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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
3年目の学園生活は留学の留学からスタートです。
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2度目。ーー約束の1年が経つので話し合います。・1

ヴィジェスト殿下からのお茶会のお誘いまでの2週間。結局私は5日間安眠を優先していた。体調が悪い時以外、寝る事優先の生活は今までなかったため……まぁそういう事だろう。この5日間、正直なところ自分でもいつ目が覚めていつ眠ってしまうのか判らなかったので、食事は部屋で摂っていた。つまり、帰宅当日は、お父様に報告した以外家族とは会えなかったのだが、どうやらお兄様とロイスには結構好かれていたらしく。


「ケイト、お前毒を飲んだって⁉︎ このバカ妹がっ!」


久しぶりに帰って来た妹に酷いな、なんて思いながら帰宅翌朝の朝食を摂っていた私にお兄様が慌てたように部屋に入って来た。そんな悪態を吐きながらも表情は焦っていて、食べているというのに顔色を窺うようにジッと顔を近づけたり私の食事量を見て少ないじゃないか、と叫んだり。


結構好かれていたんだなぁ……と嬉しくなった。


私が毒を飲んだ状況はお父様から聞き及んでいるのか、「この無謀さは誰に似たんだ。父上か?」と呟きながらも頭を撫でながらお兄様が優しく微笑んで。


「無事で良かった。ケイトはキャスとは別の意味で心配だ」


と困り顔で更に笑った。そんなにお兄様に心配をかけてますかね? けれどこんな心配はお兄様だけでなくロイスも、だった。


「ケイト姉上!」


その日の午後、結局ベッドから起き出さないままデボラとお茶を飲んでいた(マナー違反ではあるが)私は、ロイスからの突撃に合って苦笑した。私が思うよりも私はお兄様とロイスから好かれていたんだなぁ、なんて呑気に考えながらロイスに叱られていた。ここまではまぁ驚く事もなかったのだけれど。


ロイスに叱られていた時にドアをノックされて応えた所、物凄く気不味そうな顔をしたお姉様とそのお姉様を促すように室内に入って来たお母様。……思わず窓の外を嵐でも来ていないか確認した私は悪くない。それだけ、この2人が私の私室へ訪れるなんて珍事だったから。先程まで私を叱っていたはずのロイスは、見届けるように黙って部屋の隅に移動してしまったし、デボラはさっさと壁と一体化している。


困った私は訪れたはずなのに黙ったままの2人に対抗するように黙っていた。だってお母様はともかくお姉様は私の覚えている限り、私の私室を訪ねて来た事は……ない。そんなお姉様に何を話せばいいのか。結果お母様と3人、お互いに黙り込んでしまっていた。


「あの、あのね、ケイト。……お帰り」


お母様が気不味そうにそう言う。私も「ただいま帰りました」と、どこか他人に接するように応えて……続けてお姉様が「お、お帰り、なさい。ぶ、無事で良かったわ」と視線どころか顔ごとあちらこちらへ彷徨わせながら言ってきた。


息が止まる程驚く、とは良く言うな……と思う程驚いた。これまでこんな風に私に声をかけるお姉様を見て来た事が無かったから。


「あ、ありがとう、ございます」


聞いた私もその一言を言うのに吃ってしまって。ーー付き合い始めのカップルか! と内心自分に突っ込んでしまった。2人はそれだけ言うとまた気不味そうに部屋から出て行って、私は呆然とそれを見送った。


「姉上、驚いてるね」


ロイスに声をかけられてようやくロイスがまだ居た事を思い出した。


「驚く、でしょ。それは」


「そうだよね。僕も驚いた。でもさ。母上も、キャス姉上もだいぶ変わって来たんだよ。特にキャス姉上が。だからさ。ケイト姉上も少しずつ、母上とキャス姉上に歩み寄ってあげて。僕と兄上も父上も手助けするからさ」


ロイスの物言いに、いきなり弟が大人びたように思えたけれど。その内容は家族を思う優しいものだったから、私は黙ってロイスに頷くだけにしておいた。

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