2度目。ーーお茶会が無事に終了しましたので心は浮上してます。
読み通りあれ以降ヴィジェスト殿下と交流せずにお茶会が終了しました。これで何の憂いもなく帰れます。一度は参加しましたから義理は果たしました。たとえ王家に忠誠を誓わずともこの国の土地に根付いているセイスルート家ですから敵対しようとは思っていません。ですから揉め事回避のために必要な義理は果たします。今回はこのお茶会ということですね。これでこの後もヴィジェスト殿下に婚約者が決まらずお茶会が開催されようともセイスルート家は義理を果たしましたから参加する必要は有りません。たった1回。されど1回。この1回が有るか無いかでこちらの発言権が変わってきます。王家の要請を断っているのにこちらの要望など通るわけがないので、果たすべき義理を果たしておけば今後の発言権は強さを増します。……それが分かっているお父様なのにそれでもお茶会に参加する事はゴネまくっていましたけどね。
「デボラ。さぁ帰りましょう!」
「はい、お嬢様。……お嬢様は本当に辺境地を愛しておられますね」
「え? うん? それはそうだわ。どうして?」
「いえ、行きは沈んでいらっしゃったのに帰りはこんなにも浮いていらっしゃる。王家にも第二王子殿下の婚約者の座にも全く興味が無かったのだなぁ……と思いまして。王都の様子すら見る事が無かったですし」
……あー。8年も王都に居ましたからね。見慣れた風景だったので興味なかったんですよね。でもそんな事はデボラに言えませんから帰りの馬車から外を楽しみましょうか。王都の景色自体は見慣れたものでも嫌いではなかったのです。
「行きは景色を楽しむ余裕も無かったのよ。だってお茶会に参加したくなかったのですもの。帰りは見物しながら帰りましょうか」
「そうですね。お嬢様が楽しまれる姿を見るのは私も嬉しくなりますから」
ふふふと笑うデボラは私より確か5歳くらい上だったと思ったけれど、普段の大人びた様子が無くなって少女にしか見えなかった。多分私付きの侍女になってしまったから自然と大人にならざるを得なかったのだろう。デボラだって未成人なのに……なんだか申し訳ないわ。そうだ!
「ね、デボラ。今日は無理だけどまたこうして一緒に出かけましょう? その時は綺麗な景色と美味しい食べ物を一緒に楽しみましょう!」
いい案でしょ? と表情や声に乗せて言えばデボラが驚いた顔をした後「ぜひ」と顔を輝かせて笑った。前回も今回もデボラが私付きの専属侍女になったのは私が7歳の時。前回はそれから3年しか一緒にいられなかった。10歳で王都暮らしを始めた私は専属であっても未成人だったデボラを王都へ連れて行かなかった。家族と離れ離れになる事の寂しさは私だけで良い、と思っていたから。
でも。
もしかしたらデボラからすれば私付きなのだもの、私と一緒が良かったかもしれない。結局前回は聞きそびれていたけれど。今のデボラを見たらそんな気がした。デボラと他愛ない話をしながら見えて来た辺境領。疲れるばかりのお茶会を思えば安心感が募る。
ーーでも私は知らなかった。この安心感が崩れる状況に陥っていたなんて。
本作はエブリスタとの同時進行の関係上感想欄もレビュー欄も閉じていましたが、本作完結後に感想欄及びレビュー欄を開放致します。
活動報告のコメント欄に感想を寄せて頂いた方ありがとうございました。お礼が遅くなりましてすみませんでした。




