1020:仮武器試運転
ダンジョンで潮干狩りを
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今日も暑く、そして涼しい。昨日は帰り道しっかりひんやりしながらの運転だったが無事に自宅にたどり着き、近所のロースカツ定食を食べて満足し、眠ることが出来た。今日も生きててありがとう。生きていることに感謝するのは久しぶりな気がする。
いつもの朝食を食べ、今日も夕食は作らなくて出来合い物を買いに行こう。だとすれば昼食何を食べるか、あたりに焦点が当たる。
順番で言えば今日の昼食は……シーズニングで一品ときた。いいね、何作ろうかな。保管庫からシーズニングをあるだけ取り出し、まず、やみつきキャベツのシーズニングを一つとる。これでご飯のお供は出来た。後は何にしようかな……タンドリー何か肉は定番、ジャーマンポテトも悪くない。しかしちょっとピンとこないな。
このままもう二品位ご飯のおかず系を攻めて、肉を焼いてどれかに馴染ませてみる、というのも手か。うむむ、後三分で決めよう。それ以上悩むのは建設的ではない。最悪、シーズニングを目をつぶったまま色々選択して取ったら目を開ける、という方向性で行こう。
その結果、やみつきキャベツ以外にもやし炒めとピリ辛きゅうりというラインナップになった。早速米を炊きだし、もやし炒めに肉を追加する形にした。肉を混ぜて味が薄くなるのは解り切っているので、ここはあまり肉の味が表にでて来ないウルフ肉を混ぜ込むことにしよう。
キャベツをちぎってシーズニングと混ぜ合わせ、サッサっとまず一品。そしてきゅうりを細かく刻んでレンジアップして温めた後、その後で自分自身の水分と合わさせるようにシーズニングと混ぜ合わせてもう一品。これでご飯のおともが二品。試しに摘まんでみるが、中々悪くない。これはご飯が進む味。やはりシーズニングにハズレは無いな。
早速米が欲しくなるが、米は今炊いている最中だ。これと一緒に米が食えたら家でもダンジョンでも幸せだろうと感じられる気がする。これからもちょくちょく作ろう。無くなったらまた買いに行けばいい。
さて、最後になったがもやし炒めだ。もやしの水分が出る分だけ味付けはそれなりについてるはずだが、ここにウルフ肉を投入するとなると肉が追加された分だけ味がぼやける可能性が高い。手順通りに作った後シーズニングを追加でもう一袋投入してウルフ肉にもしっかり味が回るように濃いめの味付けにしようか。
薄切り、細切れになったウルフ肉を味付けせずに先にある程度焼いておき、焼けたところでもやしとシーズニングを投入。後は全体に火が通るまで弱火でゆっくり焼く。作ってから思ったが、これをチャーハン風に仕立てることもできたな。そういうのもある、と覚えておこう。
昼食の準備が出来たところでスーツに着替えて出立の準備。今日は試運転だ。カニうまダッシュをやろう。今日は柄を使わずに新しい直刀を使っていく。とりあえずこいつを体に馴染ませてる間に石原刃物さんに新しい剣を作ってもらう。
ちょくちょく連絡は来るだろうが、そのたびに顔出しにはいこう。これも納得できる武器を作ってもらうため。時間的コストはかかるはずだがこの先の事を考えればそう高くない買い物ということにはなるだろう。しばらくは直刀が新しい相棒となる。柄を使い倒すことも必要だが、今一番必要なのは慣らし運転だ。
柄、ヨシ!
新しい直刀、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
嗜好品、ナシ!
保管庫の中身、ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
今日はミルコはオアズケの日。毎回俺がお菓子を渡すと思ったらそうはいかない。買い出しに行かないと在庫が無いのだ。ミントタブレットとコーラは毎回多めに渡しているので今日の分が~とか言い出さないように自分で調整しているだろう。
今日は新しい武器のお披露目ということで視聴者の皆さんには新しい武器のお目見えとその切れ味の楽しさを俺から伝わると良いなあと思っている。さぁ、お出かけするか。
おっと、その前に直刀を取り出してスマホで写真を取り、芽生さんに報告。「新しい仮武器買ってきました。本番用のオーダーメイド武器はまた別で作ってもらいます」と。
すぐ返事が来た。どうやら起きていたらしい。「前のよりちょっと黒光りしてる」妙な表現だ。「前のよりは高かったのでそれなりに期待はしてる。早速試運転してくる」送信っと。「いってらっしゃい」
いってきます。
◇◆◇◆◇◆◇
いつも通りダンジョンまで帰ってきた。やはりホームタウンという感じがする。入ダン手続きとリヤカーの拝借をさっさと済ませてダンジョンへ突入する。いきなり五十層でも良いんだが、まずは危ないと感じる局面が少なそうな場所で試す方が安全だろう。
リザードマンは何となくうまく斬れそうな気はするが、トライデントで受け止められた場合にどんな感じに手ごたえが来るのか、それからドウラクの甲羅と手足の隙間に刃を通す際どのぐらいの手ごたえがあるのか。色々楽しみはある。
いつも通りエレベーターで七層に下りて茂君、その後で四十二層まで下りる間にクロスワード。だが、今日はあんまり熱が入らない。新しい直刀を楽しんで扱えるかどうか、そっちのほうに意識が向いてしまっている。いかんな、早く戦ってみたい。どのぐらいの切れ味の鋭さになっているのか、雷切の乗り具合はどのくらい変わっているのか。
本番の石像叩きはまだ先の作業になるとして、その間に身体にほんの少しの違和感を吸収させてきっちり合わせていくことも大事だろう。流石に一人で五十九層まで潜るのはまだ難しい。手数の問題もあるし、もっと【雷魔法】を鍛えねば相手の手数に対してこっちの手数が間に合わない。
その点、一発で倒せてすぐに一対一に持ち込める分だけカニうま島マップのほうが慣らし運転にはより体に合っていると思う。
無理はしない、新しい武器を試す、試すにはそこそこの硬さや強さを持っているモンスター、という条件に当てはめるとやはりカニうまするのが素直でいい所だろう。今日も茂君はきっちり稼いできたので、帰りにも茂君して帰ることにしよう。
四十二層にたどり着き、リヤカーを放置。早速一周するため、まずはゆっくりと歩きだす。待ってましたと言わんばかりにカニ四匹に囲まれるが、その内三匹を雷撃で倒し、一対一の形に持っていくと、新しい直刀を取り出して、まずは雷切無しでカニの甲羅に向けて斬り込む。
流石に上から下までスッパリと切り落とすことは出来なかったが、甲羅の三分の一あたりまでは刃を通すことが出来た。前のに比べて切れ味が増しているのは間違いないらしい。少し体がぶれる感覚が残るが、これが新しい直刀と前の直刀の違い、ということだろう。このまま一周回って、体に完全になじむまでゆっくり体に慣らしていこう。
◇◆◇◆◇◆◇
ゆっくりと時間をかけて、四十三層のカニうま島を一周してきた。新しい直刀にも体が慣れてきたと実感する。ここからゆっくりとペースを上げていき、午後はいつも通りダッシュが出来るようにまずはカロリー補給だ。
四十二層に戻って昼食の準備。今日は昼食しか持ちこんでいないので炊飯器ごと持ってくるわけではなく、タッパー容器に米を詰め込んできた。早速やみつきキャベツを箸で一掴み、胃袋に入れて試運転の合図を送る。ごま油と昆布の香りで一気に体がカロリー補給モードに切り替わっていくのを感じる。
早速米を片手に食事開始だ。米を胃に入れ、そしておつまみを二品。今日は大きい意味でのおかずはウルフ肉ともやし炒め。後は米を主食としてそれを満足に食べるための小さなおかずセレクションだ。その分米もちょっと多めに炊いてきた。二合もあれば空腹を満たすには充分だろうし、おつまみセレクションにはウルフ肉も入っているので、厳密にはこれが主菜になるんだろうな。
主食一つ、主菜一つ、副菜二つ。ダンジョン飯にしてはそれなりにバランスがいいはずだ。気にせず食おう。そして午後も無事に運動して儲けが出るように体を慣らしていくのだ。
まあ、午前中で儲けは充分に出ているし、石原さんご一家に預けたインゴットや無理やり飲ませたポーションの代金、それら含めてトントンからちょっと黒字、というところだろうか。
あぁ、楽しみだなあ新しい剣。形や持ち手の相談が入るにしても、出来上がっていく様を逐一知りながら待つことが出来るのは楽しみで仕方がないな。
食事の手も止まってはいない。やみつきキャベツは次々に口の中の唾液を分泌し、米を噛むことで米の甘味とキャベツの甘味、そして昆布の旨味が見事に絡み合い口の中でハーモニーを奏で、ピリ辛きゅうりの薄めの辛味がアクセントを添えてくれる。もやし炒めは二袋分味もしっかり残っていて、濃い味付けのウルフ肉とシャキシャキとしたもやしが触感を添えてくれる。
キャベツが無くなり、もやし炒めが無くなり、そして米を食べ終え、最後にピリ辛きゅうりだけを食後の余韻にとポリポリと齧る。これもまた悪くない。辛味が残る分最後に水分が欲しくなるな。コーラではないが、コーヒーはある。こいつで流し込んで口の中をサッパリさせよう。
食休みにのんびりと空を見上げる。相変わらず太陽らしき光源が見えないのに明るい空。地上ほどじゃないほど良い暑さ。ちょっと上着を脱いで椅子に軽く畳み、この環境の暖かさを精一杯全身で受ける。
波の音が聞こえてきそうだが、ここの海岸の波打ち際っぽいものは波をよこさない。ただ、そこには砂で洗われた砂のようなものがデコレーションされている。そういえば、砂は鑑定してもらったけどこの水は鑑定してもらってないな。地下水道の水もそうだが、ここの水もついでに鑑定してもらったほうがいいな。
……あ、一昨日ギルマスに報告した時に水の提出を忘れていたな。今更になるかもしれないが、ここの階層の水も汲んでおいてまとめて水分調査ということにしてもらおうか。保管庫からミネラルウォーターを出して中身を捨てるのは戸惑ったので別の容器に移し替えて、海岸の水をくむ。そして四十二層の水と書いた紙を貼り付けてこれでよしっと。
明日の朝の仕事が増えたがちゃんとしておくことは必要だな。本来ならD部隊がやってそうなことではあるから、今更感はあるかもしれないが、やらないサボりよりやる無駄のほうが本人は達成感を得られるし、真中長官ももしかしたら実際には興味津々だったかもしれない。水つながりで二種類持ってきましたということにしておこう。
しかし、平和だな……今日の休憩はこのままボーっとしていたい。コーヒーはまだ残っているのでちびりちびりとカフェインを摂取しつつ、腹が膨れて頭にカロリーが回っていくジュルルルッという音を感じ取りながら、静かなこの環境を楽しむ。
他の探索者も居ない、結衣さん達は居るなら四十九層だろうし、高橋さん達なら五十六層だろう。この四十二層には今、俺一人。このそこそこ広い土地は今俺のもの。突然全裸になって砂浜を走りだしても誰にも見られることは……いや、ダンジョンマスター達は見てるな。迂闊に俺の息子を見せびらかすことも無いだろう。
女性……少なくとも女の子のダンジョンマスターも居るんだ、そこにこんなものをお見せするわけにはいかないだろう。でも時々、誰も居ないからというのを理由にして全裸になりたいときもある。家に帰ったら思う存分全裸で過ごすことにするか。
全裸と言えば、寝起きで体拭いている間とかも見られてたりはするんだろうか。それなら今更全裸になってもいい感じではあるが、ダンジョンマスターのローカルルールとして寝起きや身支度、それから粗相をしている間は見ないという気遣いとか配慮が行われているのかもしれないな。
自分の知らない所で気が回されている。それで楽しめるコンテンツが見られるというなら、ファンとしては……ダンジョンマスターはファンか。そう言われるとちょっと気がまぎれるな。さて、ファンのために午後は頑張っておかないとな。
よし、休憩終わり。スーツを着なおすと軽く砂を払う感じでパッパッとはたく。砂がついている訳ではないが気分的なものだ。お食事セットと机と椅子を保管庫へ片付けて直刀を装備しなおすと再び四十三層に戻る。今日は一日カニうま祭りだ。
作者からのお願い
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