2度目。ーー会ってしまいました王家からの使者さんに。
とりあえず前回のことを踏まえるとお父様は私に王家の使者と会って欲しくないはずですからこっそりとどなたがいらしたのか確認をしてみましょうか。馬車から降りた姿がちょっと見にくかったので分かりませんでした。急ぎ玄関に向かいます。……あらもうお父様がいらっしゃいますね。
「帰れ! 我がセイスルート家は代々王家に忠誠なぞ誓わん!」
あらまぁお父様最初からお怒りモードですわねぇ。相手の方の声が聞こえませんわ。少し近づいてみましょうか。決してバレてはいけません。
「……ても……です!」
ああ少ししか聞こえません。うーん。でも前回で聞いたようなお声ですわね。
「なんと言われようがウチの娘は王家なぞに嫁には出さん!」
「そう仰られても私は陛下から直々に使者として遣わされてます! とこの言葉3回目ですよ」
あらぁ? このお声は確か陛下が信頼している臣下で前回では宰相補佐を務めていらっしゃったフォーメル様では? アレス・フォーメル伯爵……。王家はかなりこの婚約話に本気だったのですわね、この方を使者にされたのですもの。前回の私も王家からの婚約の件を耳にした時はこの方にお会いしましたかしら? ええと……。
「あ」
「「あ?」」
思い出して声を上げたらお父様とフォーメル伯爵様のお二人がこちらを向かれました。あら困りました。声が聞こえてしまいましたね。でも前回の記憶を思い返したら衝撃でつい声を上げてしまいましたのよ。
だって私が前回王家に連れて行かれて婚約の話を承諾した時……確かに使者はフォーメル伯爵様でしたが……脳筋、いえ単純な思考のお父様を搦め手ではなく真っ向勝負で言い負かしたのですもの。あのように真っ向勝負を持ちかけられて負けてしまえばそれはお父様は黙りますわね……。
それでそんなお父様を見るに見兼ねて私はフォーメル伯爵様と馬車で王家へ向かい、婚約を了承しました。それが10歳を迎える頃の話でしたわ。
「ケイトリン、何故ここに」
私はハッとしました。前回を思い出してぼんやりしてしまいましたわ。お父様が困った顔です。
「ごめんなさい、お父様。なんだかお父様のお声が聞こえて来てしまいましたので興味を持ってしまいまして」
私が素直に謝ればお父様もそれ以上何も言えないのか黙りました。その隙にフォーメル伯爵様が私に挨拶してきましたわ。
「おや、あなたがセイスルート辺境伯殿の娘かな? 私は伯爵位を賜っているフォーメルと言う者です、はじめまして」
挨拶を受けて黙っているのは淑女としては有り得ませんわね……。
「初めてお目にかかります、セイスルート辺境伯家の次女・ケイトリンと申します」
綺麗とは言えないだろうけれど精一杯カーテシーを決めてみせました。フォーメル伯爵様は何かを見極めるような視線を一瞬見せて参りましたわ。多分私の挨拶がどれだけのものか……つまり教育がどれだけのものか見極めていらしたのでしょうね。満足そうな表情を浮かべましたもの。
さて、困り顔のお父様のためにも打開策を考えないといけませんかしら?




