2度目。ーーそういえばお父様にお訊ねしたい事がありました。
男爵家から帰り午後のお稽古を終えたところで気になる事を思い出しました。一つは私に婚約者候補さえいない理由。もう一つは隣国についてです。あのガーデンパーティーの時コッネリ公爵が我が国に滞在を延ばす理由が分かりませんでした。元々隣国との仲は表面的なもので実質は緊張状態を保っています。ただ不思議な事にお父様と隣国の国王陛下は友人だ、とお父様が仰っていました。そう。隣国との仲が本当に友好的なのかさておき。お父様と隣国の国王陛下との関係は気になります。何故、どうして友人と呼べる程の仲なのか。それが本当だとして、では何故隣国は我が国とは緊張状態なのか。
お父様は何を隠していらっしゃるのでしょう。
お父様を疑いたくないです。でも隣国に対して不可解な事があります。私はセイスルート辺境伯家の者。国と民を守るために必要ならばお父様とも敵対しなくてはならないのです。現在8歳。私と王家の婚約が打診され私が仕方なく了承する年齢で同時にヴィジェスト殿下との婚約が内定する。そしてきちんと婚約……第三者にも解るように書面で交わすのは……2年後の10歳。それから直ぐに王子妃教育を施されるために王都へ。
先ずは学園卒業程度の勉強を10歳から始めて13歳で修了して王子妃教育が始まりましたわね……。思い出したくないですわ……。はっ。思考がズレました。そうです。お父様のお心を私は知らねばなりません。デボラにお父様と話をしたい事を告げて面会許可を取ってから私はお父様の執務室へ向かいました。
「お父様失礼します」
「ケイト! お父様に何の話だい?」
私が顔を出した途端にギュウギュウに締め付けられました。お父様が気付いて手を緩めなければ危うく意識が飛ぶところでした。
「お父様。お伺いしたい事がございます」
何も臆する事なく敵を見据えよ、というのが戦う時の鉄則だそうです。という事で私はお父様に戦いを挑んでいる気分でいます。お父様も私のその顔に何かを感じ取ったのか、父の顔から辺境伯爵当主の顔に変わりました。
「なんだ」
「お兄様には婚約者がいます。お姉様も。ロイスは婚約者候補としてシュゼットかミュゼットがいます。何故私には婚約者候補さえ居ないのでしょうか」
お父様は目を眇めて私を見ています。私を見定めるように。その視線すら私は受け止めました。だからでしょうか。お父様の空気が緩んで私にソファーを勧めてきました。
「まぁケイトリンが疑問に思うのも仕方ないだろうな。兄弟には婚約者若しくは候補がいるのに自分はまるで居ないからな」
お父様はまたお父様の顔に戻って「ここからは自分とケイトだけの秘密だ。皆に黙っている事は出来るか?」と声を落として切り出しました。私は背筋を伸ばして頷きます。それは内密の話なのでしょう。
お読みいただきありがとうございました。
1度目の訂正内容について。
15歳でケイトリンは13歳のヴィジェスト殿下に会っていますが、その時に婚約してから5年が経過としています。これで正しいのですが8歳で婚約しているという意味合いの文章になっているので、今話で8歳で婚約内定。10歳できちんと婚約という事を改めて書きました。だから5年後ケイトリンが15歳で初顔合わせ。
それから、ロズベルが隣国の王弟の娘、とヴィジェストの父である国王が言ってましたが正しくは隣国の現国王の叔父です。ですので、“前”王弟の娘と書き換えてます。




