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十話。

 私のやらかし(全力疾走)から約1時間後、私達4人は無事に電車に乗って目的地のショッピングモール前の駅で降りる。目の前にそびえる巨大施設はいつぞやの番組で見たレイ〇タウンのよう。


「――では! どこから行きましょうか!! 私的に圧力鍋が」


「「「まずは病院」」」


「What?」


 何故? 何故到着早々病院に行かねばならぬのですか? 私が何かしましたか! ――しましたね。おでこの冷えピタさんが心地よいです。


「納得したようで何より。まぁ安心しろ。電車内でショッピングホール内のクリニックに予約をしといたから早ければ30分ぐらいで終わるだろうよ。――早ければ、な?」


 大人しくしろ? と、念を押される。

 なるほど! お出掛けだと思ってたら動物病院だった犬の心境がわかった。スゴクカナシイ。


「はい。大人しく受診されてきます」


「ん、宜しい。じゃあ俺が付き添ってくるから二人は適当に時間を潰しといてくれ」


「え」


「Oui。行きたい所はあるかいィ?」


「えっ……と、特に」


「そうかァ。なら特別にこの麻紗緋さんがエスコートをしてあげよう! 付いてきなァ」


 そう言って麻紗姉さんは一人歩みを進め、その後ろを慌てて二宮棗が追いかける。その姿は横暴な姉に振り回される弟のようです。


「ほら末っ子はこっちだ」


「! あらあらまあまぁ、当然みたいに末っ子の心を読まないで」


 頭を数回ポンポンと叩かれながら私と同じ印象を受けたらしい淳兄さんに連れられてクリニックへと向かった。


 ――てかナチュラルに私が弟なのね。今度から”棗兄さん”とでも呼ぼうかしらん?


 

 約1時間後。


「あ、あのっ、あのヤブ医者絶対に許さない」


「あぁやっぱりか。まぁ落ち着け」


 クリニックの自動ドアを潜り外に出た所で私は青空を仰いで注射器を持った悪魔を呪う。


「――……こと注射において四季先生はSSRやったんやなぁ」


 と、おそらくまだ二日酔いで魘されているだろう四季先生を想う。

 子供の頃から私の担当医だった四季先生。確かに医者としての腕は三流かもしれない。でも注射器の扱いなら神様と並ぶ一流です。帰ったら全力で褒めようそうしよう。


「そんなにだったのか?」


「は、針っ……針が刺された瞬間、咽そうになった」


「それは医師免許はく奪……とまでは言わないが、研究医に移った方が患者のためになるレベルの下手さ加減だな」


 淳兄さんは呆れながらもそう言ってはスマホを取り出して耳に当てる。


「――ん、了解。今から向かおう。――二人は今二階のユ〇クロだってさ。早いとこ合流しよう棗君から早く来てくれとSOSが来てる」


「あらあらまあまぁ……ぬ! あらあらまあまぁこっちにもSOSが」


 なんとなく私もスマホを取り出すとそこには二宮棗からSOSのメッセが表示されている。流石に異常事態だと察して私達は二人がいる二階のユ〇クロへ急ぐ。


 そして、


「「え、老けてる?」」


 到着早々、ユ〇クロ前の椅子で真っ白に燃え尽きている二宮棗と自身のスマホを見て艶々な笑みを浮かべる麻紗姉さんを発見。二宮棗のそのうな垂れた姿はリストラにあった父親が家に帰らずに公園の遊具に虚しく座っているようだった。


 ――てか二人とも服が変わっていらっしゃる。麻紗姉さんはYシャツから細長いリボン付きの深緑色のブラウスに変え、その上からズボンと同じベージュのジャケットを羽織るだけというなんかカッコいいファッションに。二宮棗は踝が見える紺のズボンにグレーのシャツと太ももまであるベージュの薄生地シンプルコートの落ち着きのあるファッション。

 

 あらあらまあまぁ、二人とも秋のイメージをそのまま反映させたコーデと見た。しかも麻紗姉さんに関しては通りすがる人が一瞬でも視線を向けてしまうレベルにまで到達していらっしゃる。


「老けた……燃え尽きたが正解。――……ふっ、まさか9回も着替えさせられた上に色んなポーズまで取らされるとは思わなかった」


「ほらァ見てみィ」


 と、麻紗姉さんからスマホを受け取る。そこには制服ではない服装の二宮棗が雑誌等で見る決めポーズをしている写真が収められていた。


「あらあらまあまぁ! ――凄い似合ってる」


「どれどれ……! ほぅ確かに」


「他にも撮ってるから見てみィ。全部で20枚くらいかなァ?」


「20枚!?」


「削除する前は50枚くらいあったかなァ」


「50枚ッ!?」


「麻紗緋。流石に玩具にし過ぎだ」


 枚数に驚く私と呆れる淳兄さん。そりゃ50枚も撮らされたら燃え尽きますわい。


「いやァ素材が良いからさァ? 楽しくなっちゃってェ。……髪型と表情をもう少し遊べれたらもっと楽しかったかなァ?」


「フッ……許して下さい」


 口元に薄っすらと笑みを浮かべてカクンと首と肩を落とす。どうやら事尽きたらしい。


 ――さて!!


「じゃあ私もいっちょ気合を入れまして――ぬっ? なんです?」


「「……」」


 気合を入れてお店に入ろうとしたら二人に無言で肩を掴まれる。二人の表情からは『適当な服に逃げさせない』といった熱意と、『玩具で遊ぶ♪』という無垢のベールに包まれた邪悪な感情が滲んで漏れていた。

……(;´Д`)←これが今の心境です

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