1023:壊れた
ダンジョンで潮干狩りを
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暑い。どうやら夜中にエアコンが止まったらしい。目覚ましのアラームが鳴る前に汗だくで目が覚める。さすがの俺でもエアコンなしで生活するのは難しい。前に修理待ちの時間を考えるぐらいなら新しいのを付けてもらって古いの取っ払ってもらうほうが時間も短くて済むし店のほうも大歓迎だろうと考えた気がする。本当に故障してたら、これを機に新しく良く冷える奴に買い替えよう。金は、ある。
あまりに暑いので多少早すぎたとしても朝食をさっさと作って食べるとシャワーを浴び、エアコンの動くリビングに戻る。涼しくなって頭が回るようになってから、詳細を考えることにした。
まず、本当に壊れたのかどうかを確認する。電源を入れてみて入らないとか異音がするなら明らかに異常だ。まずは動作するかどうか確認し、リモコンのエラーメッセージが出たらそれをみて、明らかに修理が必要であるかどうかを確認する。修理が必要なら買い替えだ。今日の内にエアコンの手配も済ませてしまって入れ替えのタイミングを交渉しよう。
暑い部屋だが空気を通し、窓を開けて……外のほうが暑いな、空気の入れ替えだけだと考えておこう。リモコンを操作すると明らかなエラーメッセージが表示される。ネットでエラーの内容について調べてみると、室外機の故障。どうやらコンプレッサーの故障の可能性が高いらしい。修理が高額になる可能性がありますと書いてある。
よし、買い替えだ。朝一で家電量販店に行ってエアコンを新規購入した場合どのぐらい待てば付け替えの工事が完了するかの交渉に入るとしよう。買い替えはもう既定路線だから、あとは何処の店が一番早く付け替えをやってくれるのか、それだけが問題だ。
今日の探索は午前中は無し。いくつかの店を回って一番早く取り付け、撤去工事にかかってくれる店を探そう。近所には何店舗かエアコンを取り扱っている電器店があるのでそこを順番に回ったり、電話口で対応してもらったりして最短ルートを探す。
今日の方針が決まったところで昼食だ。今日は夏野菜サラダに素麺ということになった。これだけ部屋が暑いのだ、食事ぐらい涼しいものを味わいたい。おそらく自宅で食べることになるのだから冷たいままの素麺をずるっとすすりつつ、先日買った夏野菜を一気に消費することにする。
まだ店が開くまで時間があるので今の内に作ってしまおう。それぞれの野菜を二センチより小さいぐらいに切り出し、麺つゆをベースとして生姜、ニンニク、ほんのちょっとの酢とごま油で混ぜ合わせた特製たれを鰹節を乗せた上からかける。まずこれで一品。
素麺を茹でて氷を上から散らせた後で保管庫へ入れておく。これで食べるまである程度くっつかずに済むだろう。めんつゆは……残り少ないな。ちょっと素麺を食べるには少ないかもしれない。メモ帳に麺つゆ必須と書きこみ、エアコンを調達しに行くついでに買い求めにいこう。買うついでに豆腐もあると良いかもしれないな。どうせ店に寄るならそっちも買っていくか。
まだ時間があるのでノートパソコンをリビングに移動させて涼しい中でスレチェック。先日の出来事がもう把握されて流されていた。小西スレも情報が早くなったな。それだけ人の出入りが激しくなったという証拠だろう。
後、俺の財布事情が少しずつ漏れ始めている。時間もあるし、ここらで今日までにいくら稼いだかをざっくり計算しておこう。収入がわかれば税金もざっくりだが計算できるし、今の手持ちからいくらまでなら出費しても大丈夫かが解るようになる。
計算した結果、今年一月一日から前回潜った時までの収入の合計が解った。
もうすぐ百億に届く。というか、口座の中身は確実に百億を超えているはず。
俺は平均的なCランク探索者、スレの言い分をそのまま信じるなら、ゴブリンキング討伐組およそ百人と同じだけの稼ぎを得ているらしい。
これはついでに銀行にも寄って記帳しておかないといけないな。なお、今年から個人事業主になることがほぼ確定しているため今年分、つまり来年支払う個人事業税が約五億円更に取られるらしい。手元に残るのは四割に達するかどうか微妙なライン、ということになるそうだ。
こう見ると、税金って高いんだな。しかし、四十億もどうやって使っていけばいいんだろう。俺だけで消費しきれる金額じゃないぞ、一体あのパン屋の食パンを何本買えば使い切れるのか。むしろ店ごと買っても不思議はないぐらいだ。俺の毎日の食生活のためにスーパーとパン屋を経営するための資金を出してしまうということもできる。金があるとやれることは大体できてしまうものなんだな。
とりあえず目の前の買い物であるエアコンの見積もりから始めるか。部屋の広さよりも大きめのエアコンを設置するほうがより確実に冷えたり温めたりをこなしてくれるはずなので、部屋の広さよりも広いタイプのエアコンを購入することになる。
今のエアコンの大きさをメジャーで測って、横幅、奥行き、縦幅の余裕がどのくらいあるかを写真で取って、この場所に設置できるかどうかも確認を取る必要があるだろう。あらかじめできることはやっておいたほうが確実だからな。いざ当日持ってこられて設置できませんでは困る。そのぐらいの準備はしておこう。
室外機は地面に直置きなので問題は無いし、設置場所も家の敷地内だ。こっちは問題なしだが、念のため室外機周りの撮影もしておく。
この写真を見せつつ、もし店内に担当するような社員がいた場合は画像をもとに話を進めやすいだろうから手数をかけずに済みそうである。
一通り必要そうなデータや写真を撮ったところで近くの個人経営の電器店を含めて時間を確認して行く。出来れば最新の型式のエアコンを扱っている店がいい。
個人商店だと自分で取り付け工事の日取りなんかを決めるのもサクサク進んで、今日空いてるから商品が届き次第、なんてことにもなって意外と早く取り付け工事に取り掛かる可能性が高い。
逆に量販店だと、店に在庫はあるが取り付けの人員の都合で左右されるイメージだ。どっちもどっちだが、最速でお願いできる可能性が高いのは量販店のほうなんじゃないかと思っている。
さて、どっちから声をかけていくか。全部で七店舗あるので適当にくじを引いてその順番に電話をかけていくか、最短距離を考えて順番に直接出向くか。
実物を見ながら考えるなら量販店のほうに軍配が上がるな。やはり最初は量販店で気になったメーカーと型番を調べて、そこのメーカーと直接つながりがある個人商店のほうに連絡をしてみる、というのも一つ手としてあるな。あぁ、色々やり方があって悩ましい。
よし、まずは量販店を回ろう。その上でメーカーと型式を決めて、そこから複数店舗回って同じものを早く納品、工事してもらえるところを探す。そんな流れで行こう。
◇◆◇◆◇◆◇
店の開店時間が来たのでさっそく出発。一番近い店から回る。開店時間を過ぎてから出たので駐車場で待つ必要は無く、すぐに涼しい店内でエアコンを色々探し回れる。部屋に設置してもらった時の見た目とか感じとかもあるからな。写真は撮ってあることだし、そこに新しいものを設置するイメージを持つことは容易に出来る。
さて……エアコンのコーナーは、と。さすがにすべてが稼働しているような電気代の無駄遣いはしていないが、色んなメーカーの色んなモデルが壁一面に貼り付けられている。大体どれも白いが、メーカーによっては黒や青のものもある。おそらく、家の壁紙にできるだけ馴染むような色味の物を選択させることで購買意欲を刺激させようというものもあるんだろう。
具体的にどれがどう違うか、なんかを説明できるのは担当の従業員の仕事だろう。適当にパンフレットが並んでいたので聞いたことのあるメーカー品のものから見ていく。部屋が白なので、今回のエアコンも白にはしようと思う。
部屋のサイズより一つ大きいサイズのエアコンを選ぶ……やはり畳数が高い分値段も高い。一番小さい六畳間……多分四畳半用なんだろうな。そこから比べれば消費電力も値段もかなり変わってくる。
が、今回はその辺を一切考えずに買うことが出来る。金は、ある。無いのは納期までの時間だ。
しばらくエアコンコーナーから動かなかったのに気づいたのか担当者らしき人が近寄ってきた。
「エアコンのご購入をお考えですか? 」
「えぇ、購入することは決まってるんですよ。なので後は大きさといつ工事をしてもらえるかだけですね。具体的にそのあたりを相談していただくことは出来ますか」
「工事の予定ですか……少々お待ちください。ご購入を前提でお考えでいらっしゃるならこっちで工事にかかる時間を調べてまいります」
これは確実に客になる、と確信したのか、早速工事の時期を調べに行ったらしい。とはいえ夏も最盛期を迎えつつあり、その間に壊れたエアコンも無数にあるだろう。もし故障修理で依頼した場合、メーカーへ問い合わせして、メーカーから実際に故障個所を判断する人が来て、その後必要な部品を発注して部品が届き次第順番に修理に入って……という順番で修理に入ることになるだろう。
それが終わるころには一番暑い季節が終わってしまっていることになるだろう。それでは遅すぎる。俺はもっと手早く、出来るだけ早い時期に工事に入ってもらいたい。そうでないと俺の眠りの気持ちよさが阻害されてしまって、きっと探索にも不具合が出始めることになるかもしれない。
その為の新規買い替えだ。新規で大口の金が手に入るというのではあれば、新規設置と修理では別の作業員が担当していることが多い。そのため、修理を依頼するよりも新規で購入した方が早く設置してもらえることが度々あるというのをかなり昔だがネットで知った。
しばらくして、予定を確認したのであろう従業員が戻ってきた。
「今の待ちの感じですと、二週間後ぐらいを目安にしていただけるとありがたく思います。それ以上早く、というのはちょっと難しいですね」
「一応エアコン周りの写真やデータなんかはもう撮ってありますので、後は実際に工事に入っていただく段階、という感じになると思いますが」
「なるほど、そこまでお手数をおかけしていただいている状態ですか。もう少々お待ちいただいてもよろしいですか。隙間時間に埋め込む形で少し早くなるかもしれません」
俺のスマホだけを持っていって相談、という訳にもいかないので、実際に工事担当側の従業員も交えて相談をする。
「今のエアコンの大きさが十四畳用なので、同じ広さの物を購入しようと思っています。メーカーはまだはっきり決めてはいませんが、とにかく最短時間での納品をお願いしたいところでして」
「なるほど……ここの大きさなら今のまま完全に付け替え、という形では行けそうですが……さすがに順番待ちがありますし、既に工事が決まっていてお客様に日付をお伝えしてある部分もありますので、可能性があるとすれば、思った以上に早くその日の取り付け工事が終了し空き時間でもう一台ということは不可能ではないです。そうなりますとお客様に連絡がつくかどうかの問題が発生しますが……平日はどのようなお仕事をなさってますか」
俺が常にいるかどうか、もしくは仕事をしていないかどうかによっては早くなるらしい。しかし、探索者に連絡してすぐに家に居てくれ、という話は難しいだろう。
「探索者してるので、潜ったら連絡はつかないと思っていただいた方が良いので、とりあえず二週間後というところはずらせそうにないということになるんでしょうかね」
向こうから言わせるのは申し訳ないのでこちらで、あぁ大体把握したわという体で質問をしておく。
「そうなりますね。これはあまり大きな声では言えませんが、当店ではなく他の店、他店舗での担当者の手が空いていた場合もう少し早く手配できるかもしれません」
おいおい、自分の店の売り上げにしなくていいのかよ。二週間待たせるのを申し訳ないと思っていたとしても、だ。
「これも大きな声では言えないんですが、忙しすぎてちょっと困りつつあるのが実情でして。修理のほうはもっとです。なので従業員の負担を少し減らす意味でも、ほどほどの売り上げでほどほどの作業量で進めていきたいのが本音でして。なので、今回は御縁が無かったという可能性もありますし、他の店ではさらに長いことになっているかもしれません。ですが、お客様が満足することが第一ですので、まずは周辺の同業者の店を訪ねられてはいかがでしょう。その上でいつ工事に取り掛かれるかを検討されるとよろしいかと思います」
ふと従業員の胸元を見ると店長の文字。従業員じゃなくて店長だったか。なるほど、ならばその視点から物事を見据えることもできるだろう。ここはお言葉に甘えることにしようかな。
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