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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十章:順風満帆の終わり
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1037:精算日 2/2

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 再びダンジョン。軽いリヤカーを引きながら、また順番に三十五層へ戻る。そもそも溜めこむほど深い階層に潜り込んだ自分たちが悪いとはいえ、よくもまあこうも溜めこんだものだな、と自分に呆れが出てくる。


 行きのエレベーター。暇つぶしのクロスワードをすべてやり切った。やはり昨日の買い物で新しい雑誌を購入し忘れたことは割と致命的だったらしい。やることがない。かといって、昨日の実験みたいに生活魔法を使ってゴミを消す実験をして、眩暈でフラフラのままエレベーターから出てきたら芽生さんに怒られることは目に見えている。


 しょうがないから古い雑誌でも読むか。前々号辺りの探索・オブ・ザ・イヤーを見返す。雑誌は結構流し読みをするタイプなのだが、今日は真面目に脳内に刻む形で読んでいこうと思う。


 ダンジョンマスター目撃例募集、という項目が目に留まる。そういえば読者からダンジョンマスターとの遭遇例やそれに沿ったもの、もしかしたらB+ランク探索者からのタレコミがあるかもしれないという名目で募集している話があったな。この続きはどうなっているんだろう? と、今月……いや、もう先月か。前回の号を取り出し読んでみると、色々と報告が上がっていたらしい。


 曰く、ダンジョン内で幼女を見た。十八歳以上しか入れないダンジョンで幼女が居るわけがないのでダンジョンマスターに違いない、非常に幼く危険に見えたので声をかけながら近寄ろうとしたが、角を曲がった先でその幼女の姿は消えてしまった。幽霊でも見たのかと思っていたが、あれは今思えばダンジョンマスターだったのかもしれない。


 曰く、ダンジョンの壁を触っては身体をぶつけてみてあちこちを確認している探索者の姿を見た。ずっと壁の当たり判定を探しているようなそぶりだったので、あれはダンジョンマスターによるダンジョンのデバッグ試験だったのかもしれない。


 曰く、俺がダンジョンマスターだ。


 最後はさておき、リーンのことを考えると最初の例はダンジョンマスターである可能性は高い。二番目の例については、おそらくB+探索者が自分が担当していないダンジョンに潜った際の出来事だったんではないだろうか。それを自分の居場所やメインに潜っているダンジョンをカモフラージュするためにあえてぼかして伝えている可能性がある。三番目は多分心療内科に通ったほうがいいと思う。


 これからもガンガン意見や通報を募集しているらしい。ネット上にも目撃情報募集の欄があるらしいので、ダンジョンマスターが撮影出来たらその写真も送ってみて欲しいとのこと。


 送ってもいいが、これについては真中長官がウキウキで総理や坂野ギルマスと一緒に写っている写真を投稿しそうなノリであるのがちょっと怪しめではある。


 B+ランク探索者が増えてダンジョンマスターとの交流が増えてくる場合、この欄も盛り上がることになるんだろうな。そうなるかどうかはダンジョンマスターの政治的な面、つまり探索者と仲良くダンジョン運営、ドロップ品持ち出しという行為が是として受け入れられるのか、というのも含まれるだろうが、その辺はお互いに交流が薄いらしいダンジョンマスターに依るんだろうな。


 俺の耳には入ってきてはいないが、すべての探索者にフレンドリーなダンジョンマスターというものが居ても不思議ではない。ミルコがある意味それに一番近くはあるが、お菓子をくれないと出てこないダンジョンマスターというのも中々面白いかもしれない。


 だが、それを俺の口から言いだすことは無いだろうとは思う。俺はただ深く潜り、もしも誰かが追いついてきたらその時に初めて口を出す。それまではダンジョンマスターについては聞かれても知ってるかどうか、会ったことはあるかどうか、そのぐらいしか話さないことにしておこうかな。


 読んで考え事をしている間に三十五層に着いた。続きは戻りの道でやろう。


 芽生さんが待ち受ける中、また二百キログラム分のインゴットを載せる。


「さあ、次行きましょう。さっさと終わらせて通常業務に戻りたいですからね」


 足早にエレベーターに向かっていった。どうやらこの作業を早く終わらせたいらしい。俺も同感だ。そもそも今日自分の足で歩いて稼いだものではない。今まで溜めこんでいた部屋の掃除、そう、そんな感じだ。掃除は早く終わらせるに限る。


 芽生さんを送り出したところでまたこちらも三百キログラムのインゴットを載せる。これで残り二百キログラム。三往復目は芽生さんには魔結晶を担当してもらおうかな。


 再びエレベーターに戻って考えの続き。真中長官から正式に記者会見の内容としてダンジョンマスターについて発言をされたということは、既存のB+ランク探索者がそれぞれ自分の行きつけのダンジョンのダンジョンマスターに出会ったことがある、というのは公にされたわけで。


 この場合、本当にあったことがあるだけなのか、何回も出会ったことがあるのか、それともここみたいに蜜月の関係にあるのか。それすら俺の手元には情報が無い。どのぐらいまで情報を公開してもいいのか。名前、見た目、口調、どうすれば会えるのか。俺の所にもそういう話をもちこんでくる探索者は居るはずだ。B+ランクでなくてもダンジョンマスターに出会える方法はあるのか。


 そういえば、ダンジョンマスターに出会う条件については真中長官は記者会見で明かしてなかったような気がする。だとすれば、過疎ダンジョンへ潜って十五層か三十層のボスを最初に倒せば出会える、という情報は流していいものなのだろうか。


 これはネットの情報を吟味して、流しているような奴がいてそいつ経由で情報が回ってきた場合明かしてもいい、という受けの姿勢で行こう。


 一層について再び査定カウンターへ。同じ量を持ってきたが、一つ一つ数えるのが査定の仕事。俺が三百だからと言ったとて、ちゃんと確認するのは大事だ。大人しく査定を待ち、数を確認されてまた二等分されたレシートを受け取る。さぁ、もう一往復でインゴットは終わる。気張っていこうか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 再び戻って三十五層。残りのインゴットはちょうど二百個。半端な数は石原刃物に置いてきたので非常にキリがいい数字となっている。このインゴットは俺が担当するとして、とりあえずエコバッグに青い魔結晶を次々と出し始めると、芽生さんの荷台に載せていく。流石に魔結晶の質量で二百キログラムを超えることは体積面でも無理がある。平たく載せられるだけ載せ、山とまではいかないものの中々の量の魔結晶が乗ることになった。


 一面魔結晶を積み込み終わり、こっちのリヤカーに残りのインゴットと、空いたスペースに青魔結晶を積み込み始める。この回で無事終われたな。残りは後で探索し終わってからまとめてリヤカーに積み込む形でもいけそうだ。こっちのほうが大量に物が乗るので多少山積みになっても魔結晶が崩れなければそれでヨシ、と。


「これで終わりに出来そうだ。二台借りれたおかげで捗ったな」

「終わったら何層行きますか? 五十七層あたりでゆっくり指輪集めでもします? 」


 芽生さんも、これでリヤカーを運ぶのも一区切りすると聞いた途端元気になりつつある。やはりエレベーターで上り下りするだけ、というのはストレスだったらしい。


「それがいいかもな。いつも通り五十七層の回廊部分でご飯にして、午後からはゆっくり石像の頭をかち割りに行くのが良さそう。まだこのサブウェポンがどこまで通用するか試してないし、ちょうどいい感じになるだろ」

「じゃあ、私これが終わったら一旦ギルド内で待ってますので、そこで支払いの金額をまとめることにしましょう」


 そういうと芽生さんは先にエレベーターを上がっていった。こっちもエレベーターに乗り込み一層へのボタンを押す。


 もしかして朝一で来てまで運ぶことも無かったかもしれないな……と思い始めたが、朝一だからこそリヤカーが空いていたという可能性もある。そう考えれば早めに行動を始めた甲斐はあったってことだな。おかげでいつもの時間より一時間ほどの遅れ程度でいつもの探索が開始できそうだ。


 今日はせっかくだし五十七層から五十九層のあたりを巡って、指輪集めとレアドロップするかもしれない石像のドロップ、それから鎧の破片を集めていこう。青魔結晶が査定可能になった以上鎧の破片と指輪だけがまだ査定可能になっていない。


 また査定できない品物集めるのか? というところではあるが、さすがに今日は朝が早い分、そして荷物を三往復させた分だけ体力と精神力を余分に消耗しているのは確かなわけで、その中で六十層以降へ潜りこむのは止めておいたほうがいいだろう。


 じゃあ五十五層か? と言われると、午前中大量に納品したインゴットをまた集め出して今日の回収品としてまた持ってくる、というのも二度手間のような感覚に陥る。それにポーションが出やすいのも五十七層以降だ。インゴットは必要になった時にまた集めて来ればいいし、最悪はゆっくりのペースでも俺一人で回れる速度で戦闘をしていけばいいので必要になったら取りに行く、という認識で良いかもしれない。


 査定が終わったら芽生さんとお互いに持ってるレシートを分け合って、朝練の成果をしっかりと見届けよう。いくらになっているかちょっと楽しみではある。結構頑張って溜めこんだ……いや、頑張りすぎた結果がこれだからな。朝の貴重な時間を利用してまで荷物運びに頑張った分の金額になっていればいいな。


 一層に戻り査定カウンターへ直接行き、芽生さんの後ろに並ぶ。もう片方のカウンターは一泊して出てきた探索者が大勢並んでいた。多分こっちがリヤカー付きの大荷物だったので向こうに並んだ方が早く終わるだろうということで並んでいるらしい。なんか専用で使っているみたいになっててすまん。


 芽生さんの分が終わり、俺の分に入る。


「これで溜めこんだドロップ品最後でーす」

「解りました。朝早くからお疲れ様でした」


 査定嬢にゴメンね朝早くから、と声をかけておく。芽生さんはリヤカーを返しに行った後こちらのドロップ品の査定が終わるのを待っているつもりで一足先に休憩室のほうへ行き、おそらく冷たい水を飲んで涼んでいるんだろう。終わったら合流だ。


 二種類とは言えそこそこの量、どちらも重さと数を数えて、レシートが出て来た。レシートの内容はインゴットと魔結晶だけのシンプルな二列だが、それを計算するために要した時間はそこそこのものだった。


 レシートを二分割で受け取ると、一旦リヤカーを返して俺も休憩室へ。やはり芽生さんは先に水を飲んで涼んでいた。手を挙げて合図すると、一気に飲み干し、こちらへ向かってくる。


「総額いくらになりますかね? 計算してみましょうよ」


 一旦俺のほうにレシートを渡してきて、計算をせがむ。スマホの電卓で一枚ずつ計算し、計算し終わったものの片方を芽生さんに渡していく。それぞれ査定にかけた回数合計六回、つまりレシートは十二枚だ。ささっと入力して計算し終わり一言。


「三億九千八百二十五万円。一人当たり一億九千九百十二万五千円。もうちょいで二億だったな。今から更に潜って稼ぐなら一人が一日で稼いだ金額としては過去最高のものになるだろうと予想する」


 芽生さんからほぉ~っというため息が聞こえる。どうやら結果に充分満足したらしい。


「ちなみに買い取り金額としては、インゴット千二百個でこれで二億四千万、のこりがぜんぶ青魔結晶ということになってる。魔結晶の数は……さすがにそれぞれは覚えてないな。今から軽く潜ってその金額から逆算するか」

「そうですね。まずはダンジョンに潜りましょう。打ち合わせはエレベーターの中でもできますし」

「そうだな……でもその前にちょっとコンビニ行ってくる。クロスワードを全部やり切ったから新しい雑誌があるかどうか見て来るわ」


 そう言えば荷物の出し入れをずっとしているからという理由で退ダン手続きをしてないのだが、コンビニ行くために律義に退ダン手続きをするべきだろうか、それともちょっと抜けて休憩、ということで預けっぱなしにしておくべきだろうか。一分悩んでそのままでいいだろうという判断をし、コンビニへ立ち寄ってクロスワードパズルの違う種類のものを二冊仕入れた。これでしばらくは持ちそうだ。


 戻ってきた後、受付嬢にコンビニに行っていたことを目撃され、そういう場合は退ダン手続きしてくださいと小言を言われてしまった。次に活かそう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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1.2㌧で2億4千万だと丁度、銀と同じくらいなのか 高いような安いような
> 自分たちが悪い」 そうかな > 三番目は多分心療内科」 むしろ二番目の観察対象の方が症状が重い可能性ある > 午後からはゆっくり石像の頭をかち割りに行く」 風邪を引きそうな文章展開 > 早め…
安村商店で働きたいんですが募集要件に保管庫持ちがありそうでキツイ。 魅力的な職場だけど就職できなさそうだわ。 ただ、連日買い支えているギルドのキャッシュフローも凄いとは思うから…… そうなるとダンジ…
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