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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
2度目の人生を送る事の原因と意味と結果。
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2度目。ーーその人と会うのは、実は初めてでした。・11

大変遅くなりました。

「そういえば……」


「お嬢様?」


「いえ。お兄様からの手紙にお母様とお姉様の事が書かれていないのが不自然な気がして」


本来なら使用人が主の手紙を覗き込むなど非礼の上に処罰対象になってもおかしくない事なのだが、デボラの事は実の姉より姉と慕っている私は、覗き込まれても構わないと思っている。だから、デボラが「そういえばそうでございますね」とあっさり肯定した事も問題ではない。


問題は、今も言ったように、お母様とお姉様の事が書かれていない手紙の不自然さの方。炙り出しなんて手法を用いて来たのも不思議と言えば不思議だし。今回のお兄様の手紙は、明らかに不自然ばかりが目立つ。ここまで不自然だと封筒にも何か仕掛けがあるのかしら……なんて、それこそ子どもの遊びみたいな発想をしつつ、封筒を覗き込んだ。


普段なら封筒を覗き込むなんてしない。手紙の不自然さに何となく封筒にも……と思っただけ。それなのに。私はビックリしてしまった。


「何、これ」


「お嬢様、どうされました?」


何気なく覗き込んだ封筒は、二重になっていた。デボラの問いかけにも答えず慎重に封筒を切り開く。封筒の中に一回り小さな封筒があって、その手間を考えると、この一回り小さな封筒が大切なものだと解る。それもそのはず。一回り小さな封筒そのものに、文字がビッシリと埋まっていた。


「ルベイオ様、何故このような手の込んだ事を……」


デボラも仕掛けを見て唖然としている。私は封筒に書かれた文字を見て、これが本当の手紙だと知った。


「お兄様なりの工夫なのだわ」


読み終えた封筒をデボラに渡す。デボラも急いで目を通しているようだ。


「ああ、ルベイオ様。そういうことでしたか」


デボラが読み終えたのか溜め息をついた。こういう工夫をしてまで、誰かの目に触れないようにしていたその内容は。


「まさかお姉様が元アウドラ男爵領を欲しがるなんて、ねぇ」


「キャスベル様はまさか、未だバートン様の事を……」


「それは、知らない。解らない。私とお姉様の関係を考えればそんな内側に入るような話なんて出来ないのは解るでしょう?」


「そうですよねぇ。キャスベル様は、アレですもんねぇ。ホント、未だに私は許していませんから、キャスベル様のことは」


デボラは、お母様とお姉様の私に対する態度を未だに許す気はないそうだ。私の場合、許す許さないというよりは、まぁ後悔して少し考えて行動してくれるようになったなら、それで良いや……くらいのもの。もしかしたらデボラの方がよっぽども感情的なのかもしれない。私のために私よりも感情を出してくれるデボラの存在があるから、私はそれで構わない。


それはさておき。


お兄様がこんな面倒な事をしたのは、私に情報を教えようという計らいなのだと思う。ただ、その内容がお姉様の元婚約者・バートンに関連する事だから、こんな面倒な手法を取ったのだろう。アウドラ男爵家の起こした一件は。セイスルート家……私達家族は元より、我が家に尽くしてくれている使用人や我が家に仕えてくれている辺境の騎士や兵士達。そしてセイスルート辺境伯家の庇護下にある領民達や我が家に関連する商人達などにも影響を与えた。


要するにアウドラ男爵家に対する怒りと疑念。


それは、お父様によって処罰されたアウドラ男爵家そのものだけでなく、あの地にいた男爵領の領民達への怒りと疑念にも及び……お父様の名の下に、アウドラ男爵家は処罰されたことを辺境の地にて暮らす人々に教え、同時にアウドラ男爵家のみが処罰の対象なのであって、彼等の庇護下にあった領民や関わっていた商人等は、なんの責任も無いと大々的に発表する程だった。


そこまでしなくてはならない程、元アウドラ男爵家が行った事は許し難いものだった。というのも、辺境の地は隣国との小競り合いが「またか」と言われるレベルで起こるし、獣に襲われる事だってある。王都にいる平民や貴族達よりよっぽども生死が身近に感じられている。


だからこそ、彼の地を治める我が家と我が家に信頼されていたアウドラ家を辺境の地に住まう者達は絶大な信頼を置いていた。その信頼を失くしたアウドラ家は……一枚岩になって辺境を守らなければならなかったはずのアウドラ家は。辺境の地に住まう者達からの怒りと疑念を買った。


だからこそ、処罰されたにも関わらず、未だにアウドラ男爵家を憎む者もいる。……にも関わらず、お姉様はアウドラ男爵家の領地を欲している。そんなの恨んでいる者達の反感を買うにきまっていた。そうなれば、いくら我が家でも反感を買ったお姉様を守るわけにはいかない。


お兄様もお姉様に肉親の情があるからこそ、私にこんな工夫をしてまで知らせて下さったのだろう。万が一にもアウドラ男爵に反感を買っている方達にお姉様の事がバレないように。


「まぁ、事情は理解したけれど、直ぐに帰国も出来ないし、お兄様にお任せするしかないわね。私は私でシオン帝国でやる事があるのだから」


「左様でございますね」


そして。再びマリベルさんに会う日が決まり……その日を迎えた。

愛でる会入会期間は、明後日の朝までです。入会希望者の方は活動報告をご覧下さい。

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