2度目。ーー婚約者候補者達とのバトルII・10(ドナンテル&ノクシオ編)
お待たせしました。
1回目の更新です。
食堂に移動すれば、確かにささやかながら宴の準備が出来ていました。私は敢えて殿下方とは別行動を取る事にします。殿下方と四六時中一緒に居て不正だの贔屓だのと横槍を入れられるのは、業腹ですので。殿下方もまあ理解しているらしく、私が下がった事に文句は言わないですし、表情も変わらなかったですね。ホント、ドナンテル殿下に至っては前回の人生で耳にしていた悪評が全く見えないので、つくづく不思議に思います。
尤もそんな事を言い出したら今の私の状況とか、有り得ない事だらけですからね。あまり前回と比べないようにしましょう。さて。私自身はデボラにサラダを取りに行ってもらい、1人になってみました。他の方はこの国の令嬢方でグループを作り、他国の王女殿下や高位貴族令嬢方もそれぞれでグループを作っています。
タータント国からは、ナイゼルヌ侯爵令嬢くらいですね。それはそうです。ヴィジェスト殿下の婚約者が決まっていない状況で、この国の殿下方に乗り換えるわけにいきません。あくまでも候補者である以上、普通は動きません。私自身の事は棚に上げてますよ、当然。まぁ要するに陽動の身ですからねぇ、私は。両国の殿下方の駒ですもん。逆を言えば、そうではないナイゼルヌ侯爵令嬢がの動きこそ、オカシイわけです。予想は付きますけど。エルネン伯爵令嬢にやらかされたとばっちりを受けて、ヴィジェスト殿下の婚約者候補者を辞退に追い込まれた。と考えれば、こちらに来ますよねぇ。
彼女はプライドが高いですからね。ヴィジェスト殿下の婚約者になれないなら、大人しく爵位持ちの夫人に収まれば良いのですが、それは出来ないのでしょう。だって公爵家は軒並み跡継ぎは婚約者が居ますから。公爵家の次男以下と侯爵家の跡継ぎ以下でも婚約者がいない家は有りますけど、王族と比べればパッとしない、ということでしょう。前回の時に私を見下していたように、爵位こそが物を言う、と考えていらっしゃった方です。まぁヴィジェスト殿下の婚約者になれないなら我慢ならなかったのでしょうね。
だからこっちに来たんでしょうけど。
ヴィジェスト殿下の婚約者候補者の中でも“筆頭”の座にある私が、こちらでも殿下……それも2人の婚約者候補者“筆頭”の座についている、と知った彼女が怒り心頭なのはまぁ想像に難くないですからねぇ。
デボラから忠告を受けた瞬間にそこまで考えたわけですよ。そんなわけでわざと1人になっています。ナイゼルヌ侯爵令嬢がやって来るだろうと思ってますから。
ついでに、本命のコッネリ公爵の“娘”さんも現れないかなぁ……という願望を元に、私を餌として撒いてみている最中です。
「セイスルートさん」
おや。もう餌に食い付きましたか。呼び掛けられた方をチラリと見れば、怒りの表情を出しまくりのナイゼルヌ侯爵令嬢が立っていました。それにしても。“さん”って……アナタ礼儀は何処に置いて来たのでしょうね。そして周囲のご令嬢方や王女殿下方が、チラ見をして来ていますね。ナイゼルヌ侯爵令嬢が勇敢(笑)にも私に話しかけているのが見えて、どうなるのか興味津々半分、足を引っ張れるのか弱味を確認する半分、というところですかね。まぁ別に良いですけど。
「まぁナイゼルヌ侯爵令嬢様ご無沙汰しておりますわ」
私はニコヤカに微笑みを浮かべながら朗らかに挨拶をする。淑女の仮面を被り直しているんですよ。だって。私の勘ではドナンテル殿下及びノクシオ殿下の婚約者候補者達を篩に掛ける競い合いは、既に始まっているでしょうから。
次話も更新します。




