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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十章:順風満帆の終わり
1035/1206

1035:明日の予定と買い出しと

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

「伝わったらしい」

「そうみたいね。ついでにゴミ処理よろしくってことかしら。ミルコ君が普段居る空間、どうなってるか気になってきたわ」


 たしかに。ゴミ部屋と化して空のペットボトルとお菓子の袋が山ほど積み重なっている前でモニタを眺めるミルコの図、みたいなものを容易に思い浮かべることが出来た。


「さすがにゴミだらけ、ということは無いだろう。ゴミぐらい自分で魔素にするなり焼却処分するなり何らかの方法があるはずだしな。それが出来ないならそもそもお菓子も受け取らないだろうし。今まで渡してきた量を考えると、よほど広い部屋にゴミとして積みあがってるか、それとも【生活魔法】の応用みたいなものでゴミとして認識させて黒い粒子に変換させて処理してるとか、やりようは俺でも思いつくから多分大丈夫でしょ」

「ちなみに安村さんはできないの? ゴミの黒い粒子化」


 言われてみて気が付く。ダンジョンの中なら出来るかもしれないな。


「ふむ……ちょっとやってみるか。ペットボトルの中に残ったコーラの飲み残しとか、部屋のホコリなんかは成功させているけど、立体物でそれなりに質量があるものを試してみるという機会はなかった気がする」


 頭に強く念じる。目の前のこれはゴミだと。ペットボトルの空き容器はゴミである。ゴミだからウォッシュで綺麗にできるのである。更に強く念じる。


 ペットボトルが確実にゴミに見えて来た。よし、この感じだ……お前はゴミ! ウォッシュ!


 ペットボトルは上から次々に黒い粒子に変わり……そして上から半分あたりのところで粒子化が止まった。どうやらまだ実力が足りないらしい。ついでに軽く眩暈もしてきた。きちんと形のある物体の消去に相当するウオッシュは割と負荷が高いらしい。


「だめかー。これ以上は生活魔法の多重化が必要になるんだろうか、それともまだまだ妄想力が足りないのか。大型のゴミではまだ使えないのか。ダンジョンの中でこれだから、日常使いには出来そうにないな」

「もうちょっとだったわね。でも、ウォッシュの訓練としては良さそうね。綺麗にゴミを処理できるようになったら合格、みたいな」

「合格どころかそれだけで飯が食えると思うんだよな、このレベルだと。でも、せっかくの生活魔法をこんな使い方していいんだろうかという不安は残る。ただ、訓練として良さそうなのは確かだな。今後もダンジョン内でやってみるか、ペットボトルのウォッシュ練習。前みたいに眩暈が起きるギリギリまで生活魔法を極めてみるのも面白いかもしれん」


 結衣さんがしまった、という顔をしている。ふむ……そういえば最近特訓をサボりつつあるな。生活魔法にしろ雷魔法にしろ、力を上げられるところまで上げきって、それでもだめなら多重化させていく。そうすることで自分の実力を高めていけるはずだ。


「なんか押してはいけないスイッチを押してしまった気がするわ」

「そうかな。俺としては楽しみが増えたと思うんだけど……んー、久々だから気持ちいい」


 ドライフルーツを口に入れ、久々の清涼感を楽しんでいる。これからしばらくダンジョン内で、ゴミの片付けをするつもりになってペットボトル一本を消滅させられるのを目標として頑張ってみようかな。常に空のペットボトルを保管庫に入れておけば毎回何処まで消すことが出来るのかという目標と時間変化、どのくらいできるようになっているのかが可視化できるはずだ。


「明日またやってみよう。どうせ明日は荷物の搬入日で芽生さんは一日暇させちゃうしな」

「保管庫に結構溜まってるんだっけ? 次の色の魔結晶……多分青色と、五十三層からのドロップ品だったかしら」


 その場にどちゃッとインゴットを山で出現させてみる。流石に量に驚いたのか、 結衣さんが二、三歩後ずさる。


「その量は……何往復すれば終わるのかしらね」

「予定はインゴットだけで四往復か、五往復。その後で青い魔結晶が山のようにあるから……ギリギリ一日で終わる量ではあるかな。良い感じに終われば当日中には帰れるかな。最悪でも次回分として残しておいて芽生さんと潜る時に分配する」

「二人してエレベーターで移動するだけってのも辛そうね」


 結衣さんが同情の視線を送ってくる。


「まあ、レアスキルを隠し続けるためには必要な措置だし、最悪芽生さんには下層で手伝ってくれているって言い訳をした上で三十四層なり三十六層なりうろうろしてもらうって手もある。後は……もう一台リヤカーを借りて二人で移動すれば時間は半分で済むけど、専用機以外の荷重限界やリヤカーの空き具合によるかな」

「二台で作業できれば時間は半分とは言わなくても短縮できるから、か。そればっかりは運任せかしら」

「運が良ければ二台でやらせてもらえる分時間的に楽ができるな。まあ、総額でいくらになるか解らんが明日は仕事しなくても給料が出ると考えればいいし、最悪インゴットだけでも査定にかけられればいいと思ってるよ。どうしようかな、先にこっちきて早めに作業に移ることにするかな……ん? 朝一か」


 別に九時から始める理由は無い。二分割でレシートを受け取って、あとから来る芽生さんに渡せばそれで済む話。朝一から作業することにするかな。今日の買い出しをさっさと終わらせて早めに就寝、朝もいつもより早く起きて弁当作って出勤。この流れで行くか。


「よし、予定を組み替えた。明日は朝早くから仕事にまい進することにしよう」

「まあ、無理しないでね。でも、早起きは健康的でいいかもしれないわね」


 いつもより二時間ほど早く寝て起きれば充分できるはずだ。今日は帰ったら昼食の準備もして万全の態勢を取ることにしよう。


「さて、じゃあ早いけど俺は上に戻るかな。明日の準備もあるし色々今日の内にやっておくことが増えたけどそれも明日楽をするためだ。今日の分は今日の分でさっさと終わらせてしまうことにしよう。じゃあ俺帰るね。買い出しも行くし」

「お疲れ様ー」


 新浜パーティーと別れてリヤカーをエレベーターに押し込み、七層のボタンを押して今日の分の儲けをいつも通り区分けしてリヤカーに積み込む。ついでにリヤカーの耐荷重を確認しておく。


 満載して三百キログラムか。限界まで積み込めば四往復で終わる計算だ。ただ、ダンジョンから出て来る時がかなりしんどいかもしれないが、一往復一時間の分量がそれで軽減できるならリヤカーには限界を極めてもらいたいと思う。バッグにも一応詰め込めるし、魔結晶の時はエコバッグにも満載していこう。


 後は魔結晶の実際の量がどのくらいあるかだな。全部を出して量を確認したことが無いので解らないが、一往復で済む量ではないことは承知している。やはりネックはインゴットだな。


 インゴットを三百個限界まで積む……とメモしておく。うーん……やはり先に青魔結晶を乗せられるだけ乗せておいて、それが終わり次第インゴットに入るか? そのほうがスムーズに進む可能性もある。悩ましい。荷物の積み込み方でここまで悩むとは思わなかったな。四往復で載せられるだけ載せて、残りは商売や取引用として残しておく手もある。


 あれこれどうするか悩んでメモ帳と格闘している間に七層に着いたので、いつも通り目隠しテントを張って茂君。いつもの時間なので茂君は処理されずに残っている。確実に刈り取って戻って、一層へ。


 明日は茂君の相手をする暇も無さそうなことを考えると、真剣にやるべきだな。そう思いなおし、一層へ着くとリヤカーを引いて退ダン手続き。


「お疲れ様です。今日も順調でしたか? 」

「まあ、いつも通りって感じですかね。明日は荷物の積み込み作業で一日潰れる予定なのであんまり喜んでもいられない所ですが」

「じゃあ明日はずっと出入りしてるって事になるんですかね。私の担当になるかどうかは解りませんが覚えておきます」


 真面目でよろしい。リヤカーを引いて査定カウンターへ。新しく査定価格が変わったからか、査定カウンターで金額の再確認を求めたり、ちょっと混雑しているらしい。流石の査定嬢も表を確認しながら一つ一つ説明し、これの金額が変更になったので金額はこれで合ってますよ、と説明をしているため、普段より一人当たりの査定時間がかかっているらしい。


 これはしばらく待つ必要があるな。のんびりバッグからコーラでも出しつつ水分補給して待つか。


 いつもより長く、三十分ほど待ったうえでの査定。ようやくか……という気持ちがかなりある。ただでさえ大荷物で場所を取ってるんだからスムーズに査定を受けたかったが順番を守るのも探索者の仕事の内。ちゃんと今日中に査定してもらえるならヨシとしとこう。


「すいませんねー、時間かかっていてー。価格改定当日なんで前と同じように探索してきたのに金額が違うって言いだす方が多くてですねー」


 なじみの査定嬢だった。今日のこの時間は混むだろうと考えたシフトを組み替えたのだろうか。


「久しぶり、今日もよろしくね」

「あ、安村さんだ。お久しぶりですー。じゃあいつも通り分けてくれてあるわけですねー」

「そういうことです、一つ手早くお願いしますよ」

「しばしお待ちをー」


 いつもののんびり口調だが目線と動作は素早く、ポーションをサンプルと比較確認するまでもなくキュアポーションかヒールポーションかを判別し、ランクも判別して本数を数えてきぱきとパソコンに入力していく。魔結晶の重さを量り、ドロップ品を仕分けしていく。流れるような作業におじさんもうっとりだ。


 五分ほどで一通りの査定を済ませ、パソコンの査定完了ボタンを押す。


「今日はお一人ですよねー? 」

「そうです、一人です」


 一人分として出力されたレシートが出力される。今日のおちんぎん、一億九百九十五万円。もうちょっとでキリがいい数字になっただろうが惜しかったな。


「ちゃんと今日からの金額になってますしー、そもそも安村さんが今日潜られてる辺りは金額の変更が無かったのでいつも通りだと思いますよー」


 ちゃんと俺がどの階層に潜ったかも把握しているらしい。ドロップ品からそこまできっちり読み取るのもギルド職員の仕事の範囲、ということだろうか。


 支払いカウンターで振り込みを済ませた後、いつもの冷たい水を飲んで体のほてりを冷ました後、そのまま真っ直ぐバスと電車。帰りのバスのタイミングはバッチリ。この時間帯のダイヤだと駅へ着いても焦ることなく電車に乗り、直接最寄り駅まで帰れる。


 明日は一日ダンジョンに居るが探索はしない、この保管庫に溜めこんだ色々な物品を芽生さんと等分して探索の稼ぎとしてきちんと国家権力の懐を通して、儲けているんだぞという証明をするために必要な行為だ。


 ひたすら持ち帰ってくる素材を基準に見て、最下層のドロップ品さえ持って帰ってくればこれだけ稼げるんだぞ、と見せびらかす日にもなる。流石に一日密着して査定の流れを見ているような探索者は居ないとは思うが、それなりに居るかもしれない、程度には考えておこう。


 今までの努力の結晶を現金化する作業なんだ。何も気にするようなことは無いだろう。しいて言えば昨日今日中に三十五層までたどり着くような奇特な探索者が居ないことだけを祈っておけばいい。


 芽生さんには今の内にレインで連絡。朝一の便でダンジョンに潜って早めの搬出作業をする予定であることを伝えておく。そっちは無理しないで良いから自由な時間に来てくれと連絡しておく。


 返事はすぐに届いた。「解りました、気が向いたら私も早く出かけます。もしかしたらリヤカー二台で動かせるかもしれませんし」とのこと。


 家に着いたので買い出しにでかける。行先はいつものパン屋のあるスーパー。食パンと卵とキャベツの食事三点セットと生野菜とキノコとそれから色々お菓子の補充。明日のお昼は何にするかな……ローテーションメモを取り出すと揚げ物が出てきたが、流石に明日の朝作っている余裕はない。ちょっと順番を飛ばして他の食事にさせてもらおう。


 次に出て来たのはごった煮。芽生さんには一日暇をしていてもらうのだから芽生さんが好きらしいホワイトシチューにするか。具材は色とりどりにして、今から帰って作って冷蔵庫で寝かせて朝一で起きて温める。よし、この流れで行こう。


 ブロッコリー人参ジャガイモ……肉は豚コマで良いかな。この際は料理の内容よりも手間を優先させよう。今日の夕食はシチューの味見と、ここで何かしら弁当を買ってそれで済ませよう。大分シンプルになってきたな。


 後は白菜も入れて野菜をしっかり取れるようにしたい。今買い入れたキノコもシメジか何かを加えて味に複雑さを出そう。明日の昼飯が決まったところで今日の夕食は……揚げ物だな。一日飛ばす分申し訳がないので揚げ物を入れてやりたい。


 後はお菓子を買い込んで……と。これで買い物は終わりだな。さて、家に帰って弁当食って、シチューを作ったら今日は早く寝よう。明日の決戦に備えるのだ。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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そんなに1回で、インゴットを換金する理由はなんでしょう? 目立つばかりだと思うんですが これからも潜るんだし毎回分散して持って帰るんじゃダメなんですかねぇ?日々の計算がしづらい?
良く考えたら安村さんどっかの残業嫌い子のアニメのナナヲアカリの曲みたいな生活してるな…
地球産のモノは魔素になっちゃいけない気がするんですがどうなんですかね? 
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