2度目。ーーまさかの事実が判明しまして、驚きの連続です。・1
寮の自室でお茶会をしながら休日を有意義に過ごしたらしい4人の話を聞き終えた後で。私はクルスにドミーの現在の住居を教えて手紙を持たせました。久々に使う日本語です。
「お嬢様。やっと……会えたのですね」
デボラの静かな声に頷く。私がどれだけドミーの事を想っているのか知ってるデボラは、ただ満足そうに微笑んだ。
「アレジ。ガリア」
「「はい」」
未だお菓子を頬張っている2人に真剣な顔を向ければ、さすが影。空気の変わりようには敏感で手を止めて表情をスッと変える。私は必要最低限の情報を彼等に話しておく事にした。彼等の手を借りる予感がする。いえ、必ず借りるはず。
「私が内密にジュストと共に人探しをしているのは知ってるわよね?」
2人が頷く。私はそこから、自分が2度目のケイトリンの人生を歩んでいること。お父様はご存知なこと。ヴィジェスト殿下並びに私が恋しているドミトラル様も1度目の人生の記憶を持っている事を話す。
「それでね。おそらくヴィジェスト殿下と私とドミーに記憶が有る事の意味が、ロズベルという子爵家の令嬢が関わっているから、だと思うの。……荒唐無稽の話だと思うならそれはそれで構わない。だけど、必要最低限の情報を持っていてもらわないと、あなた達にもロズベル様探しを手伝ってもらう事になるから、探し難いと思うの。だから情報として捉えて頂戴」
私の説明に、アレジは深刻な表情で考え込んでいてガリアはのほほんと「分かりましたー」と受け入れた。受け入れた⁉︎
「えっ、ガリア、本当に分かったの⁉︎」
「えー。だってお嬢は俺たちを担ぎ上げて嘲笑うような人間じゃないでしょー。そんで、クルスとデボラが話を聞いていても何にも変わらない。ってことは、前から知ってたんでしょ? 2人が荒唐無稽だからって一笑に付さないなら、そりゃもう信じられない話でも信じてるって事でしょ。だったら疑う事なんて無いでしょー」
「軽っ。隣のアレジは考え込んでるわよ?」
「いや、俺も考え込んでたわけじゃなくて。こんな面白い話、ずっと黙っているなんて酷いなって思ったんですよね。お嬢、なんでクルスとデボラには話したんです?」
考え込んでたんじゃないのかっ! アレジの発言に溜め息をついて、もうアレコレ気を回した私がバカみたいだと思いながら、それなら……ということで、明日のフリータイムで全てを話す事にした。
「今日はもう時間だから寝るけど、クルスはドミーへの手紙をお願いね! あと、アレジとガリアにはきちんと話すから! ロズベル様探しを手伝ってもらうからね!」
「「「了解です」」」
3人が下がったのを見届けて、私はデボラにおやすみと挨拶をしてベッドに潜り込んだ。今日の事を色々思い返して……ドミトラル様が私の事を覚えていてくれた事が嬉しくて、眠れないかも……と思ったけれど。
疲れていたのか、いつの間にか私は睡魔に襲われて夢の世界に引き込まれました。
だからデボラが私の顔を覗き込みながら
「全く私のお嬢様を散々泣かせておいて、実は女装した兄でした! なんてオチをこの私が許せるわけないじゃないですか! 少々兄弟揃って痛い目を見てもらう方がいいかもしれませんね! あれだけ元気溌剌で明るくて賢いお嬢様を悩ませていたのですから。一時期は本当にどうなる事やら……と私でさえ、お嬢様の様子に胸を痛めていっそのこと、ドミトラル様とやらを女性諸共暗殺しようか、と何度思ったことか」
なんてブツブツブツブツ呟いていたなどと、知らない。そしてデボラの恨み節が現実となってドミーとタニアさんを襲う事になるなんて、更に私は知らない。尚、その時の事はデボラに釘を刺された2人が黙っていたので、もちろんデボラが話すわけもないので、何が有ったのかなんて、私はついぞ知らないままなのである。




