2度目。ーー一筋縄では行かないとは思っていたけれど。・4
取り敢えず私を攫った犯人は警備員……仮で1番としておきましょうか。警備員1が犯人。寮長は? 保留ですね。警備員1は私がどんな育ち方をしてきたか知らなかったんでしょうね。この油断っぷりでは。後は場所の問題ですね。此処は一体どこなのか。警備員1は私を攫った後、私をどうするつもりだったのか。此処はおそらく一時的な隠れ場所のはず。いつまでも私を此処に留めておく気は無かったでしょう。……多分。あくまでも推測ですし、ね。
状況把握するためにやっぱり外に出ますかね。ウチの影達が来ないし。大人しく助け出されるのを待つ人間でもないし。どうせこの警備員1と、コッネリ公爵との繋がりは分からないだろうし。……念のため確認はしてみましょうか。コッネリ公爵の事だから証拠になるような物なんて残すとは思えないですが。ただ、警備員なんて信頼が無いと出来ない仕事を蔑ろにするようなこういうタイプの人間って、結構ルーズですからね……。証拠を消せ、と命じられていても忘れている事も屡々ある気がします。
まぁ無くても別に構わないですし。先程は簡単に武器を探すだけでしたから、きちんと身体検査をしてみましょうか。
そう思った所で見知った気配がしました。
「遅く……なりました」
「本当ね。私が居なくなってからは?」
「正確に言うと、お嬢様がベッドに入ってから2時間です。ちなみに此処は警備室。の、仮に眠る場所ですね」
「警備室……。まぁ警備員がこんな事をするなんて信頼を失うようなものだから、有り得ないと思って探しにくいわよね。灯台下暗しってことか」
「あ、いえ。この警備員含めて何人か怪しい者がいまして、アレジは辺境伯卿の元に連絡させていたので、ガリアとデボラと3人で手分けしてお嬢様の行方を探していました。尤も私共も油断しまして、うっかり眠り薬を嗅いでしまって30分程意識を失ってましたが」
「そう。でも平気なのね? クルス」
「はい。警備員が怪しいとは思っていましたが、この警備室に連れて来るとは思わずに、他を探していましたから遅くなりました」
「他の怪しい者達は?」
「今回は動いてないので」
「そう。じゃあ身体検査をして頂戴。それと尋問ね。寮長は?」
「薬を嗅がされて寝てました」
「じゃあ私は先に戻っているわ」
「は」
尋問に立ち会っても良かったのですが、いつ寮長さんが目を覚ますか分からない以上、早めに部屋に居る方がいいでしょう。何となくあの寮長さんだと自分の失態を隠すのではなく、責任を取って辞める事になろうとも女生徒達の身の安全を確認したがる気がしますからね。それで私が居ない事が分かったら、お詫びを……とか言って死んでしまいそうです。さすがにそんな事になったら、私も居た堪れないので、さっさと戻っておきましょう。後はクルスに任せます。
……眠気が勝ったわけではないですよ? 決して。ええ、決して。眠いですけどね?




