2度目。ーー婚約者候補者達とのバトルII・11(ドナンテル&ノクシオ編)
本日2回目の更新ですのでご注意下さい。
殿下方と離れてデボラともわざと離れて1人になった私は、ずっと他の方々からの嫉妬・悪意・殺意などが混じった強烈な視線を浴びていました。誰が最初に、私に近づいて仕掛けて来るのか……と考えつつ周囲に視線を向けてみれば、もちろん強烈な視線が私と視線を合わせようと更に強くなったのですが。それには合わせず皆様の視線を微妙に逸らしながら観察すると、明らかに皆さま付きの侍女や、この宴のために駆り出されただろう侍女達とは違う雰囲気の侍女が紛れ込んでいました。
それに気付いた私が、他国の王女殿下方を中心に交流を開始した2人に視線を向ければ、その周囲に同じ雰囲気の侍従が、いつの間にか2人に付き従っていて。それで解ったんですよね。この宴から既に競い合いはスタートしている、と。それを確認したところで、ナイゼルヌ侯爵令嬢様ご登場ってヤツでした。
「セイスルートさん。アナタ、恥知らずね」
そこそこに声を張り上げて来ましたねぇ。殿下方には気付かれないと思っているのでしょう。実際、他国の王女殿下方を中心に交流しているお2人は、割と距離が離れていますからね。聞こえないでしょう。
「ナイゼルヌ侯爵令嬢様、変な言いがかりを付けられましても迷惑ですわ」
取り敢えず当たり障り無く返します。要するに身に覚えの無い言いがかりで貶めるなら、そのケンカ買うぞ、コラ。ってわけです。……ヴィジェスト殿下主催のお茶会と似たような現象なのは気のせいだと思いたい。
「あら。言いがかりではなくってよ。アナタ、ヴィジェスト第二王子殿下の“筆頭”婚約者候補者で有りながら、こちらの国のドナンテル殿下とノクシオ殿下と交流があるなんて、はしたなくてよ。もしやこちらでも“筆頭”婚約者候補者なんて仰いませんわよね? もしもそうなら、これは両国の殿下方を手玉に取った悪女ということになりますわよ」
手玉に取った悪女、ねぇ。まぁそう見えてもおかしくないのは確かだけど。
「私はどちらの国でも殿下方の“筆頭”婚約者候補者なのは確かですわね」
アッサリと肯定したら、ナイゼルヌ侯爵令嬢がポカンとして口を開けている。……令嬢としてはしたないのはどちらでしょうね。そんな間抜け面を侯爵令嬢が晒して良いんですか?
「ま、まぁ! なんてはしたない! いつから殿下方の婚約者候補者が娼婦のような事をなさる者を“筆頭”に付けるようになったのです! これは重大な誤ちですわ! 両国に争い事でも招こうとでもするつもりですの⁉︎」
はい、言いがかりありがとうございます。
「ナイゼルヌ侯爵令嬢の方こそ、そのような大声を出して令嬢としてはしたないですわね。それから訂正をさせて頂きますが、私はあくまでも婚約者候補者。候補ですよ? 婚約者とはその責務に於いて重みが違います。また、私を娼婦呼ばわりするという事は、ナイゼルヌ侯爵令嬢様が私どころか、我がセイスルート辺境伯家を敵に回す、という意思の表れだと思ってよろしいですわね?
それと。これ以上無い侮辱をしてくれたのですから、タータントにご帰国された時、ナイゼルヌ侯爵令嬢様の貴族籍が有るとよろしいですわね。……セイスルート家が辺境の領地を守る辺境伯だと理解した上で、戦争を起こす振る舞いをしている、などと言いがかりでは済まない発言ですわね。ウチをなんだと思っているんですの? 侮辱し虚仮にした以上は、ナイゼルヌ侯爵家がお取り潰しになっても文句は無い、という事でよろしいですね?」
プライドが高かろうが、私が気に食わなかろうが、娼婦呼ばわりまでなら私個人の胸中で収めようと思いましたけどね。私の振る舞いがどうのこうの、と言ってもまだ我慢するつもりでしたよ。しかし。
我がセイスルート家を、辺境領の守り手である事を誇りに思っているウチを、よりによって戦争の仕掛け人のような発言をしたからには、それ相応の報いを受けてもらっても構わないって事ですよね? ウチはタータント王家に忠誠を誓っていないですが、歴史は現王家よりも古い、と理解した上での発言なんでしょうから。
タータント王家に忠誠を誓っているナイゼルヌ侯爵家よりも、歴史は古いんですよ? 家格は侯爵家と同等なので、タータント王家に訴えれば家が取り潰されても仕方ないってご理解されていますよね!
お読み頂きまして、ありがとうございました。
明日……も、夜、かと思います。




