2度目。ーー婚約者候補者達とのバトルII・12(ドナンテル&ノクシオ編)
お待たせしました。
私の発言にナイゼルヌ侯爵令嬢が真っ赤になった。様付けなんて、してやらないですよ。ウチを侮辱したのでそれ相応の対応をさせて頂きます。
「わ、我がナイゼルヌ家をお取り潰しにでもする、と? とんだ妄言ですわね。そんな事辺境伯家程度が……っ」
言いかけてようやく気付いたのか、蒼白に変わりました。
「ふふ。よぉく分かりましたわ。辺境伯家程度、ねぇ。ウチがどんな立場なのかご存知無いような発言でしたね」
少し口元を綻ばせて微笑むように見せかける。私の目は笑っていないはずだ。
「あ、あ、あ」
「あらあら。ナイゼルヌ侯爵令嬢とも有ろうお方が喋れなくなりましたの? 何かの病かしら。殿下方に移るような病だと大変ですわ」
口を開閉するだけのナイゼルヌ侯爵令嬢に嘲りを込めて笑ってやる。私だってウチを侮辱された事は簡単に許せませんからね。こういう事くらいやりますよ。病かもしれないのに、恰も病に罹ったような物言いをしながら侍女に目配せする。サッと気付いた侍女がこちらへ歩み寄ってきた。
「こちらのご令嬢は体調が悪いようですわ。別室にて医師に診てもらって下さいな」
私の親切という名の皮を被せた退場指示に侍女が護衛と共にナイゼルヌ侯爵令嬢を下がらせた。さて。これで彼女は、この国でも殿下方の婚約者の座……ひいては王妃ないし王子妃の座にはつけなくなりました。だって公務を行う妃の身体が弱いのでは周囲が心配しますものね。
また、それが王妃ならばお世継ぎを生む体力も無いかもしれません。そんな方に妃なんて務めさせられませんものねぇ。
つくづく私は意地悪な性格だ、と自分で思います。……もしかしてゲームのケイトリンってこの意地の悪い性格が前面的に出ているのでしょうかね。それならば私が悪役令嬢なのも納得いきます。
私自身は自分のこういった性格を嫌ってはいませんけど、積極的に暴露しようとも思っていなかったです。辺境伯当主を目指す身としては、こういったあしらい方くらい出来なくては狸親父の陰険さにも淑女の仮面を被った野次馬共の足を引っ張ろうと画策する腹黒さにも、喰われてしまいますからね。
さすがに魑魅魍魎とも言える貴族達の中を泳ぐのに、何の力も付けないわけないじゃないですか。だからまぁこういう自分の性格も悪くないとは思うんですけどね。ドミトラル様には此処までの腹黒さは望んでないですから。時に必要ならば被らなくてはならない泥も、ドミトラル様の代わりに、ならばいくらでも被るんですけどね。きっとドミーのことです。私が矢面に立ってアレコレ言われていたら、庇ってくれる……どころか、ご自分から進んで泥を被ろうとしてくれるのでしょうね。
おっと、想像が進み過ぎましたわ。
取り敢えず、今の私が出来ることをした結果ですから、ナイゼルヌ侯爵令嬢の今後は、私がきちんと見届ける必要がありますわね。
本日1回目の更新です。




