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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第一章:四十代から入れるダンジョン
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1:クビになった

画面の下のほうの画像をクリックすると販売サイトへ飛びます。

ダンジョンで潮干狩りを

Renta!等いろいろなサイトで発売中です。是非とも続刊のためにもご購入のほうよろしくお願いします。

 


 朝、会社についたらいつもは重役出勤な人事部長が俺を待っていた。


「安村君、今日で辞めてもらうことにしたよ」

「いやいやちょっと待ってください、いきなりそんなこと言われても困りますよ!」

「一か月先までの分の解雇予告給料はちゃんと払うから文句は言わないように」


 それは法的に問題ないだろうが、俺的には問題である。


「いくらなんでも急にじゃぁハイ明日から無職と言われても非常に困るのですが」

「君、四十になってまだ無役職でしょ?これから昇進する見込みも無いことだし、もっと若い子に上に来てほしいんだよね。明日から君の代わりに来る子もう決まっちゃってるから今から変更するのはその子に悪いと思わない?」


 わざとだろう、大げさな手ぶりをして俺を煽る。


「その前に俺に突然クビにして申し訳ないという気持ちは無いのですか」

「クビにして申し訳ない」


 そう言うと人事部長は俺に頭を下げた。この人が頭を下げるときは二パターンだ。謝る気が全くない、もしくは上司に対してだけである。


「なっ」


 ストレートなカウンターパンチを食らってしまったが、パンチを放った本人は申し訳なさそうにしていない。


 おそらくちょっと前から体のいい厄介払いをする準備をしていたんだろう。たかが俺一人クビにするのに手間がかかってるなと思わなくもないが、仮にも正社員を解雇するにはいろいろ面倒くさい事情があったのだろうが、そこまでして俺を解雇したかったか。

 

「とにかく、今日中に荷物をまとめて会社から去ってもらいたい。必要書類は用意しておいたので帰りまでに受け取りたまえ。ではな」


  言いたいことを全部言い切ったのか、人事部長は自分のデスクへ帰っていった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇


「そりゃあれだな。お前さんが悪いとは言い難いが悪くないとも言い難いな」

「どういうことです?」

 

 頭を掻きながら直属の上司がそう告げる。

 

「お前さん、今年の初めの新人歓迎会で新入社員に飲み会は強制じゃないから参加しなくてもいいぞって教えたろ。その時のことをずっと根に持たれてたんだな」

「うぇっ、そんなことで俺クビっすか」

「お前さんも参加しなかったから知らなかっただろうが、新人一人も参加しなかったんだよ。それでわざわざ飲み会の幹事やってた人事部長が苦い顔してたのを覚えてるぞ」


 あー……それは多少恨まれてもしょうがないかもしれない。


「でもその一件だけでクビにされるほど嫌われてたんでしょうか」

「そこまでは解らん。が、すまんな。俺では力になれん。非常に申し訳ないが……受け入れてくれ」


 直属の上司は力不足を嘆きつつも俺に労いの言葉をかけてはくれた。


 確かに俺は人付き合いがうまいほうではない。下手と言っていい。

 酒はあまり飲めないので飲み会はほどほどで断りを入れつつ、社内でも浮かない程度にはコミュニケーションを取りはしたが、深入りするような事も無かったと思う。


 つまるところ、クビを切るにはそこそこ都合がいいという段階だったのだろう。会社から見ても、あまり使いどころのない中年を一人置いておくより、今後の伸びしろに期待できそうな若者のほうが将来性があると考えてもおかしくはない。


 替えがいくらでもいるというしがないライン工を二十年間続けていた俺にも問題があったということか。なんかどうでもよくなってきたな。クビでいっか。


 俺は考えを決めるとさっさと荷物をまとめることにした。


 ◇◆◇◆◇◆◇


「私物……というほどのものはないな。作業着と作業靴と工具ぐらいか。長く居たわりに個人的な荷物はほとんど置いてなかったんだな、俺」


 荷物をまとめた俺は現場各所への挨拶と、今までお世話になりましたというお礼を告げた後、人事へ向かった。


 人事部の島に行くと【安村君へ】というメモ書きとともに退職にあたって必要な書類諸々が用意してあった。その場に偶々いた子……名前なんだっけ、思い出せないな。その子に受け取ったことを言っておくとしよう。


「あの、書類引き取りに来たので。お世話になりました」

「安村さん、本当に今日までなんですね。会社に対して抗議とかなさらないんですか?いくらでも文句のつけようはあると思うんですが」

「いや~、あんまりそういうのはちょっとね。まぁこれも一つのキリのいいところというかなんというか。もうどうでもよくなっちゃって」

「そうですか。人事部長には受け取りに来たこと伝えておきますね」

「はい、はい、お願いします。それではお世話になりました」

「安村さん、今後どうされるんですか?その歳で再就職先って難しいと思うんですけど」

「とりあえず会社都合退職という事で失業手当はすぐ出そうなので、その間に仕事探して何とかしようかなと思ってます。まぁなるようになれ、ですかね」


 あははは……と頭を掻きながら話しをするが、よくよく考えたらそうだよな。俺特に技術があるわけじゃないんだよな。そんな中年雇うところあるんだろうか?


 ◇◆◇◆◇◆◇


 三週間後。


「申し訳ありませんが今回は採用を見送らせていただくことになりました。あなた様の行く末がよきものとなりますようお祈り申し上げます」


 というメールが二十通ほど来たところで俺は再就職をいったん見送らせていただくこととなった。


 うん、覚悟はしてたよ。ハローワーク行ってもそもそも求人が介護職ばかりだったり、たまに違う業種があると思ったら要経験だらけだったり、そもそも三十四歳以下しか募集してなかったりでおじさんを求めるような奇特な会社はそうそうなかった。


せめてフォークリフトの免許ぐらいは取っておくべきだったな。要フォークリフト免許だけでも何件かはあったが、それも本当に人材募集をする気があるかどうかはまた別の問題であろうが。


 覚悟をしていても精神的にくるものはくるので、不眠を覚えたりイライラしたりとストレスで少し髪の毛も抜け、神経過敏のような状態になっていた。


 もはや顔なじみになったハローワークのお姉さんもこっちの顔を見ると申し訳なさそうにしながら、それでも新しい求人を紹介してくれる。仕事とはいえなんだか申し訳ないなぁ。


「安村さんの経歴だと……こちらぐらいしかもう紹介する会社がございませんので……」

「そうですか……わざわざなんかすいません、苦労させてしまって」

「いえ、こちらも仕事ですので」


 お姉さんはしばらく考えた後、俺にこう切り出した。


「ダンジョン探索者を目指すというのはいかがでしょうか?」

「探索者……ですか?」

「はい。ダンジョンに入っていろんなモンスターと戦ったりする探索者です。やってみませんか?」



「え、今からでも入れるダンジョンがあるんですか?」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
そんな!今から入れる保険があるんですか!?
[一言] いや、40、50代の転職はスキルがあっても絶望しかないでしょう。ましてや何もないとさらにきついわ
[良い点] 432話まで読んで、しばらく放置してしまい読み直そうと最初から読もうと思ってます。小さい頃に行った、潮干狩りでの母親の凄まじい気合いを思い出してクスッとします笑
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