2度目。ーー隣国の王子殿下達は猪と狸だと思います。・4
「どうかしましたか?」
ニコニコとノクシオ殿下が尋ねてくるけれどこの笑みがもう胡散臭いとしか思えないのは私の性格が悪いわけじゃないわ。
「いえ。護衛の方達は? と思いまして」
お父様がこの場に居ないのは応接間に入る直前で執事から殿下方を屋敷に連れて来たら説明だけしてトンボ帰りで国境沿いの砦に戻って後始末をしているから、と聞かされているので納得している。お母様は現在ご実家に帰られているし……。お母様のお父様……要するにお祖父様ですが……体調が悪くて1ヶ月程寝たきりなのでお母様はずっと向こうですし。お兄様も殿下方の素性が判明しなかった第一報の時にお父様と共に砦に向かってそのまま滞在していると聞いているから居ないのは解る。ロイスは病弱なお姉様が珍しく外出する程体調が良いため、お姉様に付き添って外出中らしい。考えてみると私以外辺境伯家の者がおりませんわね? 執事が頑張ってくれていた事に感謝ですわ。
「ああ護衛ならば置いて来たよ。私と兄上は君の父上の馬に乗せられて連れて来られてね。護衛達は君の父上の馬術に敵わなかったようで私と兄上がここに到着した時点でゆっくり来るように君の父上に託けた。そろそろ到着する頃じゃないかな」
お父様……。一体何をやっていらっしゃるんですの……。殿下方を誘拐してきたようなものではないですか。しかも護衛を置いてきぼりって護衛の立場が無いでしょうに……。護衛の皆様ごめんなさい……。
それにしてもノクシオ殿下の話から察するに殿下方が到着してから私が帰るまでそんなに時間が経っていたわけでは無かったのですわね。安心しました。殿下方に何かあれば我が家の罪ですもの。お咎めどころか首が飛んで辺境伯家が潰れてましたわ。
「左様でございましたか。では護衛の方達がいらっしゃるまでの間ご逗留頂きますが、護衛の方達がいらっしゃったら速やかに隣国へ帰られますよう我がセイスルート家も万全を期してお見送りさせて頂きますわ」
お忍びと聞いていることから察するに、当然隣国の国王陛下から許可など得ていないのでしょう。というか。護衛付きとはいえ良く城から抜け出して国境沿いとはいえ隣国の我が辺境伯領に足を踏み入れる事が出来ましたわね……。まぁ前回の記憶を思い返せば私が10歳の頃はまだ隣国と緊張関係は有っても戦争になる……といったような緊急性の高いものでは無かったですものね。幾らか警戒が緩んでいたのでしょうか。
まぁ警戒が緩むのは間違いですけれどね。
そんな事を考えていた私にノクシオ殿下はとっとと帰れ、とブレない私に笑みを深くして爆弾発言をかましてくれました。
「私はケイトリン嬢を気に入った。婚約者は取り敢えず保留としてもどうだろう? 友人にならないかな?」
「嫌です」
即答否定しました!
不敬だろうと知ったこっちゃない。こんな腹黒王子の婚約者も王子妃も御免被るけれどこんな腹黒王子の友人も御免被りますわ!




