2度目。ーー2度目も結局関わる事になりますか。・2
ガリアとアレジには下がるように伝えて執事の後を着いて行きお父様の執務室に入る。そこにはやはりクルスがいた。……なんだか怪我をしていない?
「お父様、お召しにより参りました」
「うん。クルスは下がって手当てを受けよ」
お父様が指示を出すとクルスは執事と共に下がる。私はお父様に促されてソファーに腰かけた。
「ケイトがクルスに出した命だが」
「……はい」
「何か予兆があったのか?」
それは隣国に不穏な影がある事を表す質問です。
「……恐れ多くも隣国の殿下方と友人という地位を与えられておりますが、私宛ての手紙にすらその後の事が書かれておりませんでした」
「……成る程な。確かに自分にも情報が無かった。だが些細な事と捉えて気づかなかった」
お父様が首を振って溜め息をつきました。……嫌な予感しかしないのですが。
「ケイトが疑問に思った隣国の殿下方だが、あの2人の周囲が妙に固められていた、そうだ」
「……それは」
「元々隣国を探っていたウチの影と王家の影は捕らえられていた」
お父様の言葉に目を見開く。
「定期報告は⁉︎」
「……普段は暗号のやり取りだったからな。気づかなかった。巧妙だよ、暗号の手紙だけ書かせるために生かしていた」
それは情報がきちんと入っていない事を示します。それにもしや今回クルスが嗅ぎ回った事で捕らえられていた影達は……
「大丈夫だ。クルスの怪我は捕らえられていた王家とウチの手の者を助け出すための怪我だ」
では、捕らえられていた者達は命が助かった、と……。安堵の溜め息をついてから私は意識を切り替えました。
「それで私が呼ばれたという事は」
「ケイトのお陰で隣国の正しい内情が分かったからだ」
正しい内情。それを私は聞かねばなりません。私がクルスに命じたのですから。仮でも今は私がクルスの主人です。
「教えて下さいませ」
「その覚悟があるか」
「無ければ最初からクルスに命じずお父様に相談致しました」
「……だろうな。分かった。結論から言おう。コッネリが裏で糸を引いていた」
コッネリ公爵。……やはり2度目の人生でも結局関わる事になりますか。まぁ2度目とはいえ、私の知る限り性格は誰も変わっていないように思えます。ヴィジェスト殿下は別です。前回の記憶がなんらかの影響を及ぼしている、と見るべきです。
「お父様の天敵、ですわね」
「うむ。覚えていたか」
「お父様が嫌悪を抱く事も珍しい事ながら、あちらの国王陛下も苦手とする。などと聞けば忘れられるはずもございません」
「それもそうだな。……アイツはやはり野心家でな。陛下に遠ざけられようとしているのが解っているために、殿下方を籠絡する方が早い、と2人共に奴の娘達……この場合庶子も含めているのだが……の誰かが婚約者に収まるように強制的に見合いをさせている」
「随分強引ですね?」
それこそ陛下が止めそうだが。
「どうやら陛下は病に伏せられているようだ」
「怪しいですわね」
「まぁな。だが確認出来ん。クルスもケイトから無理しないように言われたから、と迂闊に近寄れなかったようだしな」
「私の命を聞いた上であの怪我ですか」
余程コッネリ公爵は横から口出しされるのが嫌なのでしょうね。
「助け出すのにかなり無茶をしたようだ」
「……それ、私の命に従っていないではありませんか」
「まぁそう言うな。捕らえられていたウチの影は、クルスの兄なのだ」
影になる者は新しく雇う者もいれば、代々仕えてくれる者まで居ます。そうでしたか。クルスは代々仕えてくれる者の血筋でしたか。兄が捕らえられていては確かに無茶をしたくなるでしょうね。
私は分かりました、と頷きました。




