2度目。ーー隣国の王子殿下達は猪と狸だと思います。・2
「まぁ左様でございますか。そのお話は確かにだいぶ前にお父様からお伺い致しまして私に王子妃など務まりませんわ。とお答え致しました。それに殿下方はご存知か分かりかねますが我がセイスルート家は志の強い者が跡取りという絶対的な掟がございますの。それさえクリア出来れば女でも当主になれますので私は当主になるべく日々を過ごしておりますから更に王子妃など無理です、とお父様にお話しましたわ」
解ったら帰れ。
微笑みに意思を込めてみるもののノクシオ殿下は絶対解っているはずなのに微笑んでいるだけ。ドナンテル殿下は「まぁそうだろうな。たかが伯爵位の娘ごときが俺やノクシオの妃など務まるものか」と嘲笑っている。そう思うならとっとと納得して帰れば良いでしょうよ!
その私の願いは当然届かない。どころかずっと楽しげなノクシオ殿下が何かを思いついたような表情を浮かべて切り出した。
「成る程。辺境伯位を継ぎたいと思うのは素晴らしいことだけれど、もし選ばれなかったらどうするの? ケイトリン嬢は姉君と違って婚約者がいらっしゃらないでしょう?」
楽しげな表情を浮かべているから何を言い出すのかと警戒したけれどまぁ予想範囲内の疑問だわ。
「構いません。私が普通の貴族令嬢でしたら婚約者がいない上に結婚適齢期を迎えてしまっていたなら嘆くでしょうが、先程も申し上げました通り私は辺境伯位を狙う娘。当主の後継に選ばれなかったとしても結婚適齢期を過ぎていてお相手が居なくてもそれで嘆くような可愛げなどとうに捨てておりますわ」
そんな程度の覚悟で当主の後継を狙うわけがないでしょう? と目で語っておく。やはりドナンテル殿下は理解していないで
「全く可愛げのない女だな。俺の妃ならばもう少し可愛げと淑やかさを持つと良い」
とか言っていますわね。だからあなたさっきご自分でたかが伯爵位の娘ごときって見下していたでしょう! なんであんたなんかのために可愛げと淑やかさをどこかから連れ出して来なくちゃいけないのよ!
私はここまでのお二方を見て今回の一件について理解しました。おそらく私がヴィジェスト殿下の婚約者探しのためのお茶会に参加することを知って腹を立てた(つまり自分達を下に見た、と思われた)のがドナンテル殿下。そのドナンテル殿下を止めるフリをして私という娘の品定めに来たのがノクシオ殿下。ドナンテル殿下が猪でノクシオ殿下が狸と思って間違いなさそう。この状況を作り上げたのはノクシオ殿下の方ね。……となると前回ドナンテル殿下が王太子として認められなかったのは側妃の子だから、ということではなく単純に能力差ということみたいね。
だって私の1歳上ならば11歳だというのにこんなに感情豊かでは国王になった暁には臣下からも他国からも舐められまくってしまいますもの。
反対にノクシオ殿下は私と同い年ながら微笑みを浮かべるだけで感情は楽しそうなものしか出していない。つまり他の感情を全て隠してしまわれている。この時点で既に勝負が決まっていますわね。……ああ厄介ですわ。絶対ノクシオ殿下はこれで「分かりました」と納得して帰るような素直な性格をしてないと思いますわ。どうしたら納得して帰って下さるかしら。




