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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
3年目の学園生活は留学の留学からスタートです。
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2度目。ーー新たな留学先は通称魔法学園と呼ばれています。・7

遅くなりました。

取り敢えず馬車は別なのですが、長旅なのは解りきっていますので内装を弄らせてもらってます。この世界の馬車ってバネ無いし木で出来た箱に鞣した革が座る場所に張られているだけなので……まぁ痛いですよね、背中とかお尻とか。バネの代わりになるような素材が見つからないので、辺境伯領の片隅にあった綿を見つけた時はクッションが作れる! と喜びました。……でも綿がね、そういったものになるって知らないんですよ、皆。ソファーだってなんていうか木製ベンチに革と布を張ったような代物なので、柔らかくなくて。ベッドは言わずもがなですよね。どうやら綿の使い道を知らなかったらしくて。


1度目のケイトリンの人生の時って前世の日本人の記憶を取り戻したのは死ぬ直前だったから、結局硬いソファーである事に疑問も抱かなかったんですけど。2度目の人生では8歳まで巻き戻った時(巻き戻ったと思ってますけど、違ったらどうしよう……。まぁ今はそこの疑問はさておき)に、前世の日本人の記憶も有りましたからね。硬い食堂用の椅子もソファーも遠慮したくて、バネが無いならせめて綿が欲しかったんですよ。綿が有ればクッションが作れますからね!


有ったのでデボラに頼んで(絵を描いて分かりやすく頼みましたよ)作ってもらいましてね。デボラは不思議そうというより、得体の知れない物を作らされる事が嫌そうでしたけど、出来上がってその上に座るように命じて恐る恐る座った途端に、クッションの良さに気付いたようで。そこからは侍女長に話を持って行って、手の空いている侍女が皆で作りまくったのです。……自分達だって痛くならない椅子に座れるって分かればそりゃ作りますよね。


まぁその後ブームのようになってソファーもクッションというより木製ベンチの上に綿乗っけて更に布張りをすることを思いついて……とかまぁ色々改造した結果、ウチの椅子・ソファー・ベッドが劇的に変わったので来客もビックリソファーが出来上がったのですが。それを馬車にも応用したので、私は乗り心地が良いんですけど、ボレノー様は違うので内装を弄らせてもらいました。物凄い衝撃を受けたって表情はちょっと笑っちゃいましたね。


そんなこんなで出立してから馬車の馬を変えて(馬だって疲れますからね、馬車用の馬を取り扱っている所とか、騎士や護衛が乗る専用の馬を取り扱っている所とか有りますよ。そういった場合の馬は、各家でも自分専用の馬にはしないんです。愛着は有りますけど執着しないように名前とか付けないんですよ。何しろ置いて行くわけですからね)走り続けて、途中休憩しつつも昼食時になって、ようやくゆっくりと時間が出来たので、ボレノー様と話をする機会にしました。


「先ずは何から話しましょうか」


隣国に入ってますが王都へ続く道とは別ですので、食事が出来る食堂も素朴な感じです。多分前世で言う所のオシャレなファミレスではなく、昔ながらの定食屋さんに近いですかね。私はどちらも好きなのでこの雰囲気は嫌いじゃないですけど。……寧ろ、根っからのお坊ちゃんに思えるボレノー様に嫌悪感とか無さそうな所がビックリです。人は見かけに寄らないね。


「そう、だな。では出立の時の疑問。何故家族が見送りに居なかったのか?」


「ボレノー様は」


「ジュストでいい」


あらま。名前呼びですか。婚約者でも恋人でもないのに。良いんですか? あ、でも、ボレノー様は現在婚約者も恋人も居なかったですね? 私も一応どちらも居ないですし。ヴィジェスト殿下はあくまでも候補ですし、ドミーにはまだ会ってないですからね!


では、遠慮なく。


「ジュスト様は」


「様付けも要らない。こちらはセイスルート嬢に色々と迷惑をかける身だが、友人付き合いをしたいと思うからな。だから私も言葉遣いを友人に接するように変える」


「成る程。では、私もケイトリンで構いませんよ。……それで、ジュストの疑問だけど。私が隣国に留学することになった経緯は知ってる?」


「……確か姉君と仲があまり良くなかった、とか?」


「そう。私の姉・キャスベルは、病弱だったの。それを母が不憫がって。姉にベッタリ。ちょっと……いや結構? 我儘に育ってね。自分は病弱だから、と言えば何をしても許されるみたいな所があって。特に私に対してその気持ちが強くてね」


「ケイトリンに対して特に?」


「お兄様やロイスは男の子だから仕方ない。でも私は同じ女なのに、元気なのが気に入らないって感じかな」


「なんだそれは。完全にケイトリンは悪くないじゃないか」


「そう。でも、お姉様にとっては嫌う対象になってしまった。お母様はお姉様が可哀想ってばかりで甘やかしていたから、多分私の事は嫌いでは無かったんだろうけど、あまり関わろうとも思ってくれなくて」


「……愛情が偏り過ぎたんだな」


「そうね。まぁそこから色々いろいろあって、つい最近になって、お母様とお姉様が歩み寄って来たのだけど。まぁ色々あって、お互いの距離感を探していてね。お父様とお兄様とロイスにも、お母様とお姉様の事は少し考えさせて欲しいってお願いして。だから敢えて今日出立する事は言わなかったの。お父様とお兄様とロイスは知らなければ、きっと訓練をするだろうと思っていたからね。多分、知らされなかった事に皆は衝撃だろうけど。嘘くさい仲良しをジュストに見せるのも変だったから」


「……そうか」


ジュストは、眉間に皺を寄せてただ頷いた。下手に同情してこなくて安心した。

お読み頂きましてありがとうございました。明日も夜の更新時刻が遅くなるかもしれません。(他作品の執筆状況により)

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