2度目。ーーでは、私は余計なことを言ってしまったのではないでしょうか?
「お姉様が身体が弱くて隣国の王妃か王子妃が務まらないことは理解出来ました。それで私が候補ということも。ですが私は王妃も王子妃も御免被りますわ。お父様の跡を継げないとしても私はお父様の娘ですもの。この国を護りたいと思いますの」
「王妃や王子妃は嫌か?」
「嫌ですわ。既に淑女教育が始まっているので思いますが大変です。本当に。でも貴族令嬢なら誰もが受ける教育なのでしょう? そうだとしたら王妃や王子妃教育はもっと大変でしょう。ということは武術の訓練や剣の訓練などしている時間が無い気が致しますわ」
「うむ。それはそうかもしれないな」
いえ実際は王子妃教育の合間に訓練していましたけれども。王妃も王子妃も興味が無いので此処は全力で拒否しますわ!
「ですからお父様。隣国の国王陛下には申し訳ないのですがお断りして頂きたいのです。私はこの国を守るセイスルート辺境伯の娘ですから、と」
「ふむ。ケイトリンがそこまで言うとは。やはり我が家の血筋か。分かった。跡取り候補である事もそうだがこの国を守るその志は当主として尚更守るべきらものだ。お断りしておこう」
私はホッとします。お父様が約束を反故にされる事はないからです。これでこの話は片付いたと思って良いでしょう。さて。残るはヴィジェスト殿下との婚約話ですが。なんとなく読めてきました。
お父様が王家に忠誠を誓うのが嫌だからヴィジェスト殿下との婚約を断っていただけではなくて隣国の国王陛下とのお話があったからこそ断っていたのですね。でもそれを知らない私が国王陛下直々の呼び出しの上にお父様がご迷惑をおかけした事を伺って罪悪感で勝手に引き受けてしまった、と。
うん。私が余計なことをしなければ隣国の国王陛下からの打診を盾に断りきれたのかもしれないですね。……もしかしたら隣国の話を持ち出したら逆に強行手段を取られていたかもしれませんが。予想は出来ても既に結果は出てしまったことですし、前世は余計なことをしたために早くに死んでしまった、と教訓を得ました。今世は余計なことをしませんわ!
「お父様。お忙しいところをお邪魔してすみませんでした」
「いや構わないよ」
「では失礼致します」
さてお父様とのお話は終わりました。ヴィジェスト殿下との婚約話はお父様から切り出されない限り放っておきましょう。私は王妃も王子妃も興味が無いと明言したのですからそれは隣国だけでなく自国も同じ、とご理解頂けたはずです。仮に王家から打診され始めていても前世のように私に接触しない限りは放置です。
前世のように私に直接王家が打診してきたらその時はハッキリお断りしましょう。折角巻き込み戻った時間なのですから……あ、いえ巻き戻ったのではなく別の要因かもしれないですが……とにかく今世は若くして死にたくないですわ! 真琴の時でさえおそらく17.8歳で死んでしまったのですから! 目指せ長生き。死因は老衰がよいです。




