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三十九話。

色々と修正しています。誠に申し訳ないのですが、読んでいて違和感がある場合は活動報告をご覧ください。

「――……ん? んっ? あれあれぇ~?」


 持っていた酒瓶を落とし、両腕を左右に広げている九々の前にゆらりと立つ姉さん。姉さんは九々の頭に手を伸ばしてその手に九々の髪の毛が触れた瞬間、無造作に握り絞めた。


「ッ」


「九々ッ! 姉さんやめてお願いだから!!」


 九々の身を案じて姉さんに必死に懇願する。しかし姉さんは手を離さない。寧ろ数十本の髪の毛が引き千切れるまで引っ張れてしまう。


 しかし当の九々は痛がりはしているものの呻き声の一つも漏らさない。その手も、左右に広げたままだった。


「苦しませないで? 帯々君を苦しませないでって? あれあれぇ~? どうしてそこに私の名前が無いのかなぁ? おっかしいなぁ~っ?」


「……」


「それにその苦しむ原因を作った男の娘がなにふざけた事言ってんの? パパを亡くして傷心中だった私達のママの弱った心に付け込んだ挙句、肉体関係まで迫った屑男の娘が被害者家族の私に楯突くんじゃねぇよ!」


「!?」


「え――?」


 姉さんの言葉に唖然となり、そんな弟を見て姉さんは可哀そうなものを見る目で見下ろした。


「ん? ――え? なに帯々君知らなかったの? てっきりもう教えて貰ってると思ってたのに……」


「どうゆう事?」


「どうゆう事もなにもそのままの意味だよ? ――ってぇ、あぁそっか! 知ってたら小学校の呼び出しに応じるわけないか! わざわざ探したりしないかぁ!」


「……」


 言ってる意味が分からなかった。――けど、弟であるが故に嘘や虚言を言ってる訳ではないと分かる。


「小学生でも女は女ってか? 酷い女だねぇ。全部知ってて私の弟を振り回してたんだ? 知ってた上で日頃のストレス発散に私の帯々君を使ってたんだ?」


「――九々?」


 何も言わない九々に声を掛けたけど何も言ってはくれない。その代わりに姉さんの言葉が続く。


「ほらほら帯々君も知りたいってさ? じゃあ聞かせてあげないと……私が今日、病院で聞けた真相を!」


「病院?」


「うんそう病院。実はね? 昨日この子のママさんが入院してる病院から連絡があったの。なんでも入院中のママさんが私達に会いたいってね? それで今日のクリスマス会の事もあるし三十路後半の人妻もワンチャン有かな~? 何だったら罪悪感に訴えてお金でも~……って、思ってわざわざ会いに行ってあげたの。そこで九々ママさんと偶々居合わせた九々ちゃんからママ達の話を聞いたってわけ」


「……」


 嘘――ではない。やはり嘘はついてない。九々も何も言わない。そしてその沈黙が悪い事をしたと思っているから何も言わないんだと言う事を九々の半身でもある僕は知っていた。


「言えない? 大好きな帯々君に嫌われるのが怖い? か細くなった繋がりでも切れて失うのが怖くて怖くて堪らない? なら私が言ってあげるよっ! 舐めた口を聞いた罰としてッ!! それに前々から私の帯々君に蚊みたいに纏わりついててウザかったんだよねぇ?」


「!」


 掴まれた九々の髪の毛がまたブチブチと千切れ始める。――でも、それでも九々は悲鳴も呻き声も上げない。目に涙が浮かんでいても決して流さずに真直ぐ姉さんを見上げていた。


「ねぇ帯々君? もう一回この質問を繰り返すんだけど、私達のママと九々パパさんが引き起こした不貞行為。これってどっちが最初に手を出したと思う?」


 僕は戸惑いながらも「僕達のお母さんでしょう?」と、二人が蒸発した直後にした問答と全く同じ回答で答える。

 ――が、以前は頷いていたその首を横に振られた。


「そうだね。お姉ちゃんもてっきりパパに依存してたママがその依存先を失い、また子育ての重圧に耐えかねて九々パパさんに関係を迫ったんだと思ってた。――でも違ったよ帯々君。先に手を出したのはこの子のお父さんだったの。しかもパパのお葬式の日にママと連絡先を交換したみたい。勿論、奥さんには内緒でね?」


「え?」


「しかもお葬式が終わったその夜に二人は外食してたんだって。――! あぁでも手を出されたのは流石にこの日からじゃないよ? その日は9時前には帰ってきてたし、お酒だって飲んでなかったでしょう?」


「う、うん……」


「でも問題は此処から。いやプレイボーイの九々パパさんにとっては此処からが腕の見せ所かな? いやはや私もビックリしちゃったんだけど、あの妻を誰よりも愛してそうな九々パパさんね? 実は……浮気エンジョイ勢だったみたい! そりゃ傷心中の美人未亡人がいれば手を出しちゃうよね? 知り合い以上の間柄+娘の幼馴染である子の母親+人妻から未亡人+そこそこ美人+数週間後にはGW。好条件が出そろい過ぎててさぞ美味しそうだったに違いない。私達のママもGW中だけだからと、ひと夏の過ちみたいに女心に火が付いちゃったんじゃないかな? まぁ火が燃え上がり過ぎて二人共そのまま蒸発しちゃったんだけど」


「……」


 押し黙ってしまう。確かに九々パパさんは女性関係に問題があると淳さんが言ってたから。だからその事実を受け入れる事が出来てしまい何も言えない。九々もこの事を既に受け入れているからか何も言わなかった。

 

 そんな中、ゾッとなる程の加虐性欲に塗れてそうな危い笑みを浮かべて姉さんは九々に話しかけます。


「ねぇ九々ちゃん? どうしてこの事を今日まで教えてくれなかったの? 病室で言ってたよね? 夏休みに入る頃には知ってたって。それなのにどうして? どうして罪滅ぼしのつもりで甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた帯々君に教えてあげなかったの? 真に罪滅ぼしをするべきだったのは九々ちゃんだったのに――」

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