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五話。

 自称兄貴分兼親友であった奈々氏景隆との一件から数日。私、六出梨の世界は一変した。

 まず保健室以外での学校生活は1人となった。誰にも話しかけられないし、こちらから話しかければ露骨に無視をされる。しかし陰口――漫画とかだと一度こうなったら陰口のオンパレードなのだが、気にしなければ気づかないレベルなので意外と少ないようだ。


 次にイジメ。学校では切っても切り離せない裏イベント。勿論、今の私も受けている。

 机に落書き、机の中身の私物が消えて代わりにゴミ、椅子が消える、ロッカーの鍵を破壊されて中身滅茶苦茶、上履きに落書き、etc――。イジメ格付けは多分Bランクでしょう。カツアゲとか暴力とか受け取りませんし。

 とりあえず一時的な対策として携帯用椅子を持参。それと一緒に新品の上履き、教科書、ノートを保健室に仮置きさせてもらうことにした。


 次に家。先に家族構成をご紹介しましては医者の父ととりあえずの母。そして中1の妹と小5の弟がいる。

 で、父以外は私の事をとても嫌っていてほぼ絶縁状態。特に妹の方は明確な殺意を募らせて私の生命維持を担っている大切な薬を捨てるといった過去がある。

 でもって島之南帆達の一件で家族の絆的なものは修復不能にまでなってしまった。


 あ、ちなみになのだが、私には唯一無二の生きがいとして時計をコレクションしている。なので『薬はいいけど、時計を捨てたりしたら髪の毛引っこ抜くから』と、弟が見ている前で妹の方に昨日壁ドンor包丁で分かりやすく脅しておいた。


「いやぁ面白いねぇ。なんか楽しくなってきた」


「この状況を楽しめるなら不登校にはならなさそうだな。……あぁそういえば朝練の前に桜君が来たよ。『あの兄をサイコパスで豚箱に隔離できませんか?』だって」


「桜? ……どこの誰さんで?」


「――……梨君の妹君です」


「……はい? 妹の名前は春ですよ? そんでもって弟は冬」


 あらあらまあまぁ、四季先生この人さんはもう神妙な顔でおかしな事をいうなぁもう――と、思っていると四季先生は自身のスマホを取り出して2枚の赤子の写真を見せてくる。


 2枚の写真にはそれぞれ『桜』『雪兎』と、書かれたプレートが赤子の傍に置かれていました。


 成程! おかしいのは私でしたか。


「それは名づけの由来。春に生まれたから妹君は桜。冬に生まれたから弟君は雪兎。……梨君今度一緒に頭の病院に行こう」


「今度は脳みそを父にですか? 悲しい事に若いだけの劣化品は要らないと以前言われました。貰って嬉しいのは首より下の健康な臓器だけ。なんでも新人歓迎会のドッキリで使えるんだとか」


「もうお前ら親子だーめだぁ!」


「んはは」


 頭を抱える四季先生とそれを見ものにして笑う私。こんなやり取りがずっと続いている、正直すっごい楽しいッ! 会話がこんなに楽しいのは数年振りだ。


「――! と、1限目が終わりましたね」


 ベットから立ち上がって「またお昼にお世話になります」と、言って保健室から出る――、


「あ、ちょい待ち」


 前に呼び止められた。

 なに? と、聞く前に四季先生は私が常備している薬袋を要求し、私は要望の品物をバックから取り出して渡す。


「今日から薬は朝、俺に預けろ」


「なぜ?」


「お前は気づけないだろうが、今のこの状況は不味いんだよ。いつ不満が爆発するかわからないし、それがどれだけの規模になるかもわからない」


「? ――! なるほど。薬を隠されたら私結構ヤバいですもんね」


 以前、好奇心で朝昼晩の三回の内の朝と昼を抜いた事がある。結果は緊急搬送。息が吸えなくなり純正じゃない臓器達が機能不全を起こして止まりかけてたそうな。


「んーそうじゃないんだが、まぁそうだな。そう思ってくれて構わない。……難しいなぁ」


「何がです?」


「心理学。脳科学なら趣味範囲で学んだんだがなぁ」


「ほう。四季先生は心より脳がお好きだと?」


 と、私が冗談混じりに言うと、四季先生は真顔になって薬袋を返す。


「あたりまえだろう? 梨君の父親と友達なんだから」


「あらあらまあまぁ」


 心などに興味はないと言った風の素敵なセリフに胸を打たれながら私は保健室から出ていった。


 ――はい。そんでもって四季先生の提案にどんな意図があったかを知るにはそう遅くはなかったですね。


「んふふ」


 むしろ早すぎの昨日の今日。実に笑える。


「てめぇこの状況でなに笑ってんだ?」


「えぇ? あぁあらあらまあまぁ……いやね? 実際のところ色々とあるにはあるんだけども……まぁ私的にはどうでもいい。この状況は何故か面白いし、この後の事を考えると更に、ね?」


「テメェやっぱり頭のネジ数本イカレてやがったな」


「んひっひひ」


 不良の隠れ喫煙所の一つであろう空き教室にて、夕陽を背で感じながら頬を押さえて薄っすらと上がる口角を歪ませながら目の前の大男に向き合う。


「こうして話すのは数年振りですね? 島之南帆のお兄さん」


「あぁそうだな。出来たらこのまま話さずに卒業したかったよッ」


 と、島之南帆の実の兄である霧島(きりしま)(かい)が静かな怒りをその身に宿していた。


「あっは! ――ゴホッ」

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