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四話。

「――ふむ」


 あらゆる希望を捨て去った顔をしている――が、私の最初の感想。四季先生とはまた違った味のある魅了をこの男子生徒は持っていた。


「……?」


 何故だろう? 懐かしさを感じる。――が、その正体を確かめる時間は無く、島之南帆掴まれた腕を無理矢理引き剝がす。


「なんで毎回邪魔するのよアンタはッ! アンタには関係ないでしょう!? ――それともなに? 人殺しの子供だからソイツの気持ちが痛い程わかるって? それとも過去の自分と重ねちゃって正義の味方気取りッ!?」


「……」


「なに? 今度はだんまりっ? ねぇ、なんとか言えよッ!」


「――ん、あぁ」


 と、狂乱する島之南帆を前に男子生徒は昔亡くなった何者かとの思い出を懐かしむような笑みを浮かべる。

 ――やはり懐かしさを感じる。クラスメイトの白い目、特定の人間による暴言、一人の悪者でない悪者のこの状況に既視感も感じる。私はこの懐かしさが何なのかを知ろうと目を瞑って思い出の中を探り、とある言葉を口ずさんだ。


「「俺がやったんじゃない。俺は悪い事は何もしてない。――黙ってろ」」


 俺と男子生徒の声が重なり、過去と今が交差する。記憶の中には一人の男子小学生が今の台詞を泣きながら訴えていた。今は吹っ切れた顔をして淡々と同じ台詞を言う。


「……」


「……あらあらまあまぁ」


 男子生徒が少し驚いた様子で私を見て、私は珍しい出来事に驚く。


「お久しぶり。――二宮君」


「あぁ。――久しぶりだな六出」


 現クラスメイトであったが、懐かしむような笑みを浮かべてたと思う。――今の二宮(にのみや)(なつめ)と同じように。



「――先生201の○○ちゃんがッ!?」」


「!?」


 憩いの場(保健室)の扉を勢いよく開けては私の一言によってひなたぼっこをして緩み切っていた四季先生の顔が絶望の表情へとゆっくり変わっていく。

 ――数秒後、私の頭に拳骨が落とされた。


「お父さんと同じ悪戯をするんじゃないィ……心臓止まるから」


「サッセン。実名有りのお父さんよりかは可愛げがあるものとつい……」


「人のトラウマを刺激するのに可愛げの有無は関係ないからなっ!?」


 と、半泣き状態で訴える四季先生であった。楽しい。


「――お! 出会うとは思ったが嬉しい誤算だ」


「どうも」


 四季先生は私の後ろに居た二宮棗の姿を見るなりどこか嬉しそうに言い、それに対して二宮棗は少し不味いと言った顔になる。


「あらあらまあまぁ……二人は知り合いだったので?」


「知り合いというか――」


「あっ!? 待って!」


 と、何かを言おうとする四季先生に駆け寄って、なにやらこそこそとお願いする二宮棗。――いかんなぁ。二重の意味でいかんなぁ!

 私は二人が話し終わったのを確認し、そっと四季先生の隣に立つ。


「なんて?」


「お見舞いの件と梨君が受けていた嫌がらせを辞めさせた件は言わんでくれと」


「ちょっ――!?」


「あらあらまあまぁ」


 予想外の即裏切りに顔を赤くする二宮棗。なんぞ憂い奴よのう。


「まぁまぁそんな怒りなさんなって。おいしい飲み物をごちそうしてあげますから……コーヒーと紅茶どっちが良い? 酸味が良いなら一応、昆布茶か梅昆布茶……あとレモンティーがある」


 私は四季先生の私物でもある紙コップを3つ用意し、その近くにある粉スティックを物色する。ちなみに四季先生から「ソレ先生の私物!」なんて抗議の声が聞こえたが無視。


「……ぁ、いやいい。悪いけど――」


「ちなみにな? 彼、先生がこうしてバラさなかったら適当な理由を言ってこの場を去る気だったとかなんとか」


「あらあらまあまぁ」


「だから何故ばらす――ッ!?」


 四季先生の追撃に思わず肩を掴みかかる二宮棗。コントかな?


「それは悲しい――何故?」


「あ、いやっ……それは」


「交流を深める気は無いとかなんとか。俺にはその資格がないとかかんとか」


「アンタいい加減にしないとその口、コンクリートで固めっからなッ!?」


「んはは」


 下手な天丼を繰り返す漫才師よりも面白い漫才に笑いながら私は独断と偏見で二宮棗に似合ってそうな梅昆布茶を選択。紙コップに粉末とお湯を注ぎ、それを顔を赤くして四季先生を揺さぶる二宮棗に差し出した。


「資格とか要らないとかなんとか。――前にも言ったでしょう? 二宮君のせいじゃないなら二宮君は悪くない。親が勝手に起こしたいざこざに子供は関係ない、って」


「!?」


「――ほれ、熱いんだから早く受け取って下さる?」


 私の台詞がクリティカルヒットでもしたのか暫く固まっていた二宮棗だったが、私の訴えに後目をしながら差し出された紙コップを受け取る。

 

 ――私が自分と先生の分の飲み物を入れに少し離れた際に、後ろから「そうか」と呟く声が聞こえたような聞こえなかったような。

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