2度目。ーー一難去ってまた一難とは良く言ったもの。
「はい。その……昨日我が国との国境付近で怪しげな一団がおりまして。砦でその一団を引き止めて尋問をしたところ、あちらの国の王家の紋章が入った小型の剣を持つ少年が2人。しかも怪しげな風体ではあるものの着ている物は絹。物が良い衣服に王家の紋章が入った小型の剣……。なんだか嫌な予感が致しまして旦那様にご連絡を入れた、と」
砦を守る兵士と騎士の話ということでしょう。
「それでお父様が直々に足を運んでみたら……殿下2人だった、と?」
「……左様にございます」
「それで今朝はお父様がいらっしゃらなかったのね。あれほど本日のお茶会に対してゴネまくっていたお父様が当日の朝にお顔を見せなかったのが不思議だったけれど、ようやく納得したのかと思いましたわ」
実際は私の見送りよりも大事が出来していた、と。それにしても何故このタイミングなのかしら。私の顔に出ていたのか執事がその答えを教えてくれた。
「まぁ我が辺境伯家や王家が隣国に影を放っているように向こうもこちらに影を放っていますから。本日のお茶会について把握していたのでしょう」
「ああわかったわ。そういうことね。つまり私は隣国の王子殿下2人の婚約者候補を辞退したというのに我が国の第二王子殿下の婚約者選びには参加するのか、と文句を言いに来た、と」
私の身も蓋もない言い方に執事は肯定は出来ないけれど否定はしない、という表情になった。要するに自分達とヴィジェスト殿下と立場は同じなのにどういうことだ、と言いたいのでしょう。
「お嬢様と入れ違いに旦那様に無理やりくっついていらしてお嬢様の帰りを待つ、と仰られ……」
「先程の騒動は私の先触れを知って会わせろと騒いでいた、というところ?」
執事は沈黙を貫いたけれど答えない事こそ答え。私は溜め息を吐き出してデボラに指示を出した。
「両殿下を待たせたままには出来ません。デボラ支度を。このドレスのままで良いわ」
「かしこまりました」
「お嬢様、しかし!」
「お父様はなんて?」
「一度くらいは会わせないと帰らないかもしれないな、と」
「あらじゃあ何もおかしくないわね」
お父様の意向に沿うのだから何も問題ないでしょう? と尋ねれば執事は不承不承頷いて下がった。それにしても一難去ってまた一難。日本人だった頃に聞いた格言を思い出す。正しく今の状況ね。
それにしても……ドナンテル第一王子殿下もノクシオ第二王子殿下も前回にお会いしたことはない。私が両殿下の婚約者候補という事を知らなかったから会う機会が無かったのも理由の一つだけどヴィジェスト殿下の婚約者という立場は私が死ぬ少し前に明かされたから婚約者……つまり準王族としてもお会いする機会はなかった。
どんなお2人なのか全くと言っていいほど、両殿下の情報は持っていないのよね。それが吉と出るか凶と出るか。さてどちらかしらね。




