2度目。ーー二人の殿下と王太子の位・2
「ケイト、目が覚めたか?」
薄っすらと目を開けた途端に聞こえて来た声に、私は目を見開いた。声のした方を見ればドナンテル殿下。その隣にノクシオ殿下がいる。……此処は女子寮の私の部屋ではないんですかね。嫌味っぽく考えていたら違った。女子寮に与えられた私の部屋でなく見知らぬ部屋だった。ーーいつの間に?
「ごめん、ケイト。君の影に目が覚めたらいつでも連絡が欲しい、と言ってあってね。それで夜明け前に連絡をもらって」
ノクシオ殿下が私の不思議そうな表情に気付いたのか、そんな説明を始める。
「それでどうしても連れて来てくれ、と頼んだ」
ドナンテル殿下が引き取ったように言うが、何処に、という具体的な事が欠けている。……いや、まぁ想像はつくけど。
「王城、でしょうか」
私の諦めにも似た声音に、2人が神妙な面持ちで頷く。……やっぱりか。というか、そんな表情になるのなら私の意識が無い時に連れて来ないで欲しいんですけどね。
「ケイトの影に無理を言って連れて来てもらった。済まない」
ドナンテル殿下……王族が簡単に頭を下げてはいけません。でも頭を下げる事だと解るなら、大人しく寝かせて欲しかったですねー。
「いいですよ、もう。済んだ事です。……それで?」
「それで、とは?」
ドナンテル殿下が首を捻ってますが、それはわざと分からないフリをしているんですか? それとも本気で分かっていないんですかね?
「私を寝ているにも関わらず、王城へ招いた理由をお尋ねしています」
溜め息をついて問う。というか、そろそろ喉が渇いたし起き上がろうかな。……ダメでした。まだまだ身体に力が入りません。私の行動に殿下方が気付いたのか、そっと身体を抱え上げるドナンテル殿下とベッドの背もたれをクッションで埋めるノクシオ殿下。そこへ私の上半身をドナンテル殿下がもたれさせ、ノクシオ殿下がその間に水差しから水を入れて私の口へと持って来た。
流れ作業のように無駄が無くて、まだ体力も思考も回復していなかった私は、ノクシオ殿下の手から水を飲ませてもらってようやく我に返った。
「いやいやいや。殿下方にこんな風に甲斐甲斐しく世話をされるわけにはいきません。私、何様ですか!」
「「チッ。気付いたか」」
「えっ。なんです、2人とも! っていうか今舌打ちしましたよね⁉︎ しかも同じ言葉を言ってましたよね⁉︎ えっ、気付いちゃダメだったんですか⁉︎」
いや、ダメじゃない。寧ろ気付かないといけないヤツ!
「ケイトは……身体が回復するまで学園は休みだ」
「そうでしょうが、先程の私の質問の答えとは明らかに違いますよね?」
ドナンテル殿下に言われるまでもなく、こんな身体では私は勉強など無理だ。幸いな事に私が選んだのは文官科なので体力重視な騎士科ではない。騎士科だといくら剣の成績が良くても学園を何日も休む時点で体力が無いと思われるからね……。万が一を考えて騎士科はやめておいたけれど、正解でした。
淑女科? なんでしたっけ? 有りましたっけ? そんな科。私は知らないなぁ。紳士科は無理ですし。一番無難なのが文官科か経営科だったんです。経営科は領地経営ですからね、そちらでも良かったんですけど。
経営科の方達は、嫡男が基本ですからね。若干貴族である事を鼻にかけるというか。まぁ端的に言えば偉そうに振る舞われるというか。……うっかりそういう方達の鼻っ柱を折ってしまって大問題になっても困るので、最終的に文官科が無難だったんです。殿下方も文官科を選ぶって影からの報告で知ってましたし。
まぁ今の状況を見るに、文官科で正解だったと思います。備えあれば憂いなしって言いますからね! えっ? こういう時に使うんじゃないでしたっけ? 違ったかな。




