2度目。ーー蜥蜴の尻尾切りなんて、させない。・3
すみません。
遅くなりました。
さて。ガリアとアレジにコッネリ公爵家の邸へ案内してもらう。学園には休みを届け出ている以上、此処に私がいても私ではないのだから。寮の自室で休んでいる事になっているのだから此処にいるのは私ではない。逆を言えばコッネリ公爵にも都合の良い状況だけどね。此処にいるはずのない私に何があっても、それは私ではないのだから。
でも。
私はやられっぱなしじゃないわよ。前回殺された事は恐怖でもあるけれど怨みもたっぷりあるんだから。その分も一緒に返させてもらいます。
「アレジはプライアリ様とラスピリア様を探しなさい。ガリアは私と共に正面から乗り込むわよ」
プライアリ様とラスピリア様を助け出したら合流する事を決めておく。あまり細かく決めておくと、その通りに動こうとするあまり臨機応変な対応が取れなくなってしまうから、大まかな事しか決めなかった。
「あくまでもお2人奪還が目的で?」
アレジの問いかけに、にっこり笑って付け足す。
「ええ。ただ、ほら、奪還中に何があるか分からないし。ついでにお父様の思いも代わりにぶつけてあげないと可哀想では有りませんか?」
「確かに。奪還中に何があるか分からないですよねぇ」
ニヤリと笑ったアレジは「ではお先に」と消えて行った。私はガリアを振り返り「何があるか分からないからさっさと行きましょうか」と微笑んでみた。ガリアもニヤリとしながら「そうですよねぇ。何があるか分からないですもんねぇ」と言いながら、コッネリ公爵邸の門番を叩きのめした。
コッネリ公爵が此処にいるかは知らない。そこまで探るようには言わなかったから。居なければ居ないで構わない。一矢報いて後程やり返すのも有りだから。
門番を叩きのめしたガリアはさっと門を開けると私を引き入れながら背後から襲い掛かって来たコッネリ公爵邸の私兵を倒していく。当然素早く門の中に入った私も応戦した。襲撃時に声を上げるのは実は素人のやり口だ。それはそうだろう。だって「今から襲うから大人しく待っとけ」って言うようなもの。此方が大人しくしておく必要などない。
プロはその辺解っているから声も出さずに襲い掛かってくる。つまり、コッネリ公爵邸の私兵はプロということだ。手加減などしたらこちらがやられる。命を取るまではいかずとも、それくらいの気概がなくては捕まる事だろう。
出来るならば左手に武器は持ちたくない。
「お嬢」
「なに」
「自分の命を守るためなんだから左手を使っていいんですよ」
ハッとガリアを見てしまう。その隙を狙ったように襲い掛かって来た私兵を、ガリアがすかさず倒す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
私兵を倒してもらった事と、左手を使っても良いという許可と。両方に礼を述べればガリアがニッと笑う。私も同じように笑みを返して追い払っても追い払っても湧き出て来る私兵を倒すべく、左手の指の間に小型ナイフを4本挟んだ。
「死にたくないなら避けなさいよ! 私は手加減なんて出来ないからね!」
私の忠告が耳に届いたのかどうかは知らない。だけど忠告はしたのだから、とナイフを投げた。4本が同じ方向に向かう……わけではなく、きちんと1人1人に当たるように角度を変えて1本ずつ投げている。
ただ。元々左利きの私が投げたナイフは、正確過ぎて外す事が出来ない。
だから敢えて首や心臓や頭など即死に繋がる所は避けたのだが……。
「お見事」
ガリアに褒められたように、4人の私兵の右二の腕に私のナイフは突き刺さっていた。4本共である。相変わらず狙いが外れない自分の左手が、我ながら少し怖いな、と思いながらも次の私兵へと視線を向けた。
向こうからすれば私達は侵入者。追い払うのが仕事なのだから仕事を放棄するわけにはいかないのだろうけれど。
実力差を知って後退してくれないかな、と思うのは私が甘いのだろう。




