してくれるならそれはそれで有りだ。
少し時間がかかったが、そのままワニは大人しく黒い粒子に還っていった。ドロップは魔結晶のみ。
「ワニには通じるな。亀はどうだろう? さすがにあの甲羅を切断、というわけにはいかないんだろうか」
「そっちは新武器に期待しましょう。ついでに亀の輪切りには学術的興味が湧いてきました。亀の内側がどうなっているのか。本当に手足があるのかどうかとか、中身は黒い粒子が詰まっているだけなのかとか。洋一さんのマネというわけではないですが何とかなりませんかね? 」
芽生さんが珍しくモンスターの生態や解剖学に興味を持っている。だからと言って無理やりこっちの方向に持っていこうという気はないが、たしかに気になって仕方がない所ではあるな。
「試しに切りかかって見て、跳ね返されたら新武器までお預け。斬れたら中身を観察して撮影しておこう。とりあえず亀が出てくるまではひたすらワニ退治かな」
亀はこの階層では今のところ数が出ない。亀とワニの出現頻度を比べると現状一対三ぐらいだ。前に通りかかった広間辺りまでは多分空間的な都合で出てこれないのだろう。モンスターリポップも、モンスターごとに指定された空間範囲が無いとおそらくリポップが出来ない仕様なのだろう。
しばらくはワニ。そう考えて行くことで注意をしながら進むことが出来るな。とりあえず前回の広間までは一本道らしいし、また少し曲がりくねってから広間に出たら亀が居るだろう。
それまでにワニが数匹。芽生さんも俺も同じようにマ〇オになった気分でワニに乗っかった後上から突き崩す形でワニの内部を焼き切ったり頭から口を三つに割れるようにしてあげたり色々やりようはある。ワニの攻撃が噛みつきであることと、素早さと攻撃力にパラメータを振り切っているようなワニよりもこっちが素早く動けるのがポイントだ。
しかし、ワニに噛みつかれてそのままローリングされるとどう腕がねじ切られてしまうのか。もしくはそこまでの攻撃力は無いのか。数値ではなく実際の影響としてどのくらいの威力があるのかは目にしておきたい話ではある。
決して俺がドMであるとかそういう話ではない。ステータスというもの、攻撃力というもの、防御力というもの、それらが数値化できない以上、今の自分に対してどのくらいの火力を有しているかどうかというのを把握しておくのは大事なことではなかろうか。
かといって本当に片腕持っていかれるのも怖いので、もっと物理耐性の指輪やらもう一段物理耐性を多重化させるなり、どうやればいいのかわからないが物理耐性の強化をしていくなりで手段を構築してから向かうほうがいいだろうな。
考えをいったん止めて目の前のワニに集中。上に乗って攻撃、上に乗って攻撃。これ、地面に出て来てくれるから良いものの、水中からだったらどういうアプローチをするのが正解なんだろう。試しに水中にいるときから攻撃を加えてみるか。
丁度いい感じに水中に居てくれるワニが現れたので全力雷撃をその地点に打ち込む。雷撃は水面で派手な音を立てて、水中にまで効果を及ぼしたらしい。ワニが水中からぷかっと現れてそのままこちらへ近づいてくる。釣りはできる、ということだな。
水面に浮かんできたワニはこちらの姿を見つけると、お前か雷打ち込んできたのは、とばかりにダッシュを始めた。大口を開けてそのまま突っ込んできたため、その口の中に全力雷撃。雷撃のしびれでワニが口を塞いだら近づくチャンス。全力ダッシュとジャンプでワニの背中に飛び移ると直刀を突き刺して、そのまま直刀越しに雷撃を加えて黒い粒子に還す。
「水中にいても攻撃は出来る、か。呼び寄せるにはいい感じだな」
「そうですね、固まってる場所が居たらまとめてきそうなのがネックですか」
「その時は牛歩戦術を使うか、完全にスタンさせて一対一に持っていくいつものスタイルで行こう」
◇◆◇◆◇◆◇
何度かのワニとの戦闘を乗り越えて、前回来た広間までたどり着いた。広間に架かる橋には前回と同じ、亀が行く道を塞いでいる。しかも今回は二匹だ。
「雷撃することでしばらく動かずに居てくれることは分かってるし足も遅い、ゆっくり考えつつ勝ち確パターンを探していこう。前回より楽に倒せる方法が見つかるかもしれない」
「そうですね、とりあえず片方黙らせておいて、もう片方をとっとと片付けて一匹になったところで色々実験しましょう」
奥にいる亀に向かって雷撃。亀は前に来た時と同じように、雷撃に驚いて手足を隠す。その間に、雷撃を受けていないほうの亀がのっそりこっちへ向かってくる。
芽生さんが魔法矢で亀にチクチクと攻撃を加えていく。ちょっとずつだがダメージは入っているらしく、黒い粒子がふわふわと出始めているのが解る。
一定量のダメージにはなっているが、これと言って致命的である、といった風ではない。やはり直接甲羅の中にダメージを入れないと難しいのだろうか。
前回も何回か亀と戦って知見を得ることは出来たが、これと言ってクリティカルなヒットを起こすようなダメージは入れられなかった。やはり近づいて穴に向かって直接槍なり剣なりを突き込むのが最短コースではあるが、毎回手間がかかる。その手間をコンスタントに減らしていくのが今後のここでの戦闘には必要になってくると感じる。
ワニは比較的短時間で倒すことが出来ているが、亀のほうは数分かかってしまっている。これをもっと時間を短縮することが出来ればより密度の高い探索が出来るし地図も描けるし時給も上がる。何かいい手は……やはり空いた穴を直接攻撃するか、硬い甲羅を割るような切れ味のいい剣筋を持つしかないようだ。
亀が充分近づいてきたので応戦態勢。試しに……と亀の背中に向けて直刀で斬りかかってみるが、甲羅は相当硬く、逆に弾かれる結果になった。コンクリートに竹刀で殴りかかったような感覚。直刀が折れなかったのが救いであるような硬さ。直刀の出番はこのマップでは無さそうだな。
柄に持ち換え今度は柄で応戦。頭のほうは芽生さんが魔法矢でプスプスと刺し傷を負わせてたり、雷撃で頭を引っ込めさせたりしているのでこちらが一方的に攻撃をして亀をいじめている状態だ。
浦島太郎が出てきたらどうしよう、と言った感じである。とりあえず柄の出力を最高密度にして亀の甲羅を切り刻もうとジュッと焼き付ける。焼き目こそついたものの、甲羅の背中から攻撃を加えることは難しいらしい。
背中が固いならお腹からならどうだろう。何とか転ばせる手段があればそれに越したことは無いんだが、流石の重さとデカさ、よいしょと持ち上げてひっくり返すほどの力はない……いや、やるだけやってみるか。スーツが汚れることになるだろうがやるだけやってみよう。
亀に雷撃をして怯ませた後、亀の甲羅の下側に手を差し込んで持ち上げる。てこの原理を利用できるよう、反対側を地面に押し付けてそのまま押し込むような形でぐるんと持ち上げると、見た目ほどの重さは無かった。どうやら亀自体はそれほど重さが無いようである。これならいけるな。
そのままグイッと押し込むような形で亀をひっくり返す。亀がゴロンと上下逆を向き、無防備な肉体を晒している。試しに突いてみるが、普段は見えない地面に接している側の肉は甲羅と違いそれほど固くないことが解った。これなら柄も刺さるかもな、と差し込んでみると案の定、ワニと同程度ではあるものの硬さはそれほどなく、柄がズブズブと入り込んでいく。
亀は声にならない鳴き声を上げて絶叫し、頭を出してこちらに口を向けようともがいている。俺の頭の上をウォーターショットな水魔法が飛び交っているが、体の大きさもそうではあるが亀は俺のほうまで首が伸びないらしく、宙を舞って消えるだけとなった。
しばらくそのまま待っていると、柄の切り口から大量の黒い粒子が噴き出してきた。どうやら勝負は決まったようだ。上下さかさまのまま、亀は黒い粒子になって消えていった。ドロップは魔結晶と甲羅。やはりこの甲羅は防具としては優秀なものになりえるな、という確かな満足感を残して逝ってくれた。
さて、残り一匹も同じようにひっくり返して倒してみるか。タクティカルヘルメットのマウントにスマホのカメラを装着して録画モードにすると、じっくり解剖を行う。電気ショックで麻酔をした状態でもう一度亀を持ち上げて天地反転させると、芽生さんも興味深そうにこちらのほうへ駆け寄ってきた。
「ひっくり返すのが早いんですかね、私たちの場合」
「そうかも。ただ、よどんだ水槽の匂いとか付いてないかどうかが気になるが、ウォッシュでどうにでもなるし多少スーツが汚れるのは織り込んでおかないとな」
ひっくり返された亀は手足をバタバタ。うっかり勢いで元に戻らないように雷撃をしっかり撃ちこみ、手足と頭には引っ込んでいてもらう。
胴体の真ん中らへんを柄で電気メスのように切り取っていくと、中からは大量の黒い粒子だけが噴き出してきた。どうやら、手足と頭は概念的なもので出来ているらしい。内臓を腑分けして詳しい事まで調べる……というところまでする気はないが、とりあえず亀の甲羅の内側は黒い粒子で詰まっていることは解った。これで一つモンスターについて詳しくなれたな。
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