2度目。ーー年齢確認。取り敢えず精神年齢はオバさんです。
コンコンと聞こえた音の後「お嬢様入ります」という声が聞こえてきました。この声は私付きの侍女デボラです。
「まぁお嬢様! もうお目覚めだったのですか? おはようございます」
「おはようございます、デボラ。目が覚めてしまいました」
私が釣られて挨拶をすれば若干変な顔をしている。何か失敗したかと思いながらキョトンとした顔を作って首を傾げた。
「どうかしました?」
「お嬢様。随分と元気がありませんね。昨日までは元気いっぱいにおはようございます! と仰っていたのに。具合が悪いのですか?」
「デボラは凄いですね。実は怖い夢を見てしまいました」
「まぁそうでしたか。それで早くに目が覚めてしまわれたのですね。余程怖かったのでしょう?」
私はコクリと頷きます。デボラが痛ましげな表情を浮かべた後に「もう大丈夫ですからね」と優しく笑ってくれる。
「ありがとうございます、デボラ。でもねそのせいで今日の日付を忘れてしまったの。今日の予定も昨夜確認したはずなのに何もかもを忘れてしまって……」
「まぁまぁ! そうですわね。怖い夢を見られたならそういう事もありますわね! かしこまりました。お嬢様の本日の予定ですが。3日前に行われたお嬢様の8歳の誕生日パーティーでプレゼントを下さったお友達にお礼のお手紙を書く事とお返しのプレゼントを買いに行く事になっています」
「ああ! そうでしたわ! 私たくさんのお友達にプレゼントをもらいました!」
前世? というか1回目の私は辺境の地にいたから領民の子達が友達で辺境を共に治めてくれる男爵家の子達も友達で。王都にいる頃よりも楽しかった記憶が甦る。
「ええ、そうですとも! たくさん頂いておりました。思い出してもらって良かったですわ」
デボラがニコニコと笑う中、私は顔を痙攣らせないで現状を把握しました。8歳……と言えば私とヴィジェスト殿下の婚約が内定していたような気がしますわ。……まさかもう内定しているのでしょうか? いいえ、1度目の時はお父様が何度も王家からの使者を断っていました。そして現状を見兼ねた私がお父様から話を伺って承諾したのでした。という事はまだ王家から打診は受けていないはずです。
ふむ。どうしましょうか。
今の私はヴィジェスト殿下を好きでは有りません。というより可能ならばドミトラル様の居場所を確認してドミトラル様にアプローチをして婚約者になりたいです。でもまぁ無理ですわね……。私、8歳ですもの……
いくらなんでも8歳児との婚約をドミトラル様に承諾してもらうのは難しいですわ……
それよりは、王家からの婚約話をお父様から伺った時にでもヴィジェスト殿下をお慕いしている人を我が辺境伯家の養女とすれば良いのでは? と提案しましょう。そうしましょう。という事で本日の予定をこなす事に致しますわ!




