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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十九章:いろんな更新、いろんな改定、新しいつながり
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1027:謀ったな、ミルコ!

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 これはミルコめ、わざと出したな。今後増えて来るであろう探索者に行きわたる前に先行探索者により利益があり、更に奥へ迎え入れようという意思を感じるぞ。さて、【毒耐性】か【生活魔法】か、どっちを落とさせたのだろうか。


「とりあえず拾って確認しませんといけまへんな」


 平田さんがスキルオーブの確認について進言してくる。確かにおっしゃる通りだ。そしてどこで落ちるにせよ、一旦俺が預かっていた方が安全なのも間違いない。


 シャドウバタフライが居たところまで近づき、甘い香りに包まれながらスキルオーブを手に取る。


「【毒耐性】を習得しますか? Y/N 残り二千八百七十八」


 ふむ、やはり数が必要だと判断されたのか、毒耐性のほうが落ちた。そもそも毒耐性を落としやすいと睨まれているシャドウバタフライだ、【毒耐性】を落とすことには何の不思議もないだろう。


 前回はシャドウバイパーが落としたのを俺が拾ったのだから、シャドウバタフライが落とすまでに期間が空いていなくても不思議はない。表向きは。


 ただ、今この場には俺が居る。複数の、何十人か解らないがダンジョンマスターの注目の的である俺の目の前で、しかもたった今【毒耐性】関連の話をしている最中にこれが落ちる。これが偶然だとしたらものすごい偶然ということになるが、ミルコもこの光景を見ていることに違いは無い。


 ダンジョンのルールは破ってはいない。そして少なくともミルコ達ダンジョンマスターの力として、ドロップされるスキルオーブの内容を偏らせることが出来ることも俺は聞き及んでいる。


「うーん……うーん……」

「どうしはったんです、急に悩みだして」


 平田さんがこっちを心配しているのでとりあえず合流し、スキルオーブを持たせる。


「また【毒耐性】でっか。【毒耐性】ってそんなに出やすいもんなんでっか? 」

「階層とダンジョンの仕組みをかんがえるあたり、毒攻撃をしてくるモンスターが【毒耐性】のスキルを落とすことに疑問はないんですよ。ただ……ね」

「とりあえずこれは安村さんがたおしはったもんですし、また安村さんからギルド経由で譲ってもらうって形でもええでしょうかね? リーダー」


 平田さんが結衣さんに確認を取る。


「出来ればその形がベストだとは思うけれど、安村さんが二重に【毒耐性】を覚えたりする予定は今のところ無いのよね? 」

「ないね。すくなくとも毒耐性が必要なのはこのマップと廃墟マップの二種類だけだし、それ以上に強い毒を喰らわせてくるモンスターにも心当たりはない。俺のドロップで良いならそれでも構わないんだけど」


 なんだろう、納得がいかないというか、これで本当にいいのだろうか? という疑問は残る。視聴者的には盛り上がる所だろうし、ダンジョンマスター的にも今お前狙って落とさせたな! とミルコを糾弾しているのかもしれないが、はたして俺がそこまで気にしてやる必要があるかどうかと言えばない。


 ここは大人しくドロップしたことを喜んで、結衣さん達に売り渡すってことで納得しておくのがベストか。


「あえて気にするなら、ここまで潜ってきてさっきのスキルオーブを落とすモンスターまであと一歩ってところまで来ていたので、実質結衣さん達のドロップだと言い張ることもできるんだろうけど、その辺はどうなの」

「それは……なるほど、そういうのを気にしてたわけね。なら問題ないわ。モンスターは倒した人に権利がある、というのが探索者のルールだし、たとえポッと出てきてサクッと倒してたまたまレアドロップをしたんだとしても、それは安村さんのものよ。私たちが手を出していない以上どうこう口出しするする権利は無いと思うわ」


 頷く新浜パーティー全員。そういうことで良いのか、ならお言葉に甘えさせてもらおう。


「じゃあ、地上に戻ったらギルド経由で取引にかけてその場で承認してもらう、ってことで良いかな」

「帰りの匂いの心配をしなくていい分こっちも得になるしね。じゃあ私たちはこのまま五十二層に向かってそっちでスキルオーブが出ないか試しながら戦うことにする」

「この階層ではもうスキルオーブのドロップは見込めないから……どうするかな、五十層で探索するよりここのほうが金になるのは確かなんだけど、スキルオーブがそう一日に二つも三つも落ちることは無いだろうからスキルオーブドロップは期待せずにそのままここで戦ってようかな」


 スキルオーブがここ数日の間に一気に出たのは純粋に運が良かったから。そういうことにしておこう。多分ミルコが余計な気回しをしたんだろうが、見なかったことに。日々の貢物のお礼が今返ってきた、そう思えば毎回の捧げものも意味があった、ということになる。


 今回も三千五百万円の取引になるだろうが、今までにお菓子にかけた金額に比べれば圧倒的に儲かったということになる。とりあえずこのまま何事もなかったふりだけはしておくか。バッドコンディションを克服した結果ドロップ運は良くなった。物事は前向きに考えていこう。


 スキルオーブを保管庫に入れ、時間を等倍にしておく。こうしてアリバイ作りをしておくのは大事だからな。拾ってきた時間の割にカウントが減っていない、なんて疑われるようなことは無いように気を使わねばなるまい。そういえば等倍で保管庫に入れておくって作業自体が珍しいな。


「じゃあ、俺六時ごろまでは四十九層周辺に居るから、その間に戻ってきてくれるとありがたいかな。帰りにダーククロウの羽根を集める仕事もあるから」

「時間的に七時ごろに出入口で待ってればいい感じになりそうね。覚えておくわ」


 結衣さん達と別れてフラフラと五十一層を彷徨う。目印からは離れないように探索しているので迷うことは無い。気楽な一人旅をもう少し続けてから良い感じの時間になってから戻る。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 そのまま五十一層をフラフラしながらあっちでバイパーあっちでバタフライと好き放題にモンスターを倒す。直刀の威力は充分に発揮できることは解ったので、もう慣らし運転は充分だろうと、途中から柄に持ち替えて平常運転に戻った。


 午前中から感じ取っていた微妙なコンディションの悪さはスキルオーブドロップのおかげでどこかへ消えてしまった。コンディション回復、といったところだろう。多分俺自身がちょっと喜んだ? ところで精神的に落ち着きを取り戻したのかもしれない。


 段々探索するスピードも上がってきたし、色々と調子が戻ってきている。このままの調子を維持しつつ、最低限の稼ぎを得て帰ることにしよう。最低限と言っても他の探索者からすれば十分多い稼ぎだとは自認しているが、それでも俺にとっては最低限だ。今日は三千五百万円の取引をすることが解っているのでその分を含めればいつもの稼ぎぐらいにはなるだろう。そう思うと足取りも軽くなり、どんどんと思考は加速し、あっちの方へ行ってしまう。


 今日のお夕食は何にしようかしら。昼は中華だったから夜は別のものを食べたいな。またコンビニ弁当で新しいものを探してそれにチャレンジすることも悪くは無いな。帰りの道すがらコンビニの新しいお弁当というのを色々探してみよう。コンビニ弁当も定番以外のものを探せば結構当たりにぶつかることも多い。


 当たり続けた結果定番に入るという流れだってあるし、ハズレなら二度とラインナップには並ばないので限定期間でないと食べられないということにもなる。世間のハズレが俺のハズレになる保証もないのでそこは賭けになるが、最近は見た目で味の想像がつくようになってきている。パッと見て味の意外性を出してくる弁当というものは中々珍しいのでそれは購入する動機になりえる。


 さぁ、今日は何を喰おうかな。店に並んでいる商品の中でピンとくるものがあると良いのだが……と、ポーションゲット。これでまた一つ収入が増えた。


 この調子でもうちょっと行きたいところだが……っと、そろそろ時間か。茂君に間に合わなくなってしまうし結衣さん達との取引もある。ここで先に撤収して一足先に地上方面へ向かうとしよう。


 五十一層から五十層を真っ直ぐ抜けて四十九層へ。ウォッシュして体と服を綺麗にしたところでリヤカーをエレベーターに詰め込むと七層をポチ。移動している間に今日のドロップ品の整理だ。


 それでもまだ時間はあるので、今日使った全身の筋肉を少しずつクールダウンさせていく。ダンジョンは地上に戻るまでがダンジョンだが、実際にダンジョンらしく戦うのはここまでなので多少のクーリングをしておいたほうがいいだろう。


 リヤカーの端に座ってふくらはぎと太ももをよくモミモミしておく。軽くマッサージして明日への疲労を残さないことも大事だ。後はよく使った腕と、スキルを使った分脳も利用している気がするから、頭を指先でワサワサっとしておく。頭のマッサージをする機械ではないが、なんかもにょもにょと気持ちいい感覚が頭を支配する。あれって本当に効果あるんだろうかね。


 しばらくあちこちをマッサージしたところで飽きたので、いつも通りクロスワードに熱中。この本も三分の一ぐらいまでは終わった。まだ楽しめそうなので、この一冊が終わりそうになったら次の一冊を買うことも考慮に入れておこう。色んな意味で脳の体操になるし暇つぶしにちょうどいい。


 七層に着いたところでいつもの目隠しテントを設置してリヤカーを中に入れ、六層の茂君に会いに行く。ここで茂君に会えずに帰るなら今日は本当に調子の悪い一日だな、という感想しか漏れ出ない所だが、無事に茂っていてくれたので刈り取り、回収。


 七層に戻ってくると、結衣さん達がテントの周りに集まっていた。どうやら帰り時間をほぼ同じ時間に調節してきたらしい。


「ここで待ってれば待ち合わせに最適かなと思って」

「地上で匂いをまき散らしてまた一騒ぎ……となるよりは確かに問題ないかも」


 全員にウォッシュをかけて、順番に一層へ向かう。流石にリヤカー二台と六人を同時に突っ込めるほど広くないエレベーターなので一パーティーずつ順番に、だ。


 査定もあるし、どうせスキルオーブを持っているのは俺なので先に一層へ向かってもらう。査定がお互い終わった後でギルド取引、という流れになるだろうからな。


 エレベーター箱一つ分先に結衣さん達を見送ると、自分のリヤカーを詰め込んで一層へ。地上に戻ると退ダン手続きを経由して査定カウンターへ。今日はそこそこの人がいるので少し待つことになる。待ちながらリヤカーをちょっとずつ前に進ませていくというちまちました作業が必要になるが、専属カウンターがあるわけでもないのでそこは我慢。


 十分ほどの待ち時間の後自分の番になったので査定をお願いする。リヤカーから順番に、いつも通り整理し終わった魔結晶やらシャドウバタフライの鱗粉やらシャドウバイパーの牙を渡して行って、数を数えてもらっている間にリヤカーを戻しに行く。


 帰ってくるころには査定がほぼ終わっているという滑らかな流れで査定終了。本日のおちんぎん、六千七百九十七万七千円。今日はここに、毒耐性の販売価格である税込み三千五百万円が乗ることになるのでまあ普段通りかな? という収入を確保できることになる。


 支払いカウンターで支払いを済ませた後、支払いカウンターで相談。


「スキルオーブが出まして、売り渡し先も決まってるのでギルド取引を介して正式に売り渡したという税金周りの問題を解決する方法を取りたいのですが」

「えっと……売り渡し先が決まってる形でという場合、ギルドでも正当な取引が行われたという証明が必要になるので、相場を見越した金額での取引、ということになってしまいますがそれは構いませんか? 」


 支払い嬢がこの辺の知識を仕入れておいてくれたらしい。もしかしたらギルマスからこういう取引が増えるかもしれないから窓口になりそうな担当者にあらかじめ吹き込んでおいた可能性もあるな。だとしたら有り難いことだ。


「構いません。両者ともそのつもりで取引に臨む前提ですので」

「でしたら二階の応接室をお使いください。今担当の者に手続きをさせますので」


 そういうと支払い嬢が奥へ行き、バックヤードでコンテナに荷物を詰め込んでいたであろう後方支援担当に声をかける。あの嬢は見覚えがある、たしか【魔法矢】の取引の時にこっそり盗み聞きしてた娘だ。


「事情は話しておきました。ギルマスはもう帰った後ですが彼女が後の取引やら手続きを担当いたしますのでそちらへお願いします」

「解りました。向こうの準備が出来次第二階へ向かいます」

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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経費でじゃんじゃん使わないとまた税金凄そうな
たまたまなのか想像通りなのか まあ、悪い事ではないし得したと思っておけばいいか!
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