2度目。ーー蜥蜴の尻尾切りなんて、させない。・6
昨夜は更新出来ずすみませんでした。
取り敢えず大丈夫そうなので、本日3話更新を目指したいと思います。
「そんな事くらいでお父様を目の敵にされるとか……」
「そんな事、だと?」
あら。目の色が変わりましたわね。
「そんな事、ですわ。偶然手を伸ばして助けただけのお父様に2度も悔しい思いをさせた原因がソレでは、そんな事と表現されてもおかしくないと思いますが」
具体的に挑発するような事を口にすれば、テーブルの縁を人差し指で叩いている。……苛立っているということかしらね。
「……コッネリ公爵。実は陛下の事を好きでいらっしゃる?」
この態度はそれ以外考えられないのですが。いやいや、でもまさか、ね。だってこの人の態度って陛下から嫌われたいと思うしかない行動で爆走中って感じですよ? とてもじゃないけど好きだという意思表示がないですよね。
……って、えええええ!
めちゃくちゃ不機嫌なんですけど⁉︎ 私の予想が当たっているんですか? ……本当に子どもか。もう、ヤダ。やってられない。私、本当に死に損でしかない。
こんな男になんで負けたの、前回の私!
いや解ってる。解ってるよ。前回の私は思い込みが激しくてヴィジェスト殿下の婚約者を辞めたらセイスルート家に何かあるかも、って勝手に思っていたからね。
そういう意味じゃ、私も1人で突っ走っていた。
だから。今回はきちんと“私らしく”生きようとも思う。その上でこの男と関わる事になったなら、その時はやり返してやろうと思ってた。ーー今でもそう思ってる。だけど。やり返してやりたいのは、こんな男じゃない。
高らかに笑って最後まで憎まれて退場するような、そんな男にやり返してこそ、前回の私が報われるんじゃないのよ! こんな、こんな素直になれない捻くれたガキみたいな男にやり返しても私の気が済むわけがないっ!
「こちらにいらっしゃいましたか、お嬢様。……随分と楽しそうですね」
皮肉に満ちたクルスの声がドアから聞こえてきた。
「ええ。とても美味しいお茶を頂いていたわ。……そっちはどうしたの?」
先程から大声も大きな音も消えている。つまり私兵との戦いは終わったという事。そしてクルスが現れたという事は、ガリアとアレジとデボラがどういった状況か不明でも、少なくとも此方が勝ったということ。それがたとえ、クルス1人しか生き残っていない現状だったとしても。
「お嬢様のお考え通りに大切な物は無事に取り戻しましたよ。尚我等は怪我はしているものの全員無事です」
さすがクルス。私の質問に正確な答えを寄越した上に、ガリアもアレジもデボラも無事だと言ってきた。さすが我がセイスルート家が誇る影達だわ。ならば私も決着を付けましょう。
「さすがね。……さてコッネリ公爵。大切な物は返して頂きましたわ。でもやられっぱなしは貴方の性に合わない。そうでしょう?」
クルスが現れた時から、私が知っている……いえ、おそらく“皆が知っている”コッネリ公爵の顔に戻った。先程までのコッネリ公爵の姿もまた彼の一面なのだろうけれど。このコッネリ公爵の姿もまた嘘偽りのない彼の姿なのだろう。
そして“皆が知っている”このコッネリ公爵の姿こそ、私が叩きのめしたいコッネリ公爵。その姿を保ったまま、私に負けてもらおうじゃないの。そうして初めて前回死んだ私が報われるってものじゃないかしら?
お読み頂きまして、ありがとうございました。




