2度目。ーー二人の殿下と王太子の位・3
「やっぱりケイトは誤魔化されてくれないよね」
ノクシオ殿下が苦笑する。誤魔化す気だったんです?
「ケイト。何故我等に何も言わずにコッネリの所に乗り込んだ」
低く怒りが伝わってくるドナンテル殿下の声に、ようやく私は殿下方が怒っている事に気付いた。
「ご心配をおかけしました」
その怒りが心配からくるもの、ということくらい解っている。殿下方の怒りと……多分自惚れでないならば、私への友情からくる心配の気持ちと。その両方が私を此処に連れて来た理由なのでしょう。
だから誠意を見せるようにゆっくりと頭を下げて殿下方のお声がけを待つ。
「いいよ。顔を上げて」
ノクシオ殿下の声で顔を上げれば2人共……泣きそうな顔だった。なんで?
「なんで泣きそうなんですか」
「不甲斐ないじゃないか。俺とノクシオがどうにかする事を何も出来なかった上に、惚れた女が一人で敵地に乗り込んで行くのを聞かされた身になってみろ」
「本当にね。僕達が賓客の対応に追われて身動きが取れない間に、好きな女性が、僕達兄弟の敵を相手にするなんて聞かされた身になって欲しいね。挙げ句、全てを君一人で片付けて来てさ。僕達立つ瀬が無いと思わない?」
ドナンテル殿下とノクシオ殿下に口々に言われるが、ええとさっきから変な単語が出て来てませんか?
惚れた女、だの、好きな女性、だの。
誰が誰に惚れてるんです?
「「ケイトは理解していないな」」
また2人が一緒に口にして。
「ケイト。俺とノクシオは伴侶に迎えたいとケイトリン・セイスルートに対して思っている。俺でもノクシオでもどちらでも構わん。……まぁ出来れば俺の伴侶になって欲しいが」
「やだなぁ。僕の伴侶に決まってるでしょ。僕達の伴侶って事は、当然王子妃か王太子妃になるわけだけど。君は幸いな事に1度目の人生で王子妃教育を受けているみたいだし、忘れている事があっても覚えるのに苦労はしないだろうし」
「……本気ですか?」
私が唖然としつつ言えば、2人が苦笑する。
「結構俺もノクシオも分かり易くケイトにアピールしていたぞ」
「それなのにケイトは全てスルー」
ええと……それはすみませんでした。
「お気持ちは有り難いですが、ごめんなさい。どちらを選ぶ事も有りません。私は好きな方が居ますし、殿下方の事は友人であっても伴侶になりたいとは思えません。たとえ友人のままで良くても」
スッパリお断りすれば「「まぁそうだと思っていた」」と納得された。
「解っていても言いたかっただけだ」
「ケイトに振られたら、その時はスッパリ諦めて僕達が相性が良さそうだと思った婚約者候補者達の中から、一番相性が良さそうな相手を婚約者にするって決めたから、こっちの事は心配しなくていい」
ドナンテル殿下もノクシオ殿下もどこか寂しそうに、それでいてサッパリした顔で私に笑いかけた。私も苦笑しながら殿下方の筆頭婚約者候補者の座を下りる事に、ようやく肩の荷が下りた思いがする。
「良い方が見つかる事をお祈りします」
「「ああ」」
私の言葉に2人が苦く笑って。
「報告は受けたけれど、ケイトにも聞きたい事がある」
ノクシオ殿下が表情を変えて切り出した。私も気持ちを切り替えて頷く。コッネリ公爵とのやり取りを聞きたいのだろう。クルスも私達のやり取りを全部知っているわけじゃない。コッネリ公爵と私の話は、私しか知らないのだから。




