TS青年は今日を生きる
初投稿です!
8月1日、男子大学生4人が一泊二日で山梨に旅行に来ている。
ホテルにチェックインしてから1人が眠ってしまい、他3人は1時間ほど部屋で過ごした後、書き置きをして温泉へ向かった。
眠っていた人物、茅野空は3人が出て行って10分弱後に起きた。
書き置きを見て空も温泉へ行く準備をはじめる。
準備を終えて鍵に手をかけて部屋を出ようとするとドアが開き、聞き慣れた3人の声がする。
「起こせよ!」
ドアが開いて早々、3人に対して言うが、言い返されることなく、逆に3人は固まっていた。
「何してんの?」
空は首を傾げる。
「ど、どちら様でしょうか?」
「は?茅野空さんだが?」
「「「え!?」」」
「仲良しかよ」
「いやいやいや、え?は?」
「大風呂行くから。どいてくんね?」
「行かない方がいい」
真剣な顔で友人の1人、佐藤樹に言われる。
「あんたが茅野空だとして鏡は見たか?」
もう1人の友人、小野寺裕翔に問われ、見てないと答えた。
「だったら見た方がいい」
意味かわからなかったが、とりあえず空は鏡の前に行った。
「え?」
鏡に写っているのは漫画のキャラクターといっても過言じゃない程の端正な容貌のウェーブした黒髪ミディアムにアメジストのような瞳に身長が140cmに届かない程度の美少女だった。
「俺は美少女だった!」
部屋に移動していた友人たちの元へ行き、ドヤ顔でそう言うと3人は笑い出した。
「何があったよ」
「寝てただけだぞ?お前らも知ってるだろ?」
「そうだよなぁ部屋入ってすぐ寝たもんな」
「大風呂には行けないな〜、あと康介はいつまで笑ってるんだよ!」
「まぁまぁ部屋に入っていきなりあんなこと言うから」
「むぅ、だがな樹」
「大風呂行くの?」
「...部屋風呂でガマンする」
空は準備をして部屋風呂に向かった。脱衣所に入り、悪戯でもしてやろうと思い、トレーナーを脱いで「覗かないでよ?」とかわいく言うと想像以上の反応が返ってきて満足し、そのまま脱衣所に戻った。
「定番だけどあの姿で言うのは反則でしょ」
「「わかる」」
「大丈夫かな?明日」
「あいつが誘拐されないかって話か?」
「いやまぁそれもあるんだけど」
「精神的に俺らが保つかって話だろ」
「うん」
「たしかに俺らからしたら大問題だよな」
「中身はあれだけど美少女との実質デートだし」
などと空が風呂に入っている間に3人で話していた。
「あの反応は予想以上で面白かったからまたやってやろうかなってこうなったこと家族にどう伝えればいいんだ?頭おかしくなったって思われそうだし、うーん...でも報告しないといけないし...はぁ面倒だな」
そう呟きながら風呂から出て脱衣所で自分の風呂上がりの姿に見惚れてしまい、自分は樹と同じロリコンじゃないと言い聞かせてから髪を乾かして脱衣所から出た。
「お、出たね」
「うむ、何を話していたんだ?」
「明日のタイムスケジュールについてだよ」
「変更点でもあんの?」
「確認みたいなものだから」
「そうなのか」
樹と話していると裕翔が違和感はないのかと聞いてきた。
「んー、特にないな」
「声だって変わっているだろ?」
「それに対しても感じないが」
「そんなものなのか?」
「そんなものなんだろ」
空は会話しながらも家族へどう報告したものかと考えを巡らせる。
「このあとどうする?」
「持ってきたstockでスマブレやるって話じゃなかったか?」
旅行の計画時からホテルで時間が余ったらやろうという話になっていたので空はスマブレで遊ぶつもりだった。
「そうなんだけど、もうすぐ夕食の時間だから」
「もうそんな時間だったか」
時計を見ると時刻は18:50だった。
「よし、行くか」
裕翔が立ち上がり続く形で空、康介、樹と貴重品を持って玄関へ向かう。
食堂へ入ると、ホテル宿泊者以外でも利用できるため、もうすでに多くの席が埋まっていた。
空が食堂に入ると、その容姿から、多くの視線を集めた。しかしそれに気づかず「男の時より食べる量減るよなー」と呑気なことを言っている。
空はカルボナーラを注文し、康介はトンカツ定食を、裕翔はステーキを、樹はカレーを注文した。食事する最中も視線を向けられていることに気づいていないことをわかっている3人は、その鈍さに苦笑いをしていた。
「なんかデザートでも頼むか?」
裕翔がいつもデザートを注文する空と樹に対して聞く。
「いや、大丈夫」
「珍しいな、空が断るなんて」
「結構満腹だよ?」
「話し方も変だしな」
「外だから」
容姿のことがわかっているのか話し方もおとなしくなっていることに視線に気づいているんじゃないかと一瞬思う裕翔だったが、昔からそういうのには鈍いからあり得ないかと結論づけ、樹は注文するのか聞こうと視線を移すとメニューを持ち、すでに決めたような樹が康介と話していた。樹は抹茶ティラミスを注文し、空と康介が一口食べてから食堂を後にした。
部屋に戻り、家族への報告のためにスマホを取り出した状態でうーんと唸っていた空に対して樹が「どうしたの?」と尋ねた。
「ん?あぁ家族に対してどう報告しようかなって悩んでたんだが」
「あー....ね」
「しょうがない、多少ふざけて報告することにしよう」
「ふざける?」
「うむ、自撮りでも撮ってお姉ちゃん(娘)ができましたって家族に対して送ろうかなって」
「....本気で言ってんのか?」
「割と本気だが」
「やめといた方が....」
「じゃあどう報告しろと?」
「それは....」
「テレビ電話でいいんじゃない?」
「やっぱそれが妥当だよなぁ....うむ!やろう」
そう言ってloneで母と通話をいきなり開始した。
「いきなりすぎない?!」
樹が驚いた様子で言った。他の2人も同様だ。
「勢いは大事だぞ」
「そうだけど!」
コールが数回なって母、香織が出た。
『どうしたの〜?通話なんかはじめて?』
間延びした声がスピーカー越しに聞こえきた。
「報告することがあってね」
『...誰の声?』
「息子の声だよ今は娘だけど」
『どういうこと?』
「寝て起きたら男じゃなくなっててね」
『そうなんだ〜テレビ電話にして顔見せて?』
「わかった」
通話からテレビ電話に変えると、スクリーンには姉と間違われる程に若い黒髪のミディアムに水色の瞳の女性、香織が映った。
『うん。ちゃんとミズにも言うように〜』
「なにも言わないの?」
『原因わかんないんでしょ〜?』
「...まぁ、そうだけど」
『だから聞いても意味ないかなーって』
「わかった。ミズにも言っとく」
『うん。おやすみ〜』
「おやすみ」
香織との通話を終えると空は香織がミズと呼んだ、妹の瑞穂に通話をしようとスマホを操作する。
通話開始を押してから何回目かのコールで妹の瑞穂が出た。
妹の容姿は、黒髪セミロングで、水色の瞳の美少女と言える。
『...なに?』
「怒んなよ」
『...どなたでしょうか?』
「お兄ちゃんだけど」
『兄はそんな声じゃないんですけど』
「証明するためにテレビ通話に変えんね」
『え?はい?』
テレビ通話に切り替えて画面を見ると綺麗な顔に怪訝そうな表情を浮かべる2歳年下の妹、瑞穂が映っていた。
『...なんであたしより可愛いの?』
「聞いた?樹!ミズが俺のことかわいいって!かわいいって言った!」
「聞いたよ...だからそんなに叩かないで」
『イチャつくなら他所でやってもらえない?』
「あ、そう報告なんだけど女の子になったから」
『なんとなく面影あるしね』
「そうなんだ」
『そーなの』
二人は普通に雑談を始めた。
「...一般的な兄妹ってこんなに仲良いものか?」
「多分あの兄妹だけだと思う」
裕翔と康介がそう会話していると空は通話を終えてスマホを置いた。
「...お父さんには報告しないの?」
「ああ!忘れてた」
父、浩和は市議会議員をしていて、友人の会社の経営アドバイザーのようなこともしているらしいので家にいることはあまり無い。そのため、家に帰ってきても用事がないならば寝るか、家族を連れて遊びに行くか、父の友人と昼から飲みに出ることが多い。
父は交友関係が広いらしく、元総理大臣から有名なレストランのオーナーや会社の社長、医師、大学の教授から、堅気じゃなさそうな人など、空はいつも父の友人と会うと、どこで出会ったと疑問に思っている。
「あの人忘れるとか...マジか」
「ある意味すごいな」
背筋の伸びた友人を尻目にどう連絡したものかと考える。
「今すぐに連絡は無理そうだし、定期連絡を待つか今度の休みのときかな」
父のことを話したことがあるため3人はそれでいいんじゃないかと言った。
「母さんに事情を説明して...よし、スマブレやるぞ」
そう宣言して振り返ると、もうすでに布団は敷かれ、スマブレも準備が整っていて、裕翔が早く来いと座布団を叩いていた。それから4時間遊び、0時を超えた頃に樹が寝ようと提案してその日は全員が寝ることにした。
もし好評でしたら続きを書きたいと思ってます!