表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
3年目の学園生活は留学の留学からスタートです。
229/400

2度目。ーー新たな留学先は通称魔法学園と呼ばれています。・5

ボレノー様が当家へやって来た。……本当にこんなに早く来てどこに行くつもりなんだろう……。しかも護衛の人数が多いし。本当に20人居る。一体何と戦うつもりなんだろう。


「ボレノー様、ようこそいらっしゃいました。ええと……お茶をどうぞ、と言いたいところですが。護衛の人数が多くないですか?」


どうしてもそこが気になってしまい、ついつい挨拶のついでに尋ねてしまった。


「……これくらい普通だろう? シオン帝国までの道中何が起こるか分からないし。君も私も子どもだ。身を守る術が無いから護衛に頼むしかない」


……あー。そういうことかー。私はウチで鍛えられてますが、確かにボレノー様の見た目で察するに何かあっても逃げる事すら簡単にいかないような、こう言ってはなんですが、ひ弱そうな体型です。うーん。まぁそれだと確かに人数は分かりますけれど、はっきり言っていいかなぁ。


足手纏いなんだよな。その考え方が既に。……うん、ちょっとボレノー様とキッチリ話し合おう。護衛と使用人の方達は執事に任せよう。そんなわけでボレノー様を応接室に案内して、デボラを応接室のドア付近に立たせてから、私は(遠回しな聞き方は面倒なので)単刀直入に切り出した。


「ボレノー様。先ず貴方は何処に行くつもりなんです?」


「シオン帝国だ」


「そうですよね。その道中に何かあったら……という不安は理解致します。ですが、抑の話。ボレノー様は何か有った時に逃げようと思わないんです?」


「逃げる? いや、無い。馬車内が安全なのに馬車から出てしまっては、寧ろ護衛に迷惑がかかる。馬車内ならば馬車の周囲を護衛は守れるが、私が出てしまえば、私を襲って来た者と戦いながら私を守らねばならないだろう。その上勝手にどこかに逃げれば護衛は私を追わねばならなくなる」


……ふむ。一理あります。確かに馬車から逃げてしまえばそれだけ護衛も苦労しますね。それだったら馬車内でおとなしくしている方が効率的です。ですが。


「確認ですが、ボレノー様は自分が狙われる具体的な根拠はございますか」


「それは無い。あくまでもそういう事が有ったら……という仮定の話で、狙われるような心当たりは無い」


「それなのに、想定であの人数、でございますか?」


「道中に何が有るか分からないからな」


うーん。なんていうか。典型的なご令息・ご令嬢思考というか。間違ってはいないけれど他人頼みなんだよな。それはあの護衛の方達が強ければ何の問題も無いけれど。例えば野盗辺りならば護衛の方が強いだろうけれど。暗殺者とかプロが相手だと護衛の方達はどの程度の実力なのか……。


考えていても仕方ない。私はデボラにボレノー様の連れて来た護衛の実力を見るように伝えると同時に地図を持って来るように伝える。地図、有るんですよ。この世界。ただ私が思うような上からの視点で描かれたものではなく、人の視点で描かれた地図なので、俯瞰図が分からない。困ったなぁ……と思ったらタータント国では人視点の地図が主流なだけで、それこそシオン帝国では上からの視点地図が有ったので、影に買いに行ってもらったんですよ。この時点ではシオン帝国への留学なんて全く夢にも思わなかったんですけどね。


話がそれましたね。その俯瞰図になる上から視点の地図です。ちなみにその地図の名前は“鳥の目から国を見た地図”というもの。ネーミングセンスってどこの世界にも必要ですね。その地図とタータントで主流の地図の両方を元に、先ずはボレノー様にどのルートを通ってシオン帝国に向かうか、頭の中に入れてもらいましょう。ついでに私が泊まる宿も教えます。ボレノー様がどこに宿泊するかも教えてもらったら。


今度は地図を見ながら万が一何か有った時に先ず命を守る、ということをボレノー様自身が意識して逃げるルートを教えましょう。地図上では分かりにくいかもしれませんけどね、せいぜい何か有っても野盗程度だろう、とたかを括られるのが一番危険ですから。さすがに戦え、とまでは言いませんが、命を守るために逃げる事を考えてもらう事も必要です。


という事で、私は地図を見ながらボレノー様に、野盗程度と見縊らない事。ボレノー様は宰相令息である以上、もしかしたら暗殺者に狙われる……という事も有り得るかもしれない事。戦えとは言わないけれど、護衛の腕が暗殺者より上だ、と確定出来ない以上は馬車から逃げ出す事も必要である事。ルートを説明するから逃げるルートも考えて欲しい事。私が泊まる宿を教えるから、万が一逃げ出した時は、各宿を目指す事。そうすれば私と必ず落ち合える事を話します。


まぁ本当は私と同じ馬車で移動するのが一番なんですけどね。一応婚約者でもない年頃の男女が馬車とはいえ長時間、同じ空間に密室状態は避ける必要が有りますからね。……いくら侍女や侍従が同席していても、拙いものは拙いのです。私はともかくボレノー様を醜聞に塗れさせるわけにはいかないですからね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ