2度目。ーー蜥蜴の尻尾切りなんて、させない。・1
さて。無事に迎えました朝ですが、考えてみたら殿下方が居ないんでしたね。クルスは戻って来てますかね? 殿下方の元へお遣いに行ってもらいたいんですけど。
「おはようございます、お嬢様」
デボラが現れたので私はおはよう、と挨拶を返す。それから「クルスは?」と尋ねた。
「戻っていますよ。ご報告致したい、と待っております」
「では、その報告を聞いた上で殿下方の元へお遣いに行ってもらおうかしら」
支度を終えてクルスを呼ぶ。またもや謝りそうだったので、1回だけ謝罪を聞いて受け入れて先を促した。
「それで?」
「結論から言いますと、金だけの関係でした」
「まぁそう、でしょうね」
「コッネリ公爵に繋がる何かが有れば……と思いまして徹底的に家探しも尋問もしまして。ちょっと弱いながらも証拠を見つけましたよ」
それには本当に驚いた。コッネリ公爵に繋がるような物が出るとは思ってもみなかった。
「あったの?」
「直筆の手紙等確実なものではないですね。どちらかと言えば、失くした物を拾われた類のコッネリ公爵家の紋章入りカフスです」
「……確かに弱いわね。繋がりを表すには。いくらでも言い訳が思い浮かぶシロモノだわ。だけど。さすがクルスね。良くやったわ。たとえカフスと言えど関わっていた、という一点ではクロだもの。コッネリ公爵を追い詰める事が出来ずとも構わない」
それは殿下方に証拠として出すように命じて、尋問結果についても聞いた。
「先ずはお嬢様を狙ったのは、依頼されたから。依頼金は学園の入学料と授業料を合わせたくらい、と言えば分かりやすいですかね」
「あら。依頼主さんは、随分私の事をかってくれたのね」
そんなに高い依頼料は当然私にそれを支払うだけの価値がある、ということに他ならない。つまりコッネリ公爵にとって私は、それだけ目障りな存在ということだろう。
「そういう事でしょうね。ただ、方法は任せると言った辺り、成功するとは思っていなかったようですね」
私の情報を伝えていない辺り、そういうことだったのだろう。では、一体何のために私を攫わせた? 脅迫のつもりだった? でも私がこんな事くらいで怯むような性格ではないと理解しているはず。
「他には?」
「あまりお嬢様の情報をもらっていなかった、というくらいでしょうか」
「寮長さんと共犯関係には無かった事は解ったから警備員1の単独犯ということは判った。確かに油断が多かったから、私の事を知らないというのも裏付けられたけれど……何故私を攫わせたのかしら。私を脅迫するならこの程度で折れるわけないって理解しているだろうに……」
クルスからの報告に首を捻る私に、クルスがハッと顔を上げた。
「お嬢様、もしや陽動では?」
「陽動? 私を攫う事は目的ではなく、本当の目的を隠すために私を攫った? 私の目を逸らすため?」
クルスの推測は納得出来ますが、じゃあ一体何から私の目を逸らしたかったのでしょうか。




