表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/76

一話。

 家族旅行を終え、冬休みが明け、月を跨いだある日の放課後。

 いつもの如く憩いの場で目が覚めた私、六出梨は帰路に就く前に進路希望調査を忘れた事を思い出し、四季先生と一緒にそれがある教室へと向かい、辿り着く。


 そう辿り着く。しかしながら中には入れない。もうかれこれ1分程、教室のドアの前で立ち往生してます。

 その理由はと言うと――。


(あらあらまあまぁ! あの二宮君が女子と! しかも滅茶苦茶に美人な女子生徒と仲睦まじいく話してるーっ!?)


 と、言うわけですはい。

 仕事がある。そう言って先に帰宅したはずの二宮君が教室で見知らぬ女子生徒と話している。それも楽し気に。

 そんな珍しい光景に我々三人は教室の前で聞き耳を立てております。


「お! 二宮もやるねぇ。まさかあの――……ん? えっ! 梨? どうして鞄の中身を出していらっしゃるので?」小声


 四季先生が首を傾げる中、手を止めずに鞄の中身を全て出した後で意気揚々と答えます。


「ん。鞄を覆面にしてあの女子生徒を襲う」小声


 と。

 流石の返答に四季先生は激しく狼狽し、困惑を隠せずに「女の影が許せないと?」という。

 的外れな質問に私は首を横に振ります。


「いやいやぁ寧ろ逆さね。あのナイスガイに今まで彼女がいなかった事が許せんのよ」小声


「じゃあなして襲うと?」小声


「吊り橋効果的な奴ですとよ四季先生。不審者に襲われた所を助けてもらって恋に落ちる! 名付けて”恋のキュービット大作戦!”。友達の為だ。一肌脱ごうじゃないか」


「今時そんな……! ちょちょちょ!? やめなさいって!! そんなんパンを咥えた転校生以上の珍事象だから!!」


「ええい放せぃ!!」


 鞄を被ろうとする私を必死に押し留めようとする四季先生。そんな事をしている内に教室の扉が開かれ中から二宮君が登場。

 普通に五月蠅い。声漏れてたぞ、と呆れられながら教室内へと連行された。


「やぁ」


「あ、どもです――ハッ」


 ――近づいて分かった。この女子生徒さん。ほんとに美人。それも可憐ではなく妖艶の類。背も高いのも相まって女子高生にしては浮世絵離れしていらっしゃる。是非兄木肌で苦労人な二宮君を手玉に取って尻に敷いてあげてほしい。


「うちの二宮君をどうかよろしくお願いします。基本的に不愛想な男ですが根は優しく真直ぐな男なんですっ。暴力は元より浮気なんて絶対にしませんッ! やや自己犠牲が難点ですけど自信を持って進められる超絶優良物件ですッ!!」


「そうだな母さん。達観というか諦観というか……是非倅を尻に敷いてやってくれ。()()()みたいな人が相手だったら一安心だ」


「誰が倅だ!? 秒速で悪ノリに乗ってんじゃねぇ!」


「――でかくなったなぁ」


「あらあらまあまぁ、今夜は親子水入らずでお風呂でも入ってきたら?」


「やめろ!!」


 と、私と四季先生によるお見合い時のご両親からの常套句にしか聞こえない台詞に二宮君は叫び、その隣で女子生徒が”長く喧嘩していた友人達が仲直りした瞬間を見守る友人”のような何処か尊さを感じさせる視線を向けて観察していた。

 その後も二宮君が嬉し恥ずかしなんとやらって感じで静止しようとしたが無視し、私達は二宮棗というナイスガイの良い所を陳列していった。



「落ち着いたかい?」


「oui。世の母親の気持ちが分かりました。そりゃあ女っ気のない息子さんが女性と……しかもこんな別嬪さんと一緒に居たら取り乱すわな」


「もっと褒めて構わんよ? 寧ろ超絶美人と褒め称えたまえ!」


「よっ! 港区女子の上位カースト。頂きマニュアルの上位ランカー」


「ほほぉ~? 絶妙に嬉しくない褒め方! 流石は長年恋する乙女心を無視し続けた逸材だ。言葉選びの時点で他の奴らとは格が違う」


「あらあらまあまぁ、お嫌いですか?」


「いんや? 思考回路を股間に奪われた頭ボウリングの球共や、最低限の努力すらしない見てくれコンプレックス共よりかは遥かに好き」


「あらあらまあまぁ――満点!」


「なんで初対面なのに意気投合してんだよ……」


「「二宮君が心を開いてんだ。悪い人じゃない」」


「やめてくれー」


 疲労困憊。もう何を言っても仕方がないと諦めの境地に入る二宮君なのであった。


 ――さて。順番が逆になりましたがここいらで自己紹介をしましょう。意気投合したと言っても一応初対面なのでね?


「初めまして。六出梨です」


「あぁ……初めまして。生徒会長だった柊真揮(まき)だ」


「え?」


 なん……だった……ですと……?


「――ほう? ハイスぺ彼氏(キープ君)からハイスぺが無くなった時の港区女子みたいな表情をするじゃないか」


「はいおっしゃる通りです」


「はっは~この野郎~」


 と、柊元生徒会長は言葉とは裏腹に楽し気な笑みを浮かべた。

 あらあらまあまぁ! 中々に爽快で愉快なお方だ。好感が持てます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ