1029:世界ダンジョン事情
ダンジョンで潮干狩りを
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飯を食べ終えトレーとペットボトルを綺麗に洗い、分別して次のゴミの日に出す。今日の夕食もまぁ満足は出来た。次はもっと別の方向性を見据えた弁当にチャレンジしていこうと思う。東南アジア料理なんかのイベントがあれば是非そっちのほうの味わいも試してみたいところ。夏だし、涼を得る方向性でもいいな。
だとするとコンビニよりもスーパーのほうが可能性は高いか。ベトナム料理コーナーとか、タイ料理コーナーとか、そういう方向性で一イベントを開く可能性のあるスーパーは何軒か知っている。気が向いたときにホームページを調べて予定がないかどうかもチェックしておこう。
さて、今日は調べものだ。世界のダンジョン事情について。ざっくり感はあるが、今のところ日本国内で新たに発見されたダンジョンとか攻略されたダンジョンというものは無い。なので国内情報は日々チェックできていると言えるだろう。
これは日本のダンジョン庁がB+ランク探索者に対して、もしダンジョンコアまでたどり着いたとしても破壊せず放置すること、可能ならダンジョンマスターと接触してより深く階層を掘り下げてくれるように頼みこむことを周知徹底した結果である。
また、官専用として用意されているダンジョンのいくつかを新たに民間用に開放するような流れを見せている。おそらく、新しいダンジョンにはスキルオーブのドロップの可能性が高いとみて新しいダンジョンに向けて移動する探索者のことも考えてのことだろう。最近何処のダンジョンも二十一層付近や三十層付近は混み具合がなかなかのものらしく、俺の手元にある暫定時給表が参考にならない程度には探索者が入り込んでいるらしい。
これはB+を開放したり官専用ダンジョンを民間にも開放することで混雑状態の緩和と、探索者の分散によってモンスターのリポップを促進させて総額としてダンジョン庁のギルド税を増やしていくのが狙いではないか、とダンジョン専門家の弦間さんは睨んでいるらしい。
そういえば弦間さんって探索者ランクはいくつなんだろう。公開されてはいないが、三十層の情報にも詳しいとするとBランクパーティーの一員である可能性は高いな。謎のダンジョン研究家弦間さん。そのうち彼のダンジョン遍歴にもスポットが当たる日が来るのだろうか。
弦間さんはさておき、海外事情である。海外においては一口に言うとEUとアメリカとそれ以外と不明で大きく大別される。
不明、というのは国家としてダンジョンの進捗状況やダンジョンの位置や数などを非公開にしている国がいくつかあるからだ。勿論それが政治体制がどうのこうのという訳ではなく、ダンジョンそのものを国有資源として国内法を制定していて、それによって管理運営されるような流れにしているため、実際にどれだけのダンジョンが存在してその内何個が踏破されたのか、という統計データは取れないようになっている。
国有化している国としては今現在どこまで探索が進んでいるかは探索者に全員緘口令を敷くことで表向きには情報は出ていないことになっている。表向きは、つまり裏向きはある。
いわゆるダークウェブ上ではお互いの国籍や所属を明らかにしない上でダンジョンの情報交換を行っているグループがあり、そこでの情報を組み上げた結果、何処の国では何個ダンジョンがあってその内いくつかのダンジョンについてはほぼダンジョンコアにタッチできる状態なのではないか、等の情報交換がされているらしい。
らしい。つまり俺が直接アクセスして調べている訳ではなく、ダークウェブ情報で表に上がってきてもいいような情報を専門に扱っているサイトがあり、そこのサイトを翻訳して読んだ結果そういうものが浮かび上がってくる、というのが正しいところである。
それによるとダンジョン踏破が相次いでいた欧州各国内では、ダンジョン踏破が引き続き行われ続けたことでダンジョンそのものの数が減少して探索者が他のダンジョンに集まることで過密化が予想されている事、このペースで探索が進みダンジョンの踏破が進めば探索者が職業として成り立つ可能性が低くなっていくことをデータで示していた。
欧州ダンジョン委員会……これはEUを中心に西欧東欧を含めて包括的にダンジョンについて議論する会のことだが、そこによると各国が示し合わせてダンジョンの踏破には制限を設けることやダンジョンの無断踏破による罰金や懲役刑、それに伴って探索者免許のはく奪など、厳しい条件付けが必要であり、ダンジョンマスターとの会合や相談も含めて行っていく必要がある、ということがかなり遅れた情報だがそういうものを見ることが出来た。
もしガンテツが他の地域のダンジョンマスター……この場合日本国外のことを指すが、そっちに向けて情報を発信、または会話を行っていて、新しくこういうダンジョンを作るから一枚噛まんか? みたいな相談をしていれば、浅い段階で踏破されてしまったサボリダンジョンマスターたちが飛びついて新しくダンジョンを作り出すきっかけになればいいのにとは思う。
海外のダンジョンが狭くなっていけば、探索者によっては自分の今までの稼ぎや身軽さから、この間のガルシア達みたいに気軽に日本観光のついでにダンジョンで稼いで帰っていく、みたいなこともできるのかもしれない。
少なくとも海外のダンジョンの考え方については、大きく分けて四つの主流意見があるとみていいらしい。
一つ目は、ダンジョン完全消滅を恐れてダンジョンを存続させていく方向でお互いの文明との会話やお願いを聞いてもらい、既存のダンジョンを存続させていこうという断固維持派。
二つ目は、とにかくダンジョン踏破でも何でもして歴史に名を残してダンジョン探索者として一時期の輝ける星として世の中を駆け抜けていきたい俺が目立てばいいんだよ派。
三つ目は、とりあえず深く潜るなら深く潜って、ダンジョンコアが見つかってから相談を始めても遅くないんだからのんびりやろうよという穏健派。
四つ目は、ダンジョンはどんな事情があるにせよ、何処かの誰かの資産や土地を違法に占有して稼働しているのだからまずは法的に解決するために一旦ダンジョンを消滅させて、相談ののちに新しい場所にダンジョンを立て直してもらおうという法律を盾にした法論派。
どれも言い分としては筋が通っている。一つを除いては。まあ、何処の世界にも何処の分野でも自分が先陣を切って行って目立ちたいとする層は居るだろうし、気持ちはわかる。
しかし、海外の場合その派閥については厳しい意見が付随していることが多い。
欧州だけでなく、世界的に問題となっている失業率の問題がダンジョン探索者という職業が新たに増えることで改善の余地を見せている部分がある。スライムだ。
元手として一ユーロあればそれで二分の一サイズのバニラバーを二本買い、スライムに食わせてその間にスライムを倒すことによって一ユーロを二ユーロに増やすことが出来る。その元手と装備を一時的に貸し出すダンジョンも既にある。失業率の改善と、失業者の安定的収入源の確保のおかげで若者の失業率は下降傾向にあり、このままうまくダンジョン探索者としての、雇用ではないが個々人の努力により完全失業率というものは回復しつつあり、治安の悪化も歯止めがかかるのではないかと言われている。
ダンジョンの奪い合いとして部族間や民族間で新しく火種を生んでいる地域もあるが、世界的に見ればダンジョンは世の中に良い影響を与えつつあると言えるだろう。
これも日本の一企業の謎の製造工程により生み出され、それが欧州食品メーカーのレシピ買収によって世界的に広がり、そのおかげで飯を喰えている人たちがいる。そのおかげか、掲示板の端々にはサンセーフードサンキューの声があちこちで上がっている。三勢食品は世界も救っているらしい。
翻訳をかけながらサイト巡りをする。とある情報サイトには情報交換用の掲示板があり、日本と同じく各国各ダンジョンごとにスレッドが立ち、情報交換がしきりになされている。
情報を探った範囲だと、ダンジョンの中で幼女を見かけたんだがあれは幽霊か何かだったのか? という問いかけに対して、もしかしたらダンジョンマスターは幼女なのかもしれないという憶測や、だったらお菓子でもあげれば連れ帰ることが出来たかもしれない、というレスに対してポリスメンを呼んだり、ノリはこちらとあまり変わらないんだなあという印象を強く持った。俺らは何処に居ても俺ららしい。
幼女型のダンジョンマスターということはリーンと同じようにダンジョンマスターとして新しく人間型にこしらえられた人格の一人、ということだろうか。少なくとも二人以上居るということは確認できたが、あんな性格の子供がそれなりの数はいるんだろうから、お守りは大変なんだろうな。
ふと、ダンジョンの広さについて疑問が湧いたので確認される中で一番狭かったダンジョンと広かったダンジョンについて調べると、どうやら一階層ぐるっと回るのに三十分程度で終わってしまっていたダンジョンが過去存在したが、既に踏破されて消滅してしまったそうだ。
そして、一番広いダンジョンは南米のアマゾンの奥地にあった。場所が場所なだけにジャブローと通称で呼ばれているが、そこは六個の出入口があり、各階層がどれだけの広さがあるかもまだ上層部分しか判明していないそうだ。深さも相当なものだと推測されるが、そもそも広すぎて深い階層まで潜ることがかなりの難易度を誇るため、現在の到達確認階層は二十一層近辺だということまでは判明している。
このダンジョンを踏破するならば各国の著名な探索者やランクの高い探索者、レアスキルを所持している探索者によるアベンジャーズを結成して挑む必要があるのではないかとまで言われている。
もし踏破するというイベントがあるならば俺も参加させられそうではあるが、どうもレアスキル保持者については各国によってそれぞれ隠蔽されている人と自ら名乗り出てその分の不自由を甘んじて受けている人が居る。俺は黙っている側だしダンジョン庁との付き合いもあるので呼ばれる側にはならないだろうな、とタカをくくってはいる。
ただ広大なだけのダンジョンか……今更潜るにしてはしんどいだろうな、という感想がまず出る。新しい階層に踏み出して深さを探求するならまだ楽しいが、そうではなく、詳細が解っているモンスターを追いかけてだだっ広いダンジョンの地図を作りながら解っている敵を倒し、解っている階層を潜り続ける、というのは中々にストレスがかかる。
新しいマップ! 新しい階層! 新しい地図! というところに楽しみを見いだせる俺としては、このジャブローにかかる期待感というものは非常に小さい。ただ、複数出入口があるというのは若干興味を引かれるのは確か。どういう次元の接続をすれば複数の出入口を持つダンジョンが出来上がるのか。
複数人のダンジョンマスターが複数個のダンジョンを組み合わせているのか、それとももっと別の仕組みがあるのか。興味があるからそこだけ知りたいな。
まとめると、海外でもダンジョン踏破に待ったがかかり始めていることは解った。しかし探索者として踏破者という名誉目当てで日本のダンジョンに向かってくる探索者もこれから出始める可能性があるということか。だとしたら色々とややこしい事態に巻き込まれていくかもしれないな。
そうならないためにはより深く作ってもらって、そう簡単にダンジョンが踏破できないようにそれぞれのダンジョンに掛け合う、という仕事がダンジョン庁に課せられることになるな。
その前にダンジョンが無い国とダンジョンが有る国でのダンジョン産ドロップ品の貿易レートなんかは気になる。欧州ダンジョン委員会内では、その域内に含まれるダンジョンが無い国についても同様にダンジョンのドロップ品のレートを同一にして貿易をする、という形になっている。EUだけでなく東欧を含めて巨大な探索者ネットワークが形成されているとみていいだろう。
海外のダンジョンと直接かかわることは無いだろうけど、ドロップ品の海外産出量と国内産出量の摩擦が起きれば貿易のネタとしても使われることが出てくるだろうし、魔結晶の取引は特に重要視されるだろうな。なにせすでに発電として利用できることが解っている。
ダンジョンが少ない国や地域では利用が促進されないか、魔結晶を輸入してでも稼働させるかまでは解らないがこの先の環境問題なんかを見据えると、魔結晶発電が重要になってくるのは目に見えている。その点日本では行きづらさの問題もあるが、国内のダンジョン数は世界的に見ても多いほう。輸出国としての立場を取ることも不可能ではないはずだ。上手いこと立ち回ってもらいたいもんだな。
……と、そろそろいい時間か。リビングでは寝なれないが、寝具はいつもの物を使うんだから寝ている最中にどうのこうの、というのは無いはずだ。しいて言うなら起きた瞬間なんかいつもと違う、あっそうだリビングで寝てたんだった、という思い出しイベントを何回発生させるかだな。
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