始まり。
初めて小説書きます。
至らない点も多いと思いますが、よろしくお願い致します。
_あれは、いつの話だっけ。
「おい!泣いてんじゃねぇぞ!」
学校からの帰り道、同級生と思われる子が上級生に囲まれているの見つけた。
その上級生はいかにもヤンキーみたいな感じだった。
なんとなく、言い合いしてるんだろうなと、通り過ぎようとしたその時
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
その同級生の霞んだ声にいてもたってもいられなくなり、気づいたらその人達の前に立っていた。
…まぁ今思うに、昔から放っておけない性格だったのだろう。
「何してるんだ」
「い、一ノ瀬くん…?」
やはり同級生の女の子だった。彼女は俺に気づくなり体を震わせながら上級生の前で両手を広げている俺の腕をそっと掴む。
辞めておいた方がいい、とでも言うように。
しかしその彼女の意思は俺の意思には間に合わなかった。喧嘩なんか出来るわけない、そんな幼い体だ。
それでも俺は、その上級生に殴りかかっていた。
「いっ!…ってーな!!」
頬に1発殴れらたその上級生は、倍返しのように俺のことを蹴ってきた。
その人の力が強かったのか、俺の体が軽かったのか。
俺はすぐ近くにあった草むらに蹴飛ばされてしまった。心配してくる同級生の女の子を逃がし、なんとか起き上がる。
しかしすぐまた殴られ、もう立ち上がれそうになかった。
…なんで突っかかってしまったんだろう。俺はこのままこの人達の満足のいくまで殴り、蹴られるのか。
そう諦めかけた時、俺が聞き慣れた声が聞こえた。
「おい!何やってるんだ!!」
俺と同じような幼い声、まだ大して大きくない体。
しかしそれは上級生の顔も真っ青にさせる人物。
「い、一ノ瀬星宙じゃん」
逃げるぞ、とその上級生達は一斉に逃げていった。
俺はまだ蹴られたところが苦しく、咳が止まるのを待っていた。
「彼方っ!大丈夫か!」
その人は汗をかきながら俺の傍に走ってくる。
その汗さえも眩しく感じてしまうから、顔を見ないように下を向いた時自分の足から血が出ていたのを見つけた。その他にも色々な所を怪我している。
その人もそれを見つけ、血相を変えながら救急箱を取り出した。
俺を近くのベンチに座らせ、その救急箱から消毒液とティッシュ、絆創膏を取り出す。
俺が常に怪我をするせいか、救急箱の中身は以前より減っているように感じられた。
「お兄ちゃんって…いつも持ち歩いてるよね」
「そりゃあお前がこうやって怪我するからだろ」
俺の膝から出ている血を拭き取りながらそう言う。
迷惑を掛けていると思っているが、自分の性格は中々変えられるものでは無い。
「お前、ああいうのは大人を呼ぶものだ。自分が突っかかっても何にもならない。」
「…ごめんなさい」
そう言われ、俺が"反省しました"という意思を示すと、絆創膏を貼って俺の膝を軽く叩く。
「別に怒ってないよ。…彼方が優しい奴って知ってるから」
"優しい"。それは、俺ではなく今目の前にいる兄に似合う言葉だ。
俺の兄は幼いながらに優しくてカッコよくて、誰からも好かれる存在だった。先程の上級生もそうだが年上の人でさえ尊敬している人がいる程だ。
世界はこういう人のことを、天才とか秀才とかいうのだろう。
俺はそんな兄のことが大好きだった。
「…お兄ちゃんは彼方が怪我したら、嫌?」
救急箱に荷物をしまっている兄に問う。
「嫌に決まってるだろ。俺の大事な弟なんだから」
そんな答え分かっていた。それでも兄の口から聞きたかったのだから俺は中々に性格が悪い。
「ん。じゃあもう彼方怪我しない!」
「…うん。その方がお兄ちゃんも嬉しいな」
そう言って兄は俺の頬を撫でる。兄の肌はすべすべで心地がよかった。
_そうだ。俺はこの日誓ったんだ。
この人のために生きる…と。