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成る程。では、お互い不干渉といきましょう。  作者: 夏月 海桜
学園生活2年目は婚約者候補者とのガチバトル⁉︎2
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2度目。ーー一筋縄では行かないとは思っていたけれど。・5

「お嬢様っ」


寮に到着するなりデボラの小さくも悲痛な声が呼びかけて来ました。相当心配させていたようです。


「ただいま」


「お、お帰りなさいませ。ご、ご無事……でっ」


「あー泣かない泣かない。大丈夫だから」


デボラが泣きそうな声でお帰りなさいませ、と言うから私はその背中をポンポンと叩いた。


「ゆ、油断しまして申し訳なく……」


「いいから。私も油断したし、今日……でいいかな、まだ。今日は一日大変だったから疲れたし。大体ウチの影達も油断していたんだからデボラが気に病む事ないでしょ」


それよりも、寮長さんに気付かれる前に部屋に戻るよ、と声を掛ければ、小さくはい、と返事が聞こえてきた。中に入ろうとした所で、慌てたように寮長さんが外に出て来た。……あー、遅かったか。


「せ、セイスルートさん⁉︎ あなた、何故外にっ! な、何かあったのね⁉︎ 私とした事が……」


あ。やっぱりこうなった。どうしようかな。深夜の散歩とか嘘をついてもいいけど……それだと今後寮長さんの監視が厳しくなりそうだし……。


「寮長さん。これから話す事は私と寮長さんの秘密にしてもらっていいでしょうか」


きちんと話しておく方が、こういうタイプの人は責任感に苛まれるとは思うけど、今後はもっと警戒してもらえるよね。


「や、やっぱり何かあったのね⁉︎」


「寮長さんには辛い事かもしれないですが、きちんと話しておく方がいいかもしれないと思いまして」


「もちろんです。是非聞かせて下さい」


寮長さんの真剣な顔つきに、私はふと既視感に襲われた。なんだろう。誰かに似ている。そんな事を思いながら寮長さんの部屋に招かれてデボラと2人、寮長さんと向かい合った。


「先にお伺いしたいのですが、寮長さん、深夜なのに良く異変に気付きましたね?」


「……そうですね。セイスルートさんにはご迷惑をおかけしたようですので、寮長の秘密をお話しましょうか」


考えてみれば深夜です。普通に寝ている時間帯なので、警備員1が寮長さんに気付かれる可能性って低かったですよね。ほぼゼロだったと思います。それなのに寮長さんは異変に気付いて慌てていた。……不思議ですよね?

私の疑問に寮長さんが秘密を打ち明けます、と仰います。良いんですかね? なんだか聞いてはいけないような気がするんですけどね。そんな私の内心に当然気付かない寮長さんが、奥へ向かいました。少しすると音からしてお茶を淹れて頂いているようです。やがて、寮長さんはお茶を3つ持っていらっしゃいました。


私の話と、寮長さんの話。どちらもそこそこに時間がかかると見るべきでしょうね。私とデボラで一緒にソファーに座り、寮長さんも向かいでソファーに座り。互いに一口お茶を飲んだ所で、ようやく私は一息ついた気がしました。


「先に私の話の方がいいですか?」


私が切り出すと寮長さんが頷いてメモ取りをするようにノートとペンを構えました。それをおもむろに眺めてから私は今夜の事を話しました。一応、コッネリ公爵の名前は伏せておきましたから、攫われた理由に心当たりはない、と言っておきましたけれどね。


「そう、でしたか。やはり私の失態です」


ちょっと悄気た寮長さんは、深呼吸をすると私にある秘密を打ち明けてくれた。それは寮長に選ばれる理由でした。


「私はだいぶ少なくなった魔術師なの」


「えっ……それって、あの、魔法を使えるという……」


「ええ、そうよ」


魔術師なのだから魔法を使えるのは当たり前なのだが、つい確認してしまった。

寮長さんは肯定して、男女の寮長は代々魔術師が務めるのだ、と話してくれた。魔術師の使う魔法の一つに、異変を察知する魔法があるそうで、生徒達が寮内にいる間は常時その魔法を発動している、らしい。初歩の魔法だからそんなに大変ではないけれど、毎日の事だから魔法が偶に不調になる事もあるのだとか。


そういう時は魔術師である事は秘密だけど、警備員に体調が悪いから今日はよろしく、的な事を話すらしい。そして、今夜はその不調の日に当たってしまったのだとか。

成る程。不調の寮長さんから頼まれた警備員1は、これ幸いと私を攫った、ということか。


「それでも不調なりに魔法は使うの。不調の時は常時発動が出来ないから時間帯を決めて発動します。そうして先程発動したら……」


「異変に気付いた、と」


それでタイミング良く私が帰って来た所に行き合わせたんですね。取り敢えず謎は解けました。


「寮長さんが悪いわけでもないですし、私は無事です。犯人が警備員であることは、学園側に報告してもらう必要があるでしょうが、私も事を荒立てたくないです。私は幸いにも殿下方の『友人』ですから、殿下方にこの話を通しておきますので、寮長さんは今まで通りを貫いて下さい。お願いします」


でも、と責任感の強い寮長さんに、寧ろ寮長を続けて今後このような事がないようにお願いします、と重ねて頼んで納得してもらいました。

これで今夜は一応落着ですかね。

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