2度目。ーーやはり、そうは問屋が卸さないようです。
結局お姉様は気が昂ってしまった事によってまたも発熱状態となりベッドに逆戻りでしたが部屋に戻るその時まで私を睨んだままでした。前回の記憶と前世の記憶がある私はその分だけ見えてくるものがあるからかだいぶ大人びた10歳になってしまっているのでしょう。珍しくお父様が落ち込んだままです。お母様は私の発言の何が引っかかったのかとても複雑そうな表情で、けれどもお姉様が体調を崩したためお姉様に付き添われました。私に何か言いたいのでしょうが何を言えば良いのか分からないのかもしれません。
取り敢えず今のお姉様には私の言葉は届かなかったようでした。そうは問屋が卸さない、というやつです。
「ケイト」
「はい」
「なんだか随分大人びた考えになってしまったね。お兄様は少し驚いたよ」
お兄様は相変わらず厳しい顔ですが、少しだけ柔らかい表情を浮かべています。
「生意気ですみません。ただ」
「ただ?」
そこで言葉を区切るとお兄様が先を促してきましたが私はお父様をチラリと見ました。
「……お父様にだけお話したいことがございます」
「ケイト。お兄様やロイスには話せないのかい?」
「先にお父様と話してみて、でしょうか」
「分かった。ルベイオ、ロイス下がれ」
お父様がお兄様とロイスに命じます。元より家族のみで話していたサロンです。2人が出たらお父様と2人きりになりました。
「それで?」
お父様に促されて私は少しだけ目を閉じます。時間が巻き戻ってやり直している、と言ってもお父様は非現実な事象に対して懐疑的な方です。だから私は夢で見た、という形で押し切る事にします。
「これは、私が時々見る夢の話です。只の夢だと言ってしまえばそれまでですが、まるで現実みたいだったので私はその夢を信じてみています」
この切り出しにお父様の眉間の皺が僅かに増えました。随分と勿体ぶった言い方なのに夢なのか、という気持ちなのでしょう。ですが私はお父様の眉間の皺には気付かないで続ける事にしました。
「夢の中では私は次期当主として決まった、なんて願望が叶う夢もありましたが」
お父様がふむ、と頷かれます。願望が叶う夢は誰しもが見るものでしょう。お父様も少し雰囲気が柔らかくなりました。あまり真剣に聞く必要が無い、と踏んだのでしょう。そんなお父様の雰囲気を肌で感じ取りながら私は先程のお母様とお姉様に関する事を話し出しました。
「夢では、お姉様は何歳か歳を取っていて。多分結婚適齢期の年齢なのだと思います。その年齢のお姉様は今のように病弱だからと言って今よりも我儘になっていました。夢なので都合良く話が進んでます。お姉様の我儘をお父様もお母様もお兄様も私もロイスも止めません」
本当は前回の出来事ですから私は当然居なかったですが、ヴィジェスト殿下の婚約者になっていたなんて言いたく無いので少しだけ嘘をつきます。
「それが多分悪かったんです。お姉様はバートンにも我儘一杯で。少しの我儘なら許せたけれどこんなに沢山の我儘は我慢出来ないって婚約破棄されてしまう夢でした」
お父様が口を大きく開けて驚いています。お父様、はしたないですわよ。
「もちろん只の夢ですけど。今のお姉様は誰かが我儘を指摘しないと何れは夢のようになってしまうと思いました。それはお姉様が不幸だと思うのです。そう思いませんか?」
「む……」
夢だからどんな風にでも見られる事をお父様も理解したのでしょう。そして今のお姉様の我儘ぶりを見ていれば、お父様もたかが夢だと笑い飛ばせない事に気付いたのでしょう。考え込むようにお父様は唸りました。




