2度目。ーーその人と会うのは、実は初めてでした。・3
すみません。大変遅くなりました。
昨日の保存ミスが未だに続いており、気乗りせずにすみません。
「それで。マリベルさん、ロズベルさんは何方にいらっしゃるのですか?」
ついつい気が逸ってはしたなくも意気込んで聞いてしまいました、私。
「ロズベルは……」
マリベルさんはチラリと執事見習いの方を見ました。どうやら私の予測通り彼は監視役の方みたいです。そしてその彼は首を振りました。
「居場所はお伝え出来ません」
「そう、ですか。では何故王家の乳母を務めたあなたが国外に出る事になったのか、教えて下さい」
マリベルさんがキッパリと言えば、軌道修正を図るようにタニアさんが質問した。私に暴走したわね、と視線が突き刺さる。すみません、タニアさん!
「はい。先程もお話したようにロズベルは急にそのような物言いを始め、更には恐れ多くもヴィジェスト殿下の妃になる、とか口走るようになり。私はこんな身分の低い子爵家ごときにいる存在ではない、と言い出しました」
うわぁ……。ロズベルさん、やらかし具合が酷いんですけど。えっ、ねぇ、子爵家ごときって、あなたはその子爵家の産まれですけど⁉︎ 自分の両親をよくそんな風に貶められますね。如何に周りが見えていないかよく解るエピソードですね……。
チラッとタニアさんを見れば、不快なのだろう、眉間に皺が出来てます。そんなヒロイン見たくないですよね。私も見たくないです。
「それで?」
「夫からロズベルを除籍する、と」
気持ちはわからないでもないけれど。また随分重い処分。
「それがロズベルが12歳。学園に入学する前の年でした」
その年齢で貴族として育てられた令嬢が除籍されて生きて行けるとは到底思えない。それでマリベルさんは、ロズベルさんと共に生きて行くために夫に願い出て離縁してもらった、と。夫と息子ならば散々迷惑をかけても……許せるとは言い切れないが許せるように頼む事は出来たでしょうね。
「夫と……息子には反対されましたけど。まだ十二歳のロズベル1人を放置することは出来ないのだ、と。そう言って離縁して頂きました。その頃の私は……ロズベルが寂しい思いをしていると思って、まだ言葉遣いも礼儀作法も何もかも直るとばかり考えておりました。ヴィジェスト殿下の妃になる、という話も有り得ない事を気付いてくれる、と。そのためには寂しい思いをさせないよう、積極的に交流を持とう、と決めたのです。
それで最初のうちは、平民として暮らせるように王都の平民街で家を借り……この借家も夫が借りてくれたものでしたが……2人で生きて行こうと思ったのです。ところが。ロズベルは何故このような状況になっているのか全く理解せず、それどころか子爵令嬢であることが不満だったはずなのに、貴族令嬢で無くなった事も気に入らずに、私は平民になって生きて行く事なんかしたくない! と暴言を吐き始めました」
マリベルさんが疲れたように溜め息をついて俯く。すかさず執事見習いさんが、皆にお茶のお代わりを注いで行く。その時になって皆がハッとしたような表情をした。私も、多分そうだと思う。それだけ話を聞き入っていた証拠だろう。思い思いにお茶を口にしてから、マリベルさんが続きを話し出した。
「それが何日も続くようになった頃、夫と息子の耳にも入ったのでしょう。ロズベルを諫めに来ました。除籍をしたのだから関わらなくても良いはずなのに、父であり兄だから、と。ですが、ロズベルは言うことを聞かず……夫と息子は私にロズベルと離れるように説得してきました。それでも私は首を縦に振らず……。
夫が、残念だが平民に対する暴言が貴族の間でも噂になりつつある。王都に居させるわけにはいかない。それでもロズベルと共にいるのなら、王都から出る事になる、構わないか? と尋ねて。私はそれでも母としてあの子の側にいる事を選びました。そして夫と息子に諫められても変わらないロズベルと私は、夫と息子に見送られるように馬車で王都を出ました。……ロズベルはちっとも王都を出て行く事に納得していませんでしたけどね」
哀しそうにマリベルさんは笑って話す。ここまで母に愛されていても変われないロズベルさん。なんだか私の姉・キャスベルを思い出してしまいました。……いや、でも、少しは変わって来ましたっけね、姉は。
母として正しい道を教えようとロズベルさんに接するマリベルさんは、私の母とは別ですが。それでもここまで構ってしまう時点で、私の母に似てると思ってしまった私は捻くれているのでしょうかね。
今なら書ける、と書いたのでこの波に乗って今夜の分も続けて更新します。
お読み頂きましてありがとうございました。




