2度目。ーー有り得ない現象を奇跡と言います。
目が開きましたわ。……えっ、なんで? 私は慌てて身体を起こします。王城のガーデンパーティーでしたから……ってここは建物内? えっ? 先程まで外に居ましたよね? へ? そしてよくよく周囲を見回すとどうやらベッド上に居るようです。ベッド? この手触り……綿ですわねぇ。肌触りが良い。……ってそうじゃなくて。私は死んだと思ったのですが生きてますね? 毒が塗られて……身体にナイフが……慌てて身体を見ますがあらぁ? なんだかやけに身体が小さい気が……。いえ気ではなく、確実に身体が小さいですわね。鏡が見たい。立ち上がるとやけに視界が低いです。下が近い。……まさかとは思いますが私身体が縮みました? えっ? ナイフについていた毒って即効性の致死毒以外にそんな効果が? まさか。
そう思いながらゆっくりともう一度周囲を見渡して気付きました。ーーここ、王都の屋敷では無いですわ。領地にある屋敷の私室。……ってえええ⁉︎ 私は王子妃教育を受けるためにずっと王都に滞在しておりました。辺境伯領には年に数回しか帰っていません。……しかも身体が縮んでいるようで。もしや私は辺境伯領で暮らしていた頃まで時間が戻ってしまった? いえいえまさか。
あ、でも日本ではそういった現象の話がありましたわね。ええと逆行転生……って日本人の真琴の記憶があるっ⁉︎ という事は私は日本からの異世界転生者で逆行転生者⁉︎ いえ、もしかして真琴とケイトリンの記憶を保持したまま別の者に生まれ変わった⁉︎ えええ! 一体私は誰なんですかーっ!
……あ。ケイトリン・セイスルートでした。
今姿見を確認しました。間違いなく私はケイトリン・セイスルート辺境伯令嬢でした。この姿から察するに10歳以前。私がお父様の中だけでセイスルート辺境伯の次期当主と決まった頃でしょうか。私がヴィジェスト殿下の婚約者を了承して王都へ向かう日にお父様が内緒だ、と話して下さいました。
「セイスルート辺境伯の次期当主はケイトリンで決まりだった。その事も含めて断ったのだ」
と。どこか寂しそうでどこか悔しそうでお父様は耳元でそう仰って下さいました。あの時はさすがにお父様に謝ったものです。
「次期当主になれずにすみません」
と。お父様は困ったように笑われました。それから改めて次期当主を決めるさ、とニヤリと笑われて私はホッとしたものです。次期当主選定について私はそれ以降何も聞かされていませんからどうなったのかは分かりませんが……。
それよりも今はこの状況を把握しましょう。
やっぱりこれは逆行転生ってやつで良さそうです。オタクで良かった! この状況にも動じてない! 異世界転生者で逆行転生者って珍しいかもしれないですわね。さて、では、現在私は何歳なのでしょうね?




