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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第十九章:いろんな更新、いろんな改定、新しいつながり
1013/1206

1013:六十一層 3/3

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

「何とも不思議なモンスターだった。甲羅の内側は部位ダメージが入らないのだろうか? 」

「甲羅の内側はもしかしたら黒い粒子が内包されているだけで、手足や首を出した瞬間それが手足や首になるのかもしれません。シュレディンガーの黒い粒子みたいなものかもしれません」

「とりあえず録画は出来ているのでこれを見て専門家が分析するのを楽しみにしておくか。どういう結論に達するかはともかく、亀を倒すのは結構手間がかかるが、雷撃を続けている限り手出しをしてこない辺り、ワニと違って一匹ずつ相手にするのは難しくなさそうだな」


 感想戦を一通り終わらせ、意外にてこずった亀のドロップ品を確認する。青い魔結晶と……何かの肉の部位を落としていた。例によって真空パックである。


「魔結晶は確定ドロップだと考えていいとして、亀の……ここは何の部位だろう? 」

「エンペラって奴じゃないですかね。コラーゲン豊富でお肌に大変優しい食べ物だと聞いたことがあります。すっぽんの奴を聞いたことはありますが食べたことはまだ無いですねえ」

「肉って事は確定ドロップじゃないんだろうな。何体か倒してドロップ率を見たいところだが、ここは他の階層と違って一匹ずつ倒していくのに時間がかかりそうだ」


 一発目で肉っ気が出たというのは幸運な方なんだろう。これも何匹倒したかを数えておおよそのドロップ率を出す必要があるな。しかし、立派なエンペラだ。大きさも二百グラムぐらいある。


 このダンジョンで肉っ気のあるものはいろんな肉の二百グラムかワイバーン肉のような四百グラムか、それともカニの一キログラムがある。おそらく二百グラム刻みに設定されているんだろう。しかし、エンペラとはまたマニアックなものをお出ししてきたな。


「火力不足って事は無いとは思うがモンスター密度そのものは高くないようだし、うまいこと手早く倒す方法を試しながら進んでいくか。とりあえず亀が居なくなって先へ進めるようになった。この先はワニが出てくるか亀が出てくるかを見極めつつ進んでいこう。亀の場合は引き続き短時間で倒す術の探し方、ワニの場合は他に攻撃方法があるかどうか、かな」

「やることが盛り沢山でいいですねえ。スマホのバッテリーはまだ持ちますか」

「どれどれ……後一時間ぐらいは大丈夫かな。容量はゲームとか入れてないので充分あるはずだ。後でまとめて動画として提出しよう」


 そこから水路を越えて反対側に当たる道へ。流石に今日来ていきなり次の階層への階段が見つかるとも思っていないし、今日は午前中の勉強の時間もあってか時間も押し気味だ。六十三層への道を発見するなら宿泊コースで挑むことになるだろう。しかし、ここは深いわりにモンスターの数もそう多くない。


 仮に査定が開始されたとしてもそれほど美味しいエリアという形にはならないだろう。新しいマップの最初の階層というのは難易度高めと呼ばれる小西ダンジョンでも優しめの難易度に設定されているらしい。


 そういえば、本当に精神的にも肉体的にもピンチを感じたのは十層以降はそう多くないな。それだけきちんと実力アップをしてから階層を更新しているからなのか、それともダンジョンとして十層だけをわざと厳しくしていたのかは今となっては解らなくなってしまったな。


 水路と並行して歩いていく。水路は結構な幅があり、ワニが普通に水路から這い出して来るまで姿が見えないこともある事を考えると深さも充分にあるらしい。はまったら困るな。


 それに加えてツルツルの床がワニや亀が水中から這い出してくる際の水で少し滑る。滑って転んでそのまま水路に転がり込んでいって身動きを取れない間にやられる、というケースが考えられる。足元には注意だな。


 それはそれとしても、水路の中にワニや亀がひしめき合っている訳ではないということは索敵から感じ取ることが出来る。水中のモンスターでも問題なく【索敵】が出来るということは二十九層あたりのケルピーで実感しているので、水路は水路として続いてはいるものの実際にモンスターが居る場所ははっきり解るようになっている。


 そのモンスター数だが、はっきり言って少ない。カニうまダッシュのほうが稼げるだろうという思いが強い。これで新しいポーションでも出てくれたらまた事情は変わりそうなものだが、今のところドロップを期待するためのモンスターの数が少ない。もしかしたら何処かにまとめて湧いていて、そのせいでここに数が少ないのかと思うぐらいに少ない。


 モンスターが少ないならその分テンポよく進むんじゃないかとも思えるのだが、ワニも亀もとにかく頑丈だ。こちらで全力で戦ったとしてもそれでも他のモンスターに比べてまだ三倍ほどの時間がかかる。


「これならエルダートレントを延々と狩り続けるほうがドロップ品にしても数にしてもまだ楽だな。

なんか二十九層側の階段に引っかかってみんなの邪魔になってそうだからつい手が出てしまった。反省はしていない。むしろB+ランク探索者がたまたまラッキーでなれたとか、本来の実力とは違うところで判断されてるんじゃないかという風評を取り去るためにも必要な措置だったと言い訳しておく」


 さて、ワニだが、噛みつき以外の攻撃をしてこないことまでは解った。そして、ワニの突進は結構速い。雷撃で怯ませてスタンさせてから芽生さんが攻撃するという連携で問題なく倒してきている。


 ワニのドロップは青い魔結晶に加えて、かなりの面積を誇るワニ革をドロップしてくれた。芽生さん曰く、一般的に流通するワニに比べれば一回りも二回りも大きな革であり、中々の値段にはなりそうだとのこと。自然の動物から手に入れたものでもないので動物保護団体からのクレームも入らないことから、安易に使える装飾品の素材としては重宝するのではないか? ということだ。


 そして問題の亀だが、こっちはなかなか美味しく頂けるパターンをまだ構築できては居ない。相手に何もさせないことは出来るが、同時にこちらからもやることが少ないのが問題だ。


 頭をこっちで抑えて、雷撃して引っ込めている間に芽生さんにしっぽや手足の出ていた部分に魔法矢を撃ちこんでもらったり水魔法で何らかのダメージが与えられないか、または物理的に槍を差し込んで中でグリグリとして中身にダメージを当ててもらってはいるものの、致命打になるような攻撃は未だ発見できず。やはり、頭を出した瞬間に首を切り落とす以外に手早く戦う手段は無いように感じる。


 しかし、頭を出しっぱなしの状態だと亀の口から水魔法の矢が飛び出してくるので避ける必要がある。流石にこの階層まで潜ってきて、魔法耐性があるとはいえ無傷で居られるとも思えない。避けられるダメージは避けるに限る。


 結局のところ雷撃で怯んでいる間に近づき、頭が出た瞬間に斬り付ける形でダメージを与えるのが一番確実なのではないか、というのが二人で出した結論だ。試しに雷切で亀本体を傷つけようとしてみたが、ダメージを与えることは出来なかった。


 また、亀は肉以外にも甲羅の一部を落とすことが解った。叩いてみてもかなりの硬度を誇り、加工が難しいかどうかまでは解らないが、間違いなく防具の表面の素材なんかには使えるのだろう。それを決めるのは俺ではないが、亀の甲羅と言えば防具というイメージが付き纏うのは俺の脳みそがある程度ファンタジー脳だからだろう。


 ドロップ品については現状でそれ以上に得られるものは無かった。モンスター数が少なすぎるためレアドロップまではまだたどり着けていないというイメージがあるが、ここにレアドロップがあるなら、最上位のキュアポーションが並ぶのではないか、という予想だ。


「そろそろ折り返し時間ですかね」

「ついでに言うとカメラのバッテリーもそろそろ危ない。一度外して充電しておく必要があるな」

「じゃあ撮影しながらの探索はここまでですね、お疲れ様でした」


 芽生さんがそう言いながら俺のヘルメットからスマホを外し、録画モードを切る。


「さて、モンスターもある程度戦い慣れてきたことだし、モンスターが少ないこともあって帰り道は余裕をもって帰れるな」


 スマホを受け取り、外に出したまま外部バッテリーで充電を始める。うっかり保管庫の中に入れてしまうと充電速度も百分の一になってしまう。


 ふと、百倍ゾーンに放り込んだ外部バッテリーと充電中のスマホの場合なら充電速度も百倍になるんだろうか、と思いついた。だが、スマホが壊れると恐いからやめた。大分前に本体だけ買い込んだスマホがあったはずだな。アレを放電して充電を試してうまくいくようならやってみるか。


「結局ここって下水なんですかね、それとも太めの上水道なんですかね? 」

「水が臭くないから上水道っぽいが、わざわざ汚い水を作り出して流すというのが面倒くさかったのかもしれないな。かといって、臭いに耐えながらダンジョンを攻略していくのはダンジョン攻略の目指すべき方向性とは違う、ということになったのかもしれん」


 ろくろを回しながら説明する。ダンジョンを作った側の気持ちを考えれば、ダンジョンの臭さを競っている訳ではなく主目的は魔素の持ち出しなのだからそれを阻害するようなトラップにも似た構造は出来るだけ避けようとしているんだろう。


 その割には四十九層から五十二層に関して言えば、毒耐性が必要になってくるからそこまで深く考えていなかったのか、そういうマップを作りたかったという可能性も否定できない。


「なるほど、アクセントとしては大事かもしれませんが、それを味わわせたいのが目的ではないと。そう言われると納得できるところですね」


 芽生さんは俺の論理である程度納得してくれたらしい。六十一層がどのぐらいの広さを有しているかは分からないが、マップ的にはかなり単調なマップとなっているのでイメージ的には通り道のついでにモンスターが発生している、というイメージが湧く。


「しかし、この階層でこういう作りだということは六十三層のエレベーター周りやセーフエリアとして機能する場所が作られているのかどうか少し怪しくなってきたな。ちょっと覚悟を決めておいたほうがいいかもしれないな」

「水場がすぐそばにあるマップというのは無かったですね。もし水がきれいなら洗い物をするにはちょうどいいのかもしれません」

「サンプルの水、一応持って行ってみるか。空いてるペットボトルは無いから、勿体ないがミネラルウォーターを捨てて……これでよし。一応ラベルを貼っておこう」


 六十一層水路の水、とメモ書きして、ラベルに紙を挟み込んだ後保管庫へ。これも提出して成分分析に回してもらおう。汚染物質の多いような水なら私的に使うこともためらわれるだろう。まぁ、仮にミネラルウォーターみたいに澄んだ水や【水魔法】で作り出した水と同じような成分で出来ていたとしても、これで洗い物をしたり飲んだりするのはためらわれるのは間違いない。


 そもそも自分である程度水は出せるのだから、使うとすれば下水代わりに利用するかどうか、ぐらいの判断基準でしかない。しかし仮に汚かったとしても、平気で洗い物の残り水を流したりする人間にはちょっとなりたくないな。


 色々考えながら進むと、行きに渡った水路の橋の上にまた亀。短時間調理のために雷撃で怯ませた後全力で駆け寄って雷切を頭部分の空洞にブスリ。しばらく雷撃で焼くと亀が頭を出してこっちへ攻撃してくるそぶりを見せたため頭と同じ方向に向かないように軽く回避して首を落とす。


 よし、今までで一番シンプルに倒すことが出来たな。この亀にも少しずつ慣れてきた。とりあえず上水道か下水道か解らないが、地下には違いない。そしてダンジョンの地下水道にはワニと亀が住んでいる。それとドロップ品についての情報を持ち帰ることが出来た。今日の探索としては充分な成果を出せたと言えるだろう。


 後は地上に戻って明日報告。間違ってもこんな遅い時間にギルマスが居るとは思えない。居たとしたら何か大事件の前兆みたいなものが起きるはずだ。そんな大事件がダンジョン界隈で起こるとしたら……起こるとしたら、B+ランクの開放と条件、それとドロップ品についての情報になるだろうな。


 帰るまでが探索だ。六十層に戻ってからも気を抜いては居られない。帰り道も気を付けていくのだ。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
水路に直接電流を流すとどうなるんですかね?この先を読んでいないので、ネタバレでしたらすみません。
>なんかそんな話を耳にしましたが、犯人はやはり洋一さんでしたか 992話でバレてますので、ここの展開は不自然です
亀肉キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! 野食界隈ではメジャーな美味しい肉ですwwwカミツキガメしかりアカミミガメしかり!!!!
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