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炎龍と氷龍


 銃口から放たれた魔力の弾丸が龍人へと迫る。

 しかし、それは弧を描いた短剣によって斬り裂かれた。

 続け様に引き金を引くも、すべて捌かれて前進を許す。

 肉薄され、振るわれた剣撃を斬龍の刀で迎え撃ち、両者の間で幾度か火花が散る。

 その最中に魔力の充填を終わらせて引き金を引く。

 だが、これは回転するように躱され、ローブにいくつか風穴が空くだけに終わってしまう。


「チッ」


 回転の遠心力を乗せた剣の一撃が左方向から迫る。

 こちらは拳銃を無理矢理逆手に持ち替え、迫る剣撃に銃身を叩き付けた。

 反撃をしのぎ、返しの一撃として刀身を薙ぎ払う。

 だが、こちらの攻撃も逆手に握られた短剣に受け止められた。


「人もなかなかやるものだ」

「随分と余裕そうだな」


 左手の手首をひねり、銃口を向けて小指で引き金を引く。

 照準もなにもあったものじゃないが、この至近距離だ。

 相手は回避の動作を取らざるを得ない。

 そうして体勢が崩れたところへ蹴りを食らわせて吹き飛ばす。


「ぐっ」


 地面を転がった龍人に向けて、順手に持ち替えた拳銃を向ける。

 容赦なく引き金を引いた。


「我も余裕をなくしそうだ」


 放たれた弾丸は、しかし燃え盛る火炎によって防がれた。

 いや、違う。

 ただの火炎ではなく、それは龍の炎尾。

 その炎から炎上してローブが焼け落ちると、ようやく奴の姿が露わになる。

 人型をベースに燃え盛る龍鱗が這う、龍人。

 その火炎は握り締めた得物まで燃やし、刃が炎を身に纏う。


「お前……元は炎龍か」


 炎龍に変異し、そこから更に人へと変異した。


「今も炎龍だ」


 そう答え、龍人は火炎のブレスを吐く。

 一瞬にして視界が炎に包まれ、俺は拳銃を投げ捨てた。

 氷龍のスキルを使い、左腕に冷気を纏わせて吹雪を放つ。

 火炎と吹雪がぶつかり合い、互いに相殺し合って大量の水蒸気が発生した。


「面倒な」


 風龍のスキルで風を起こし、水蒸気の霧を払う。

 明確になった視界に飛び込んで来るのは、火の粉を散らして迫る剣閃だった。


「まずッ」


 繰り出される火炎の剣撃を躱して距離を取ろうと後退する。

 だが、簡単には許してもらえず踏み込まれ続け、追撃を浴びせられた。

 回避は出来ても火炎で炙られる。

 目が乾く、喉が嗄れる、肺が乾く。

 耐えかねて大降りに繰り出された炎剣を弾いた。

 その瞬間、燃え盛る短剣が首を狙って駆けてくる。


「――」


 身に迫るそれを見て、ふと思いつく。

 炎龍のスキルで得物に火炎を付与できるのなら――


「俺にも、できるはず」


 背後へと飛び込むように跳んで短剣の一閃を躱し、左手に拳銃を再構築。

 直ぐさま氷龍のスキルを付与し、空中で体ごと捻ることで銃口を龍人へと向ける。

 連なる銃声が響き渡り、氷龍のスキルによる凍結弾を撃ち込んだ。


「どうだッ」


 背中から地面に落ち、即座に立ち上がる。

 改めて視界に納めた龍人は、被弾した箇所から徐々に凍り始めていた。


「これは……氷龍の……」


 肉体が凍てつき、身動きも取れなくなる。

 それを体験し、龍人は己になにが撃ち込まれたのかを理解した。


「……ここまでか」


 燃え盛る炎さえも凍って見え、やがて氷がすべてを覆う。


「死にはしないさ」


 そして、龍人は氷に閉じ込められた。


「たぶんな」


 氷像と化した龍人を前に、ほっと一息をつく。

 どうにか脅威を排除できた。


「普通の人間なら死んでるけど」


 氷漬けの龍人に手を翳し、捕食スキルを発動する。


「ほら、生きてた」


 しかし、龍人は捕食できなかった。

 死んではいない、氷の中で生きている。


「さて、援軍に行くか」


 明希のもとに行こうとすると、懐の携帯端末が音を鳴らした。

 取り出してディスプレイを見てみると、明希の文字が表示されている。

 操作して耳に当てると、明希の声が聞こえてきた。


「こっちはもう終わったよ」

「おっ、そうか。ちょうどこっちも用事を片付けたところだ」


 気合いが入っていただけに、明希一人で捕縛に成功したみたいだ。

 流石は龍剣の一振りと言ったところか。


「これで見せつけられるな」

「うん。はやく報告しに行こう」


 通話を終えて、改めて龍人を見る。

 凍てついた氷に溶ける様子はない。

 新しくスキルを憶えることは出来なかったけれど、新しい活用方を知れた。

 これで戦術の幅も広がる。

 いいことを教えてもらった。


「それにしても龍人か」


 なぜ、この街に紛れ込んだのか。

 ほかにどのくらい仲間がいるのか。

 気になることは山ほどあるが、それを調べるのは俺の仕事じゃない。

 あとは本業に任せるとしよう。


「しばらく尾を引きそうだな」


 刀と銃を掻き消して帰路につく。

 この後、あのスーツの男に今回の件についての報告をした。

 俺が捕らえた龍人は氷漬けで、明希が捕らえた龍人は結界に封じられている。


「良くやった。天喰くん、界透くん」


 彼の口からは俺達両方の名前がきちんと口に出され、明希は満足そうにしていた。

 意外なことに龍人から得た情報は俺達にもある程度は下りてくるらしい。

 龍剣の戦力が今後も必要になると見ているようだった。


§


 自室にて。


「ん?」


 携帯端末を操作して依頼を探していると、ふと気になる依頼があるのを見つけた。


「龍害に悩まされている、か」


 ドラゴンによって及ぼされる害。

 炎龍による火災や、風龍による竜巻などがこれに当たる。

 今回は深刻な大地の汚染とある。

 そしてこれは城郭都市外からの依頼だった。


「まぁ、相談してからだな」


 明日、明希に提案してみよう。

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