2度目。ーー二人の殿下と王太子の位・1
とうとう200話に到達しました。
寮に帰ってから寮長さんに首尾を報告した。責任を感じて落ち込んでいた寮長さんには何を置いても話すべきだろうから。寮長さんもプライアリ様とラスピリア様を連れて来られて私が休んだ理由に気付いたらしい。あの男性はあなたと関わりがあるのでしょう? と尋ねられたので、セイスルート家に仕える者です、とだけ話した。留学生だから護衛だと思われたのだろう。それ以上は尋ねられず、ただ只管に自分の失態を反省していた。でもそれは、私も同じ。
私だってもっと早くに気付くべきだった。
あの2人……特にプライアリ様にはコッネリ公爵の監視がついていた事を知っていたのに、たかを括ってしまったのだから。それは私のミスだ。いくらなんでもこんな大胆な事を仕出かすなんて思ってもいなかった。だから、寮長さんの責任ではない。
いえ、それだと寮長さんが益々落ち込むだろうから、私と寮長さんの2人の責任という事にさせてもらった。
クルスには殿下方への報告を頼み、デボラが目を吊り上げて私を睨んでいるので、もう一度、今度は私が飲んだ毒に特化した解毒剤を飲んで、ベッドに潜り込んだ。身体の疲労と……精神的な疲労と……おそらくは毒の事もあって、直ぐに眠りに引き込まれた。ーーまでは、良かったのだが。
直後から私は丸三日、高熱に身体を支配されることになる。意識が浮上しては闇に沈む感覚を繰り返して……ようやっときちんと意識が戻った、と自分で理解した時には夜だった。
「暗い……」
ポツリ呟いた自分の声が掠れていて、まぁ熱が高かったからね、と他人事のように思いながら起き上がろうとして気付く。……力が入らない。と、いうことはそこそこ体力が消耗されたわけだ。まぁ毒飲んだし高熱だったしコッネリ公爵の私兵をそれなりに倒したし。こうなってもおかしくない、か。
身体を横たえたまま客観的に今の自分の状態を確認したけれど、取り急ぎ喉が渇いた。
「お嬢様?」
ふと灯が室内に差し込んで来て同時にデボラの声が聞こえて来た。
「おはよう、デボラ」
掠れた声で挨拶をすれば早足で近づいて来て「おはよう、じゃありません!」と怒りながら泣かれた。こんなに私を心配してくれるデボラが、私付きで良かったな、なんて呑気に思いながらも取り敢えずお願いしてみる。
「水、貰える?」
「直ぐに」
涙を拭いながら一旦下がったデボラと入れ替わるようにクルスとガリアとアレジがやってきた。クルスはともかく2人が室内に入って来るのは珍しい。
「お嬢様」「「お嬢」」
様付けがクルスでガリアとアレジは、いつの間にか私を“ケイトリン様”から“お嬢”呼びに替えて来ていた。それはさておき。
「心配かけたわね。おはよう」
「夜ですよ。と言ってももう直ぐ明けますが」
クルスが冷静に突っ込んできた。
「私……どのくらい寝込んでた?」
「丸三日……。コッネリ公爵邸襲撃から数えて四日目の朝を迎えますね」
クルスの答えに「そう」と頷いたところへデボラが戻って来て「淑女の部屋に男が3人も居ないで下さい。とっとと出る! お嬢様にはもう少し休んでもらうんですから!」と叱責して追い払い、私の身体をそっと起こして水を飲ませてくれた。
甘い。
多分普通の水のはずなのに、久しぶりに喉を通った水が甘くて冷たくて美味しく思えた。身体の中をゆっくりと染み込んでいくのが解る気がする。もう一杯水をもらってから、気になっていた事をデボラに尋ねた。
「ラスピリア様とプライアリ様は?」
「お二方共、コッネリ公爵邸から帰ってきた翌日から学園に出席されてます。見た所攫われた事に恐怖を覚えていないようで、元気には見えます。……まぁ表面上なので内面は分かりませんが」
「そう。ありがとう。……そうね。殿下方にお二方の心に誰か寄り添えるよう、手配をお願いしたい、とクルスに伝えておいてくれる?」
クルスには悪いがまた殿下方にお使いをしてもらおう。そこまで話した所で眠気に誘われる。まだ体力を回復するために睡眠が必要なようで、私は逆らわずに眠りへ引き込まれた。
お読み頂きまして、ありがとうございました。
本章もあと少しで終わります。新章は学園生活3年目を迎えます。




