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後日談。

第ニ章で書ききれなかったミニストーリーです。

 これは12/24の日に六出梨が久遠家に入る前にした八條朔八との会話である――。



「あらあらまあまぁ」


 久遠少年と久遠少女の親を乗せた四季先生の車より早く久遠家前に到着。到着するなり、私を待っていたのか八條君が出迎えた。


「こんばんわ」


「……」


 車から出て普通に挨拶をすると、八條君は何も言わずに眉を顰めた。


「待っていてなんだけど、良いのかい? 此処で僕と会話して」


「良いも何も話す事があるからこうして私を待っててくれたんでしょう? それに二人の傍には棗が居るから大丈夫」


「そう。――信頼……しているんだね彼を?」


「うん」


 悲しいけれど、両親の暴走で勝手に業を背負わされてた彼だからこそ人の痛みや辛さが分かる。だから姉弟の話し合いもきっと上手くいっている筈だ。仮にそうじゃなかったとしても、二宮棗という男の判断がそうさせたのならそれも間違った選択じゃない。


 危険を悟ったのなら潔く逃げる。私にも出来ないこの判断が出来るからこそ、久遠九々の居場所を突き止めた二人をそのまま救出に向かわせたのだから。


「どうしてその信頼をかつての幼馴染である南帆と瑞乃、そして奈々氏君にしなかったんだい?」


「?」


「確かにあの三人が君に向けていたのは少々歪んだ愛情と願望だった。――でも、それでもあの三人は君の事を心から大切に想っていた事に変わりはない」


「?」


「――さっきから何? なんで知らぬ存ぜぬって顔をしているの?」


「知らぬ存ぜぬだからです。あらあらまあまぁ、誰でしょう? その人達??」


 急に知らない人達の名前を出されて困惑する。四季先生か二宮君が居ればその三人の事が分かるけど今は居ない。お父さんは私の交流関係に興味ないので論外。だからどうしようもなく困惑するしかないのです。


「ロクデナシ。心の底から吐き気がするよ」


「!? っ」


 間髪入れずのシンプルな罵倒とその後の台詞と、しっかりと伝わってきた嫌悪感に吹き出しそうになるが何とか耐える――1秒ほど。


 って、これ三度目じゃない? このゾクゾク感に覚えがあります。寧ろ、二度目と違ってこうして面と向かって”ロクデナシ”と、直接伝えられた為に二度目以上のゾクゾク感に我が身が悶えて気分が高揚します。


 ――好き。大好き。likeかloveかはまだ分からないけど本当に好きだ。大好きだ!


「やっぱり親友にならないかい? 親友料金として月々八千円出すから」


「ただただ気持ち悪い。狂ってるよ君。本当にどうして君みたいな人間が未だに誰かに愛されて、求められて、守られているのかわからないな。――ほら連れが来たよロクデナシ。さっさと家の中に入ったら? 後悔が強くなる前に」


 と、背後から四季先生の車が現れ、現れると同時に渡されていた鍵で玄関を開錠。八條君自らが久遠家の玄関の扉を開けるなり「鍵、帰すよ」と、開錠で使用した鍵を私に返却して先に久遠家に入っていった。


「あらあらまあまぁ」


 また逃げられたと、残念に思いながら後から到着した四季先生達と共に久遠家に入る。そして声がする部屋に入るなり数分前の自分を呪う羽目になるのであった――。

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