2度目。ーー平穏な日々に終わりが訪れました。・3
「ところでコッネリ公爵。あなたが此処にいらっしゃる理由って何ですか? しかもドナンテル殿下とご一緒なんて。言っておきますがドナンテル殿下は怖い夢を見たから1人で学園に行けないからついて来て! なんていうお子様では有りませんわよ?」
隣国とはいえ、一国の公爵家当主と、たかだか辺境伯家の令嬢。
普通ならば「無礼」だと「不敬」だと咎められ処罰の対象になってもおかしくない。
けれど。私は殿下方の『友人』という称号をもらっている。我が国でもこの国でもそうなのだが、身分というものはかなり重視される。当然国王陛下がトップ。王妃・王子を含めた王族はその次。その王族2人に公的に『友人』の称号を贈られてしまっている私は、その時点で殿下方の『婚約者』並の効力を発揮する。
それでも『婚約者』や『友人』では、公爵の身分の方が上では有るのだが、それは殿下方が居ない場合のみ。此処に殿下方が居る時点で王族の威光というものが効力を発揮する。要するに、私を蔑ろにすると殿下方が黙っていないぞ。ということだ。
「ははは。ドナンテル殿下とノクシオ殿下は我が娘達が筆頭婚約者候補者でな。将来の娘の夫から是非学園での自分達の活躍を見て欲しい、と誘われれば殿下方のお誘いを断れまい?」
「左様でございますの。で? たかが筆頭婚約者候補者の父という立場程度のあなたが、公に殿下方の『友人』という称号を贈られている私に対してまともな挨拶一つ出来ませんの?」
コッネリ公爵が、私に圧力をかけてきました。娘達と殿下方が婚姻するのだから、お前如き小娘は下がれ、と。
でもねぇ……。
たとえ現在殿下方がコッネリ公爵から監視されているような立場だとしても、この場が非公式であっても、公的に殿下方の『友人』として認められた私と、あくまでも婚約者候補者の父親の立場じゃあ、私の方に分があるのは、言わんでも解るよね?
コッネリ公爵ってば、あらあらその悪人の顔を真っ赤に染めて怒りを見せるなんて、貴族筆頭の公爵の身分が泣きますわよ?
「口の減らない小娘が!」
「お黙りなさい! この場が非公式で有ろうとも、私は殿下方の『友人』の称号を公的に贈られている者です。私一人ならばまだしもドナンテル殿下及びノクシオ殿下がいらっしゃる前で私を貶める発言は、そのまま私を『友人』に認定された殿下方を貶める事と同義! その意味が分からないとでも仰るつもりか! それが判らぬと言うならば、あなたの娘2人は即刻筆頭婚約者候補者の座を退く事になりましょうね」
たかが小娘。
13歳の辺境伯程度の令嬢。
そう侮っていたのでしょうが、残念。あなたが裏で操っていたとは思うものの証拠は無い事は百も承知。だから前回の最期は私の負けだった。でも私は殺された恨みを覚えているんだから。
狡賢いコッネリ公爵に対峙するにはどうすれば良いのか。2度目の人生でドナンテル殿下とノクシオ殿下にお会いする事になったあの日から、何れこの男とこうなる事は予感していた。予想よりもかなり早かったけれど。
幸か不幸か私は殿下方の『友人』の称号を贈られていた。だったら、この男と対峙するのに使うしかないじゃない? 最初は本気で要らないって思ったけれど。この男が何を考えているのか分からないけれど、権力や地位や身分は、この男に対する武器となる。
それは前回も今回もお父様のお話から想像出来た。だから私は殿下方の『友人』の称号を返す事をやめた。そして今。その判断は正しかったと思ってる。
ねぇコッネリ公爵? 小娘と侮っていた私に屈辱を与えられている今はどんな気分?




