三話。
「昔の……中学1年生の頃の二宮君ってどんなんだったので?」
柊元生徒会長と一緒に下校中、本人が居る前では聞けなかった質問をしてみる。
「ふむ……うまい言い回しは思いつかないけど……勉強できる屍って所かな?」
「あらあらまあまぁ、屍とはねぇ……」
予想外過ぎる回答にびっくらポンだぜ。
「そりゃあそうだろう? 親御さんが起こした事件のとばっちりで常に1人きり。味方はいない。挙句の果てに本人のあずかり知らない事実無根の噂話が会話のネタとして安易に生まれる状況下。抵抗すれば面白い。抵抗しなければ体の良いサンドバック。――そら心は死に体になるってもんだ。寧ろモノホンの死に体に成り果てなかったのが不思議に思える」
「ん~……そこまで酷かったのね。ちなみに助けたりとかは?」
「無理オブ無駄。人より目立つ私があーだこーだしてたら反って悪化してただろうて。最悪、愉快犯擬きに勘違い正義マン。私を敵視する嫉妬深い魑魅魍魎共が二宮君を攻撃し兼ねない。何の気なしに零した擁護の言葉だけで怨恨を実らせてしまう子だっている」
「あらあらまあまぁそれはそれは」
納得も納得。残酷だけれども。
「――もし、もしも君があの場に居られたらどうしてた?」
「どうもしない」
「!」
「あらあらまあまぁ、意外だった?」
適当なリアクションではない。ガチで驚く柊元生徒会長。
「もちのろんだぜ。てっきり”助ける”と即答されるか、少なくとも私と同じ結論に至ると思っていたよ」
「ん~まぁ今となってはどうしようもない過去のあーだこーだ言ってもしょうがないのでね? それに二宮君も”しょうがない”って言う。悲しいけど」
”思う”じゃなくて”言う”。道ずれにしてしまうくらいなら突き放すのが二宮棗という男です。本当に悲しい事だけども。
「じゃあどうとでもなる今現在は?」
「野暮だね。そりゃあ死ぬ気で拒絶されない限りは助けますとも!」
ふふん♪ と自信満々に答えますとも。でもこの返答にも柊元生徒会長は驚く。
「ありゃりゃのりゃ。拒絶されても助けると思ってた」
「あららのら。人を救う職種の人ならいざ知らず、ありがた迷惑はつまるところただの迷惑行為ですのでね? そこまで自分勝手にはなれないかな」
「ほぅ」
と、今度こそご納得頂けたご様子。――ただ、その足は止まってしまった。振り返るとそこにはどこか危うい笑みを浮かべる柊真揮がいた。
「ホントに想定外。油断ならない面白い男だね君は。――気が変わった。やはり君にも手伝ってもらおうかな?」
「生徒会の件? そりゃあもちのろん! 喜んで」
「いや? それとは別件。そっちには関わらせない」
「? あらあらまあまぁ……」
二度も言われた。それも一度目と違って遠慮も忖度もなし。あらあらまあまぁ、頑なに私を生徒会に関わらせたくないようで。もしかして生徒会に大切な人が居るのかな? と、考えていると柊元生徒会長はスマホを取り出しては電話を掛け、1分も満たずに電話を終える。
「ついてきて」
柊元生徒会長は踵を返し、帰り道を引き返す。言われた通りについていくと道中にあった隠れ家的な喫茶店へと入店し、定員さんに”待ち合わせ”と言って店の奥へ。
「れ……ぃ……?」
と、案内されたテーブルには柊元生徒会長から奈々氏君と呼ばれた1人の男子生徒がいて、どういう訳か私を見るや怒り以外の負の感情が入り乱れるといった感じの中々に珍妙な表情を浮かべていた――。




