2度目。ーー諸々の問題を見なかった事にしたいんですけど。・3
「コッネリ公爵に動きが?」
クルスのその顔つきを警戒する。クルスは「さすがお嬢様ですね」と頷いてから一呼吸分、間を置いた。
「ドナンテル第一王子殿下の母親である側妃なのですが。彼女の実家についてもお嬢様が気にされていたので調べた事は、覚えておいでですね?」
クルスの問いかけに虚を突かれたけれど、直ぐに記憶を引っ張り上げる。
「ええ。確か実家は落ちぶれた伯爵家。それも養女だったわね。落ちぶれた伯爵家に援助する代わりに、娘を伯爵家が迎え入れて養女として王家へ差し出した。……という話では?」
「はい。その伯爵家に援助していたのが、この国で有数の商人だともご報告致しましたね」
「そうね。その商人の娘が側妃でしょう?」
「お嬢様は不思議に思いませんでしたか?」
私の確認をクルスが別の質問で躱してくる。不思議に思う? 何を?
首を傾げて考える私にクルスは答えを告げてくる。答えられなくても問題ない質問だったようだ。
「伯爵家に養女として迎えられ、それから直ぐに王家に召し上げられた事の不可解さに」
私はクルスの言葉にハッとする。確かにその通りだ。落ちぶれた伯爵家に援助する代わりに娘を養女にする。という提案を持ちかけたのは、まぁ無い話ではない。……子どもを政略の道具と考える貴族の悪い部分ではあるけれど。
けれどあまりにもタイミングが良過ぎる。落ちぶれたとはいえ、側妃が養女として迎えられた伯爵家は、この国では歴史ある名家。その名家に偶然年頃の令嬢が居なかった。
いえ、令嬢は居たけれど若くして亡くなっていたわね、確か。それもちょうど側妃と同じくらいの年齢の……まさか。
けれど、そう考えれば辻褄も合うしここまでスムーズに話が進む事も理解出来る。もし私の推測が当たっているとしたら……1年2年程度の計画案ではなく数十年を掛けて練り上げられた計画の実行に他ならない。
でも。この推測が当たっているとは思えない。
いくらなんでも……そんな自分の代ではなく、子の代になってでも、王家を乗っ取ると考える者が居るだろうか。
居るとしたなら、その人物は必ず望んだ物を手に入れる人間だろう。そういった人間が計画したのならば……この国はもう8割方乗っ取られていると見る方が良い。
だって誰が思うだろう。
女を国王陛下の側妃にするために、伯爵家にいた側妃に近い娘を(病死や自殺という方法で)排除した後。その伯爵家を態と落ちぶれさせ、裕福な商人が援助を申し出て代わりに娘を伯爵家の養女にしろ、と迫る。
そうして迎えられた養女がなかなか子が出来ない王妃に焦れた臣下に後押しされ、国王陛下の側妃の地位を得る事になるなんて思わない。
一体誰がその経緯を疑うというのだろうか。




